2話
カーテンから差すわずかな日の光を感じて私は目を覚ました。
時計を見ると5時半だった。いつもより30分も多く寝ていたようだ。
着替えを済ませ、お弁当を作り朝食の準備をする。
そして7時半に家を出た。
学園までは徒歩で30分ほどで着く。
教室にはすでに凛が来ていて、おはよう!といつも通り元気よく声を掛けてきた。
他のクラスメイト達とも挨拶を交わし席に着く。
それから凛と雑談していると北見先生が入ってきた。
そのすぐ後に要が息を切らして入ってくる。
教室内には笑いがおこり、凛は要に視線でバカと言っている。
HRで今日の予定について北見先生が話す。
午前中に学校案内とLHR、LHRでは学級委員や委員会を決めるらしい。
そして午後は歓迎会。歓迎会は生徒会部活の紹介がされる。
HRを終え、10分ほど休憩をはさむと学校案内のために上級生が各教室に訪れる。
学校案内はクラスを2つに分け1グループ15,6人に上級生が2人ずつ付く。
私と凛、要と拓斗君は一緒のグループだった。
「え~、要も一緒なの?なんなのあんたは!!疫病神か!?」
「だれが疫病神だって!?」
そう言って、凛と要は言い争いを始める。
しばらくしてそろそろ止めようかと思っていると、
「要、そろそろやめとけば?」
拓斗君が口を開いた。
「拓斗!!こいつがいつまでも突っかかってくるのがわりぃんだよ!!」
「お互い様だろ。」
そして、要を黙らせる。
「拓斗君、いつの間に要と仲良くなったの?」
「んー、昨日かな?」
「おれたち親友だから!!ということで、よろしく優雨!!」
1日で親友って…やっぱり兄弟なのか。
「…ないわぁ。」
隣りから聞こえた凛の呟きに心から同意した。
「おーす、先輩様が来てやったぞ~。」
しばらく4人で話していると突然後ろから声を掛けられた。
「密、それうざい。」
「優雨そんなにバッサリ切ることねぇじゃんか。てか、先輩だぞ!!敬え!!」
「「絶対イヤ。」」
凛と声をそろえてニッコリ笑顔付きで言った。
「…。とりあえず並べ~。学校案内行くぞ~。」
「え…。密が担当なの…?」
「心配するな、優雨。郁杜もいるから。」
その場がシーンと静まる。
「案内する気ないのね?」
「おう!!俺はついて行くだけだ!!」
またもやシーンと静まる。
「ごめんね、遅れちゃって…。どうしたの?何この空気?」
「郁杜先輩…。」
私は憐みの視線を向ける。
「優雨ちゃん、なんとなくわかったよ。
とりあえず、学校案内行こうか。」
郁人先輩の一言で学校案内は始まった。
まわっていくうちに、最初の空気は払拭されみんな楽しそうにしていた。
この学園は設備がかなり充実している。生徒に人気なのはカフェテリアと屋上の庭園、中庭らしい。
どこの場所もかなり広く出来ていた。
案内が終わるころには11時を過ぎていた。
「これで案内は終了。午後は楽しみにしててね。」
「じゃあ、またなー。」
私たちは教室に戻り、案内の感想などを話していた。
私たちはまた4人で話していた。
「ねぇ、響谷先輩かっこよかったよねー。」
「わかるー。でも、立花先輩もかっこよくない?」
「確かに。でもさー、この学校イケメン多くない!?生徒会もみんな美男美女だしさ。
先生たちも結構カッコいいじゃん!!」
「だよね。めっちゃ目の保養だよ~。」
「密がかっこいいとかあり得ない。」
「同感。」
「兄貴外見はいいからなー。中身バカだけど。」
「「「お前が言うな。」」」
「…ひでぇ、拓斗まで。」
「密先輩、確かに外見はいいと思うけどな…。」
「拓斗君、密に先輩なんてつけなくていいんだよ。」
「そうそう、呼び捨てで十分。ていうか、馬鹿で十分。」
密の扱いは誰よりも酷い2人だった。
「HR始めますよ。」
北見先生が教室に入ってきた。
黒板に委員会を書き出していく。
委員長、副委員長、保健、放送、図書、広報。
生徒会や風紀委員は指名制らしい。
「役職は以上です。まず、委員長を決めて進めてもらいたいと思うのですが、立候補はいませんか?」
北見先生が語りかけるも誰も手を上げない。
「では、推薦はありませんか?」
そう話したとたん1人の生徒が手を挙げた。凛だ。
凛はあてられると、一瞬私に視線を向けニヤリと笑った。
ああ、この後の展開が簡単に想像つく…。
「優雨がいいと思いま~す!!」
クラス全員の目が私に集まる。
その様子を見て凛はさらに追い打ちをかける。
「優雨は中学の時委員長やってたし、頭も良いし、しっかり者なので向いてると思います!!」
要はこの様子を見てお腹を抱えて笑っている。
「やってもらえませんか、東雲さん。」
私は早々に抵抗するのを諦めた。
「…分かりました。やります。」
「ありがとうございます。では、前に出て進めてください。」
私は教卓の前に立つ。凛と要は未だに笑っている。
仕返ししようと心に決め、進めていく。
その結果は、
委員長 東雲優雨
副委員長 江崎拓斗
保健 佐野優太
放送 春宮凛
図書 見吉蛍夏
広報 立花要
凛と要はほぼ無理やり優雨がやらせた。
無言の圧力で…。
決まったところでちょうど良くチャイムが鳴る。
「お疲れさまでした。では、それぞれお昼休憩に入ってください。1時半からは歓迎会ですので、10分前には教室にいるようにしてくださいね。」
先生がでていくと、各々が思い思いに話し始める。