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18話

王城に戻る頃には午後5時を過ぎていた。

ブルーベア達といるのが心地良くつい長居してしまったのだ。

心配をかけているだろうと考え、すぐに父様たちに報告に向かう。

その夜は、いつもと違い家族揃っておしゃべりをしたりと一緒に過ごした。

自分が考えているよりも余程心配をかけていたようで少し申し訳なく感じてしまった。



翌日、いつもより早めに科学世界へと戻り準備を済ませる。

「姫様、今日は何故急がれるんですか?」

「昨日は話せなかったからね。

ちょっと話を聞かなきゃならない人が居るのよ。」

自宅を出て隣の家へと向かう。

「レオン、ちょっとこれ持っていてくれる?」

「はい。どなたかへのプレゼントですか?」

レオンに渡した紙袋の中にはフクシアの鉢とピンク色の包み。

「そうよ。」

「それで姫様、いつもは頼まれても行かないのに何で今日は要達の家に来たんすか?」

「話を聞かなきゃならない人が要だからよ。」

私の言葉を聞いて2人は疑問を浮かべるばかりだ。

2人をおいて要達の家へ入っていく。

「あら優雨ちゃん、おはよう。」

「おはようございます、おばさま、おじさまも。」

「おお、おはよう。」

挨拶を交わし、慣れたように要の部屋へと向かう。

扉を開け中に入ると未だにぐっすりと寝ている要の姿があった。

ベッドの下に転がっていたクッションを拾い要の顔面に投げつける。

「ぶっ‼何!?」

「何じゃないわよ、要。」

「優雨か。…なんだよまだ7時じゃねぇか。」

「はぁ…。要、今日が何の日か分かっているわよね?」

「…おう。」

「プレゼントは?」

「あいつが好きなシルバームーンのストラップ。」

シルバームーンはジュエリーのブランドショップ。

比較的安価な物やアクセサリーだけでなくストラップやキーホルダーなども取り扱っているため10代でも持っている者はたくさんいる。

「で?」

「なんだよ。」

「いい加減告白したらどうなの?」

「おまっ!?何言いだすんだよ‼」

要のこの態度に私は盛大な溜息を吐く。

「いつまで片思いしてる気なの?もう3年よ。

一途なのはいいけど、いつまでヘタレている気?」

凛も素直じゃないからね。

両片思いの状態が2年って…ある意味すごいと思うわ。

「そうそう、いつまでもヘタレてんなよ、要。

当たって砕けろ、の精神で行こうぜ‼」

いつの間に来たんだか。しかも、確実に砕けないのを密も知っているくせに。

「協力はしてあげるからいい加減腹括りなさい。

分かったらさっさと学校行く準備しなさい。」

要は軽く返事をし部屋を出ていく。


残されたのは私と密。

「あのヘタレ、告白できると思うか?優雨。」

「どうでしょうね。相当のヘタレだし。」

「あいつ、気づくのも遅かったからな。」

「ええ。半年経ってやっと気づくって…どれだけ鈍いのよ。」

「周りは大概気づいてたしな。」

「凛は両想いって気づいてるはずなのに素直じゃないからね。

私が話題振っても駄目だし。いい加減くっついてほしいものね。」

私は呆れて、密は呆れ半分面白半分で話を進めていく。

いい加減、2人のところへ戻ろうと玄関に向かって歩きだす。

「そういや優雨、最近ちょっと雰囲気変わったよな。」

「…そう?」

「なんか動きが優雅っていうか、どっかのお嬢様ぽいな、と感じる。

まぁ、小さい頃からそうだったけどな。」

密は意外に人を良く見てる。

いつもはヘラヘラして、チャラかったりするけど、やる時はやる人だし、なんだかんだで頼りになる。

魔法世界の事を思い出してから、あまり違和感が出ないようにこっちでは振る舞ってきたつもりだ。

それでも気づくなんてやっぱり密は鋭い。

「まっ、なんかあったら遠慮なく言えよ。」

「ふふ、ありがとう密。」

そう言葉を交わし、レオンとガイの元へ戻った。



学校にはいつもより早めに着いた。

教室に行く前に学園長室へ向かう。

一昨日に頼まれた花を渡すためだ。持ってきたのは苧環の花束。

今日の朝、何故か父様に笑顔で渡された。

苧環の花言葉は「断固として勝つ」。

学園長は妖交じり。

父様は友人と言っていたけれどただの友人じゃないわよね?

