1話
これからちょくちょく更新していきます。
春、桜並木の道を新しい制服に身を包み歩いていく。
私は東雲優雨。この春高校生になった。
花ノ宮学園。設立6年目にして多くの記録を残している学校。
そして高校とは思えないおしゃれなカフェや中庭や屋上がある。
女子の制服はロイヤルブルーのブレザーで同色のチェック柄のスカートに同色のリボンかネクタイ。
ブラウスの色も5色あって、ソックスは紺か黒なら長さの規定はなし。
私はネクタイしかつける気ないし、ソックスは無難な紺のハイソ。
今1番人気で有名な高校だ。
私が入った理由はただ単に近いし綺麗だからだけど。
「優雨、おっはよー!!」
「うっ…おはよう、凛。何度も言ってるけど突進はやめようよ。」
「いやー優雨を見るとついね!!気をつけるよ!!」
この子は私の親友で春宮凛。なんかいきなり懐かれたんだよね…。
「クラス張り出されてるから見に行こうよ。」
「うん。」
凛と一緒に自分の名前を探す。1年5組だった。
「やったー、一緒のクラス!よろしくね、優雨。」
私も笑顔でよろしくと返す。
「にしても、またあいつも同じクラスか…。」
「まあしょうがないんじゃない。腐れ縁ってやつだよ。」
あいつとは私の幼馴染の事だ。立花要。この学園にかなりギリギリで合格した。
「そうそう、腐れ縁!!割り切って楽しもうぜ。要の事よろしく―、優雨。」
会話にいきなり割って入ってきたのは要の兄、立花密。
名前とは逆にかなり騒々しい人だ。
「要の事は勉強以外は一切面倒見ないから。それと、そのセリフは密の隣にいる人にも言ってるの?」
「その通り、こいつ俺の親友。響谷郁杜。」
「初めまして、東雲優雨です。密がいつもお世話になっています。」
「初めまして。でも大変なのはお互い様だと思うよ。」
私と響谷先輩は苦笑を交わす。
それからは文句を言っている密を無視して、凛と教室に行くことにした。
1-5の教室に入り、まず自分の席を確認する。
席は名前順で私は窓際から2列目の1番後ろの席、凛は廊下側から2列目の1番前。
要は凛の席の隣だった。しかも真ん中。どんまいとしか言いようがない。
渋々と自分の席に向かう凛を見て私も自分の席へ向かう。
隣の子はもう来ていていかにも運動部系の男の子だった。
「俺、江崎拓斗。よろしく。」
「東雲優雨、こちらこそよろしくね。」
笑顔を浮かべて挨拶を返す。
後ろに気配を感じて振り返るとニヤニヤした顔の凛がいた。
「楽しそうですなぁ~。」
凛の席を見ると周りの子はまだ来てないようで大人しく座っているのも嫌で私の所に来たんだろう。
私の返事を待たずに凛も江崎君と挨拶を交わす。
3人でしばらくおしゃべりをしていると1人の先生が入ってくる。
「皆さんの担任となった北見理人です。これから1年間よろしくお願いします。これから入学式なのですが…
立花君はまだ来ていませんか?」
要の席に視線を送りながら北見先生は話す。
溜息がでる。本当に初日から遅刻するとは…。
そう思っていると廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。
「遅れてすみません!!」
要が入ってくる。クラスメイトは全員笑っている。
「立花君、はやく席に着きなさい。」
先生は微笑みを浮かべながら声をかけた。
要は返事をして慌てて席に着く。
「それでは、これから入学式なので講堂に移動してください。」
それぞれが移動し始める。だが要は速攻で私のもとに来た。
「優雨なんで起こしてくれなかったんだよー!!」
「勉強以外は面倒見ないって言ったでしょ。しかも、そういう文句は密に言いなさい。」
