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復讐神  作者: 部長
1/1

誰も知らない家出

見つけていただき、ありがとうございます!

怪力少女と貧乏武士の三男が、架空の江戸と神の国で繰り広げるバトルファンタジー!……にそのうちなるはず。

1話は全然その気ありませんが。

クスリと笑っていただけたら幸いです。

ちなみにサブタイトルの「家出」は「いえで」であって「しゅっけ」ではありません。


そこまで直接的ではない上に数もあまり多くはないですが、出血等の残酷な描写を思わせる表現が含まれています。そのためR15指定です。お気をつけください。

「武神様、時間にございます」

「うむ」

 華奢な女神は立ち上がった。

「女神初の、大武神!私、感激でもう……!」

 式神の一人が泣き出していまった。

「これ、これから式典なのだぞ。化粧が崩れてしまうではないか。嬉し涙は自らの神への昇格の時にとっておくがいい」

「武神様も言われているのです。涙を止めなさい」

「うっう……」

「白夜、鬼兎が泣き止んだら来るがいい。私は先に行っておるからな」

「武神様!危険です!」

「何を言うか」

 女神はくるりと振り返り、自信満々の顔で言う。

「我はその名のとおり、武神ぞ」


 大平の世、第16代将軍が祭る小国で、武神の力は大きく落ちた。

 司るものが無くなったのだ。この小国の人の世を進めるような大戦も、神々の争いも。

 だが、ほんの15年前、事件があった。

 この小国に来た外国船を、武士達が大砲で打ち払おうとした。その際、この国の大戦から小競り合いまでを司る先代大武神が勝手に武士側に加勢したのだ。

「あの判断でよかったのか」「入れさせていれば国は進んだのではないか」「あやつ一人の力が強まってしまうのではないか」

 そしてついに、武神が総括の地位を降ろされてしまった。

 それから今日まで大武神はおらず、人々は欲望の為に戦っていた。本能のままに動き、多くが傷つき、得るものもなく死んでいった。

 事を重く見たアマテラスは、思い腰を上げて、大武神に平和思考の珍しい武神をまかせようと、探してまわらせた。

 そして、ついに次代の大武神がたてられようとしていたのだ。


(先ずは闘争心の沈静化をかけるか、外国船の事もあるが、治安が良くならなければ人々は疑心暗鬼になって外の船どころではないだろう。小競り合いからの解決、金の神様にも相談せねばか。やることは山積みだし面倒だが、だがな……)

 女神の頬が自然に緩む。

(この名誉ある指名を、誰が手抜きしようか!私のやり方は間違っていなかった!散々「阿呆」だとか「馬鹿な小神」だとか「自殺志願神」とか読んでくれたやつらを見返してやれる!)

 勝ち誇った気分で天空回廊を歩く。

(待ってろよ~、私が必ず、この国を立ち直してみせる!)

 前から他の神が歩いてくるのが見えた。

(これから式典だと言うのに部屋に戻るのか?)

 しかも、次代の大武神となる彼女が正面から歩いてきても、道を譲る様子はない。

(式典の主役を知らぬのか……まぁ、元々ただの地方の小神だったのだから、知らんでも無理ないか)

 何となく不快な気分になるものの、仕方なく道を避けてやる事にした。

「よぉ、自殺志願神」

「な!」

 この宮に来てから聞かなかった、彼女を侮辱する言葉を、この神は放ったのだ。

「おい貴様、無礼にも程があるのではないか!?我は大武神ぞ!?」

「ああ、間違えた。馬鹿な小神だったっけか?」

「……口を慎めよ、なんの権利があって我を侮辱するか!」

「お前にこそ、何の権利があって喋ってやがる」

「はぁ!?知らぬのか!?我は次代大武神よ!」

「次代か、はっ、今は大武神じゃないよな」

「……何が言いたい」

「お前の様な臆病者に、俺達の仕事が奪われたら困るんだよ」

 スラリ。

 静かな音がして、純白の剣が鞘から抜かれた。

「草薙……何故!?」

「お前を殺し、武神達を守るためよ」

「違う、何故持っているか聞いている!……まさか!」

「気づいてしまったなら、仕方がない、消えてくれ」

  ドオンッ!