考えていても仕方ないと思い思考を止める。

ノックをし学園長室に足を踏み入れる。

「おはよう、東雲君。」

「おはようございます、学園長。

これは一昨日頼まれていた花です。」

「綺麗な苧環だ。…ちなみに誰が選んでくれたのかな?」

「父様ですが…。」

「そうかそうか。ありがとう。アシュリーの奴にもよろしく言っといてくれ。」

「はぁ…失礼致します。」

父様の名前を出したらどす黒いオーラが出た。

私は溜め息を溢し、2人と教室へと向かった。



教室に入ると、すぐに凛が近づいてきた。

「おはよう‼優雨♪」

「朝からご機嫌ね、凛。

はい、私から誕生日プレゼント。」

「ありがと~♪ねぇ、開けていい!?」

「どうぞ。」

そういうと、すぐに包みを開け始める。

近くに来た蛍夏と挨拶を交わし、凛を見ながら話しだす。

「凛ったら朝からずっとあんな感じなんだよ。」

「蛍夏もあげたんでしょ?誕生日プレゼント。」

「もちろん。ケーキ型のキャンドルと小さなうさぎのぬいぐるみをね。」

「キャンドルって前私にもくれた?」

私も誕生日に蛍夏からキャンドルを貰っていた。

「そう、同じところで買ったの。あたし自身もちょっとハマっちゃって。」

「へぇ。私も行ってみたいかも…。今度お店教えて?」

「いいよ。あたしも優雨と遊びに行きたいと思ってたし。

優雨は凛に何をあげたの?…って聞くまででもないみたい。」

凛が騒いでいるのを見て中身が分かったらしい。

私があげたのはフクシアの鉢とガラス製のフォトフレーム。

オレガノで何度か町に出た時に見つけたものだ。

私の顔はオレガノ王国では知れ渡っているため、軽い変装をする。

お忍びとして出かけるのだ。もちろんリタなどが護衛に付いたりするが。



いつもより騒がしい朝も北見先生が入ってきたことでいつも通りの雰囲気に戻る。

「今日の4時間目のHRは体育祭の競技決めや係を決めますので考えておいてくださいね。」

北見先生のこの言葉で、4時間目までの休憩時間は体育祭の話でもちきりになった。

4時間目が始まる前に拓斗君と軽く打ち合わせる。

私が進行し、拓斗君には黒板に書いてもらうことにした。

始業のチャイムが鳴ると、私と拓斗君は前に出る。

先に係を決めることにして黒板に書きだしてもらう。

用具、召集、誘導&審判、救護、放送の五種類。

「救護は保健委員、放送は放送委員と決まっているのでよろしくお願いします。

用具は2人、召集と誘導及び審判は1人ずつです。

誰かやってくれる人はいませんか?」

係は自主的に手が上がり順調に決まった。

ノートにメモをし、競技の方に移っていく。

全学年共通が、100m、200m、全員リレー、組団リレー、綱引き、二人三脚、この6つに加え男子は騎馬戦もある。1年生だけの競技は大縄と借り物競争だ。

「この中で100mか200mどちらかには出てもらいます。

それに加え全員リレーと綱引きは例外なしで全員参加。

残りは有志になります。というわけで、最低限3種目には出てもらいます。」

各種目の説明と人数を話し、進めていく。

順番などは後で決めることにして、組団リレーは足の速い人を優先的に出す。

意外にも意欲的な人が多く順調に決まっていく。

それでも人数が足りないところが出てくる。

二人三脚がなかなか人が埋まらない。

組む人は家族限定となっているから都合とかも考えたらしょうがないかも知れないけど。

一通り決まりそんなことを考えていると終業のチャイムが鳴った。

「走る順番で希望がある人は私のところまで来てね。

来ない人はこっちで適当に決めるから文句は言わないでね。

希望の受け付けは今日中にね!

あと、二人三脚の事は各自親に聞いてみて、よろしくね。」

『はーい。』

皆の返事を聞きそれぞればらけていく。

私はクラスメイトの希望を聞きながら、それをメモしていく。

一段落するといつものメンバーが寄ってくる。

道具を片付け皆で一緒にカフェテリアへ向かった。


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