「そうそう、いいかげん自立しなよ。優雨はあんたのお姉ちゃんじゃないんだから。」
笑いながら凛も要に声をかける。
んなもんわかってるよ、と不貞腐れたように要は呟く。
「はいはい、さっさと行くよ。要のせいで入学式遅れたくない。」
「そうだね!!要ほっといてさっさと行こ、優雨!!」
凛は私の腕を引っ張っていく。
「おいてくなよ!!」
後ろからは要が追ってきた。
そうして私たちは3人で講堂へと向かって歩いた。
入学式が終わり、今はHR。
これが終われば今日はもう帰れる。
北見先生が明日の予定について話している。
明日は委員決めや校舎案内、部活紹介などで授業はまだないらしい。
それを聞いてクラスメイト達は浮足立っているようだ。
最後に北見先生はクラスメイトを見渡し改めてこれからよろしくと言ってHRは終わった。
「優雨、帰ろ~!」
凛が抱きついてくる。朝言った通り突進はやめてくれたらしい。
「あっ、そうだ!!駅前に新しくカフェ出来たんだよ!!お昼食べに行こうよ!!」
「いいよ。でも今日空手の日じゃないの?」
「休みにしてもらったから大丈夫♪」
「はいはい。んじゃ、行こうか。」
駅前のカフェはブルーでまとめられすっきりとした感じのお店だった。
席に案内され、メニューを広げる。
「いい感じでしょ?優雨が好きそうだなぁと思って一緒に来たかったの!!」
「うん。凛、ありがと。」
私たちは2人でほほ笑みあった。
それからメニューを決め、オーダーをした。
私はチーズスープパスタ、凛はホットケーキのランチセットを頼んだ。
数分後、頼んだものが運ばれてきた。
食べながらも、私たちはおしゃべりを続けた。
「そういえばさ、優雨って部活はいらないの??中学でも入ってなかったじゃん。なんで?」
「なんでって言われても、やりたいことないし、めんどくさいから…かなぁ。」
「優雨ってしっかり者だけど面倒くさがりだよね…。」
「そんなこと言われても…。凛はやっぱりテニス部?」
「もちろん♪せっかくの高校生活なんだしさ、優雨も部活入ってみようよ!!」
「部活…ねぇ。とりあえず運動系は無理でしょ。文化系って言っても特にやりたいのないしなぁ。」
「…まぁ、じっくり考えてみなよ。明日、部活紹介だってあるしね!」
「そうだね。」
そのあとも色々話して気がつくと3時を過ぎていた。
「そろそろ帰ろうか。」
「うん!!にしても、やっぱりここ美味しいわぁ。満足満足。」
「そうだね。あのモンブラン美味しかったなぁ。」
「ミルフィーユとチョコケーキも美味しいよ!!またこようね!!」
「ほんと凛は甘いもの好きだよね。」
「大好きだも~ん♪」
話しているとすぐに家への分かれ道につく。
「じゃあまた明日ね~。」
凛のその声に私は笑顔で手を振って別れた。
私の家は白を基調とした一般家庭にしては大きめの家だった。
両親は海外で仕事をしているようで滅多に帰って来ない。年に2,3回程度だ。兄弟もいなくて1人暮らし状態。
物心ついた時にはすでにこういう生活だった。密と要がよく入り浸ってたから寂しくはなかったけど…。
ちなみに隣の家が密たちの家。おばさんにはよくお世話になっていた。
家に着くと着替えを済ませ洗濯物を取り込む。それから少しのんびりして夕食の準備を始める。
そのあとは趣味のお菓子作りや読書をした。
それからはお風呂に入って寝ることにした。
その日夢を見た。
白と青のきれいなお城。その庭園は様々な花が咲き乱れとても綺麗だった。
そこでは男の子と女の子が手をつないで仲良さそうに歩いていた。
男の子は金色の髪色に碧眼の澄んだ瞳。女の子は綺麗な黒髪に漆黒の瞳。
懐かしいと感じた。
なぜかは分からなかったけど幸せで懐かしい気持ちになった。