  戦中陣が張られたが

「ふん!私に喧嘩を売る気か!」

  ドオンッ!!

  彼女は倍の戦中陣を張ってやる。

「陣を産み出す草薙に、陣が効くと思うてか!阿呆!」

  グオンッ!

  素早い振りから放たれる衝撃が、天空回廊の窓を全て飛ばす。

  人ならば成す術もなく鱠切りになっていた斬撃を、しかし彼女はいとも簡単に避けてしまう。

「はっ!貴様の様な下衆が握る草薙など!」

  彼女には自負がある。彼女は神々の戦いでは負けたことはないのだ。無論彼女から仕掛けることはなかったが、土地や地位を目当てに攻めてくる格上ね神々を程よく潰して帰すのだった。

「このぉ!」

「さぁ、とっととこちらに寄越すがいい。本物の剣の使い方を見せてやろう!」

「指者、断者、やれ!」

 側にいた式神達が神弓を放つ。本来式神では使えない必中の矢が飛んでくるが、彼女は体に触れた瞬間叩き落とす。

「そいつも寄越せよ。没収だ!」

 奪い返したら、誰に返せばよいのだろうか?

 そんなことを考えつつ、下衆神に近づこうとした時だった。

「武神様ぁ!」「下がってくだせぇ!」

「え、白夜、鬼兎!?来るな!」

 目の前で下衆が笑っている。しまった。

「避けろ!」

 神弓の矢が飛んでくる。目標は白夜と鬼兎。必死に手を伸ばすが、自分に向かない必死の矢は避けていく。

 ドスドスドドドドドドド!

「ぐっ!」「ぬぁぁ!」

 八本の矢がそれぞれの四肢に刺さり、自由を奪う。

「戦いを司り、邪魔なやつは、消していく。それが武神よ!」

 草薙が振るわれた。

「戯けがぁ!!!」

 グオンッ!

 巨大な斬撃が、小さな体に全て吸い込まれる。

「……戦いを司り、終わらせるべきか、武神であろうが!」

 膝をついた弱々しい体から、強い言葉が絞り出される。

「何時までその意地は続くだろうな?」

 グサリッ。

「ぐああぁ!」

「命絶つ剣で切られて、何時まで持つか?」

 グサリ、グサリ、グサリ、グサリ。

「う、わぁ、あっ……」

 存在が払われていく。意識が飛びかける。

「武神、様ぁ!」

 鬼兎が飛び出した。

「やめっ」

「式神ごときが」

 ヒュッ、スパァン!

 彼女の体が回廊の窓枠に叩きつけられ、草薙が揺られた瞬間、鬼兎が光となって消えた。

「き、……と」

「では、またお前の番か」

 草薙が近づいてくる。死んでしまう。けど、こいつだけは……!

「恨む……ぞ……」

「あ?」

 重みに体が耐えられず、窓枠からずり落ち始める。

「必ず、貴様を、殺しに……」

 スッ。彼女が窓の外に完全に消えてしまった。

「ははっ、小神に似合う死に様よ。断者、しっかり押さえていろ。危うく猫ごときに引っ掛かれるところだったではないか」

 死神は窓の外を覗く。

 そこには雲があるばかり。

「やらせぬぞ、争いの終結など」




「なぁ、これからどーするんだよ……」

 晴れた日の午後、大通りの真ん中で、地味な着物の、髪も結わない若い女が、よく通る声で隣の男に聞いた。

「木賃宿でも路銀は尽きる……野宿でもするかな」

「えぇ……女子にそんなことさせる気かよ……」

「懇願しても聞かんからな。元々お前のせいだし」

「勘弁してくれよ、お嫁に行けなくなっちまうじゃないか」

「五間もの高さの木から落ちても傷一つないやつがお嫁だなんて言うかね」

「失礼だな!私は女なんだぞ!」

「安心しろ、お前はどうやったって嫁にはいけねぇよ」

「んだとぉ!」

 漫才のような、兄妹喧嘩のような賑やかな掛け合いに、周りがクスクス笑いながら通りすぎて行く。

「野宿が嫌だったら、その辺で春でも『ひさ』いでるんだな、女になれるぞ」

「は、春をひ……志貴、お前なぁ!いい加減にしろよ!!殴るぞ!!」

「やってみろや」

「おらぁ!」

 が、女の拳は空を切った。

「普通やるかね」

「やってみろっつったのはてめぇだろうが!」

「わかった、すまんかった。あそこだよ」

 角を曲がると、その辺の長屋の五倍は間口のありそうな宿屋が見えた。

「なんだぁ、立派じゃないか」

「飯は自前、泊まるのは地下の倉だがな」

「うぇぇぇ!!」


「お久しぶりで御座います、志貴様」

「ああ」

 入ってきた志貴を見て、わざわざ奥から出てきたのは、支配人の七兵だった。

「いや、申し訳ありません、お部屋をご用意できずに」

「いや七兵、伝えが遅れたのはこちらの不手際だ。気にするな」

「申し訳ありません。倉の荷物を全て退けられずに」「座るくらいは退けてあるのだろう。十分だ」

「かたじけのう御座います……あら、そちらは、若奥さまですかな?」

 七兵はカラカラ笑いながら言った。

「いや、そういう訳では」

「オヤジ、からかわれている事くらい、学がなくてもわかるからな?」

「落ち着け。すまない気の強い女でな。えっと、こいつは私の連れだ、名は」

「自分で言う、壽だ」

 女は仏頂面できっぱりと言った。

「壽様。いや、申し訳ありません、泊まるのがあのような所になってしまって。せめて後で敷物と屏風を……」

「いい、私は気にしない」

「いろいろ心配してもらってかたじけない。では」

「いえいえ、お部屋へご案内とは行きませんが、せめて……」

「いや、もう下が」

「オヤジ、若い男女の恋路を邪魔する気か?今すぐ表の馬に蹴られて来るがいい」

 七兵は驚いた顔をして

「はぁぁ、こりゃ一本とられましたな」


「うわ、本当に石造りなんだなぁ」

 その倉は、石造りと呼べるほどの作りではなかったが、人が寝るには十分過ぎるくらいの広さだった。

「不満か?」

「いやいや、まぁ、床は冷たいがな」

「敷物を借りればよかったではないか」

「志貴、お前、あの支配人苦手だろう」

「何でだ?」

「顔に書いてあるぞ」

「俺は元々、人と話すのは下手なのさ。本を読んでいる方がよっぽどいい」

「私より余程話の上手い奴が言うか」

 志貴は正直、お節介でおしゃべりな人間が苦手だ。自分の事は自分でしたいから、他人の世話がうっとおしくて仕方がない。名前だけの貧乏武士の、さらに三男であることも関係あるだろう。十七年も見てきた壽にはわかる。

 なけなしの荷物を広げ、緩い帯をさらに緩め、着物を脱ぎながら壽は言う。

「お前がたじたじになっているのは見ていて面白いよ。仏頂面をしているのが大変だった。最後の『下がれ』の言いかけは、極めつけだな」

「たじたじになっていた訳じゃないさ。お前が喋ってここを追い出されないか心配になっただけさ」

「人のせいにする気か!」

 なんてやつだ、とは思うが、これが志貴なのだ。

「あと、お前、むこう向け」

 この辺の無頓着も志貴だった。


「なんか食いにいくか」

「行くぞ!」

 書き物をまとめた志貴はそんな感じで壽を連れ出したのだが

「で、なんで甘味屋なんだ……?」

「金が無いからに決まってるだろう。マトモな飯なんて食ってられるか」

「飯屋じゃなかったのか!?」

「誰も飯屋に行くなんて言ってないだろう」

「嘘つき!」

「腹が膨れるだけ良いだろう、あ、甘いものは高いから無しだ、それ以外ならいくらでもいいぞ」

「甘味屋で何食えばいいんだ!?」

 米は高いが、餅ならまだよい。黒蜜は高いが、水なら安い。魚は高いが、匂いは無料だ。先ずは腹にたまる餅からだ。それから飯屋に連れていこう。

 策を考え終え、平然とやっすいお茶を啜る志貴。しかし、ものの幾つもたたぬ内に後悔することになった。


「大福5つ!餡はいらん!その分値段引け!」「団子十個!たれをかけるな!値引きしろ!」「茶!」「あんみつ20椀!餅だけじゃぁ!」「蕨生餅30個!きな粉も密もいらんわ!二銭は引けよ!」

 積み上げられていく餅入れの残骸。

「なぁ、もうそろそろ」

「心太50!密なしな!」

「もう、止めてくれ懐が寒くなる」

「いくらでもと言ったのはどこのどいつだ!食えるものは食っとくんだ!お前の懐なんて凍りついてしまえ!」

「お客様、申し訳ありませんが、うちの在庫が無くなりました……」

 店主が困り顔で、最後の心太を持ってきた。

「ちっ、使えない」

 壽が悪態をつきつつ、心太をかきこみ終えた時だった。

「いい加減にしろよ!」

「きゃぁ!」

 バキンッ!売り子が掲げた盆が大男の拳に叩き割られ、売り子が志貴ね足元まで吹っ飛ぶ。

「!大丈夫ですか!?」

 大きな傷はないが売り子は気を失ってしまった。

「おい、なに介抱なんざしてやがる!手ぇ出すない!」

 大男は手を伸ばすが、志貴の方が一瞬速く逃れる。

「待てやてめぇ!俺はその女に用があるんだよ!よこせやぁ!」

 男が拳を固め、言葉とは裏腹に、志貴ごと吹き飛ばしにかかった。

 バシンッ

 重い音がして、大男の拳が受け止められる。

 壽の左手だ。


「ああ?何すんじゃてめぇ!」

「だぁまれ、木偶の坊。私は今、とっても腹がたっているんだ。志貴は嘘つくし、店は使えねぇし、腹は減るし、うるせぇし!怒らせんじゃねぇ!」

「あんだよ、何言って」

 大男に見えたのは、遅れて着いてきた着物の裾。空いていた壽の右拳が大男の腹を貫く。

 三人かかっても持ち上げられないような巨体が、壽の拳一つで浮き上がり、吹き飛ぶ。

「のごぉ!」

 大男の体が甘味屋の壁にぶち当たり、壁ごと店の中に消える。

「ごほぉっ、あがはっ、がはっ」

 息が詰まり呻く男の前に壽が仁王立ちした。

「とっとと消えやがれ!」

 壽の命令に逆らい、大男は白目を向いた。


「ちっ、ああ、なんもすっきりしないや」

「いや壽、大丈夫か?」

「私を誰だと思ってる?」

「何もなければいい、ありがとうな」

「……おう」

 それだけ言うと、また志貴は売り子の介抱を始めた。

 そういう志貴は嫌いではない。が、売り子を介抱しているのを見ると、何だか無性に腹が立つ。

「ありがとうございます、ありがとうございます」

「いいんだオヤジ、それより飯はないか?」


 壽としてはやけ食いがしたい気分だったが、品切した甘味屋に飯など置いていなかった。当然飯屋で食う金もなく、結局石造り部屋に戻ってきた。

「匂いで我慢するならいいぞ」

「そんなの駄目にきまっているだろう!飯が食いたい!」

「それこそ駄目にきまっているだろう。我慢しろ」

「えぇぇ……」

「いいか、お前のせいで一文無しなんだからな……それより、明日、ここを出るぞ」

「また歩くのか!?」

 すっとんきょうな声をあげてみるが、志貴には通じなかったようで

「疲れ知らずが何を言う」

 一蹴されてしまった。

「お前はあそこから逃れたいんだろう?」

「まぁ、そうだが。……それより今はめーー」

「当分飯抜きに決まってるだろう」

「えぇぇ……」

 石造り部屋に嘆きが響いた。

読者の皆様へ

まずは、こんな駄作に最後まで目を通していただき、ありがとうございます。

さて、この作品、続くかわかりません。

元々小説練習用に書いた作品を大幅修正したものなため、決まっているのなんて初期設定だけ。

何故こんなものをあげたかと言えば……ネタがなかったんです。ごめんなさい。

続ける心づもりではありますので、見つけたらぜひ、読んでいってください。


部員のみんなへ

5月にあげるとか言いながら、ここまで先伸ばししてごめんなさい。部長、以後気をつけます。

本気で気をつけます。

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