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17話

学園長室を出てからは家に直行し、そのまま魔法世界へと向かった。

いつも通りにレイスとリタのお出迎えを受け、その場でレオン達と別れた。

着替えを済ませ、すぐにダイニングルームへと向かう。

お父様たちは皆揃っていて、私が来るのは待っていてくれたらしい。

用事があるから帰ってきたということをお父様達には話したが、

肝心の用事について話していない。

夕食が終わり、皆にリビングルームに集まってもらい用事について詳しく話す。

今ここにいるのは、お父様達以外ではレイスとリタ、マークだけ。

「昨日話した用事の事なんだけど、メーアと2人で行きたい場所があるの。」

メーアを膝に乗せながら私は話し出す。

(僕はね、主と主従の儀式をしたいんだ。

だから来てほしんだ、ベルフラワーの森に。)

ベルフラワーの森の言葉を聞いて皆は驚きや困惑の表情を浮かべた。

「ディアボロの森か…。ユウ、その危険を分かっていっているんだな?」

「勿論よ。」

真剣な表情のお父様としばらく見つめあう。

「…いいだろう。」

「あなた‼」「父さん‼」「陛下‼」

「お前たちの心配はわかる。だが、過保護すぎてもユウが困るだろう。」

「お言葉ですが陛下。

姫様の成長速度はかなり早いですが、実戦経験が無さすぎます。

その状態でディアボロの森に入るのは自殺行為だと思いますが?」

「それはわかっている。メーア、目的の場所は深部か?」

(うん。ベルフラワーの森の最深部は僕達ブルーベアの住処なんだ。)

「ブルーベアの住処か…。最深部にはユウしか入ることができないんだな?」

(うん。)

「ならば、その手前まで護衛を着けても大丈夫か?」

(それなら大丈夫だよ。)

「レイス、これでも許可できぬか?」

「…分かりました。」

そこからは私の護衛の話となった。

結果的に護衛に付くのはレイス、レオン、ガイ、ディオ。

そして騎士隊隊長のグレン・アシェールが付くことになった。

騎士隊、魔術隊の両隊長が付く事に流石に反対したがレイスに言われ、渋々口を閉じた。

それからはすぐに解散となり部屋へと戻った。

お風呂から出てリタに髪の手入れを頼む。

その間リタはずっと私に明日の注意事項などを散々言っていた。



翌日、朝食を終え着替えるために部屋に戻る。

黒のリボン付きの淡いピンク色のブラウスに白いショートパンツ、黒のニーハイソックスにブラウスと同色のショートブーツ。その上に白のフード付きロングコートを羽織る。

全てレイスとリタが用意してくれたものだ。

それらに着替え、リタとメーアを連れ立って裏門へと向かう。

正門から出るとすぐに城下町が広がっていて目立つため裏門に集合となっている。

裏門にはもうすでに皆集まっていて、見送りにお父様達も来てくれていた。

「初めまして。騎士隊隊長を務めておりますグレン・アシェールです。

以後、よろしくお願いします。」

「…無理な敬語は使わずに自然体で接しては頂けませんか?」

「…失礼。」

グレンはレイスを連れて少し離れていく。

(おい、レイス。俺の挨拶はそんなに不自然だったか?)

(敬語が似合わないのは確かだ。ただ単に姫様が敏感なだけだ。

そこらの貴族共にだったら充分な態度だがな。)

少しして2人がこちらに戻ってくる。

「話は終わりました?」

「ああ。よろしくな、姫さん。」

「こちらこそよろしくね、グレン。」

挨拶も済ませ、出発準備を始める。

移動手段は馬。

私はまだ訓練中のためレイスに乗せてもらい移動する。

私達が準備を終え出発しようとすると城から走ってくる宰相のアーヴィン・ノディエが見えた。

「おお、来たかアーヴィン。」

「…ついさっき届いたばかりです。

姫様、これをお受け取りください。」

薄茶色の布に包まれたものを受け取る。

布を取り去ると現れたのは漆黒の杖。

杖全体には蔦のような細やかな細工が施されている。

先のほうには細いシルバーのチェーンと白いレースのリボンが巻かれ、3つの宝石とオレガノの淡いピンクの花が飾られている。

「綺麗…。」

「ユウのために作った杖だ、持っていきなさい。

それは魔武器にはできないが質は最上級の物だ。大切に扱いなさい。」

「ありがとう、父様。」

最後に改めて挨拶をし、私達はベルフラワーの森へと向かった。



休憩を挟みながら馬で移動すること約2時間。

目の前に広がるのは科学世界にはあり得ない風景。

緑ではなく青や紫の木々が生い茂っている。

魔力が満ちているせいか、どこか暗い雰囲気を醸し出している。

馬を下り、ここからは徒歩で移動することになった。

先頭をグレンとガイ、レイスが最後尾で、私は真ん中にディオとレオンに挟まれるように進むことになった。

メーアの言葉に従いながら進んでいく。

途中動物型の魔物が襲って来たりもしたが、あっという間に切り伏せていく。

それぞれ容赦がない。逆に魔物たちが不憫に思えてきた。

そんな私の思考が伝わったのか、腕の中のメーアが励ましてくれる。

(大丈夫だよ。あいつらは知能も低い雑魚だから‼

主が気にするような存在じゃないよ‼)

…メーアも容赦がなかった。これは励ましているのかな?

このまま考えても無駄な気がする。早々に考えることをやめよう、うん。

森に入ってから約1時間半、少し先に薄い膜のようなものが見える。

(この膜の奥が僕達の住処だよ。人間たちは聖域と呼んでるんだよね?)

その質問にはレイスが答える。

「ええ、私達がどうやっても入れない場所。

不可侵領域、または聖域と呼んでいます。」

(これは僕達が張ってる特殊な結界だからね。

この結界の中に入れるのは僕達が認めた者達のみ。

だから、襲われるなんてことは絶対にないよ。)

「認めた者とはブルーベアの主のみ、ということですか?」

メーアはディオの質問にきちんと答えていく。

(それはこの中のもっと強固な結界が張ってある場所だよ。

聖域には僕が居れば皆も入ることができるよ。)

そう話すメーアに促されその結界へと向かって手を伸ばし、そのまま進んだ。

私達に続くようにレイス達も結界の中へ入ってくる。

結界の中は様々な色の花が咲き乱れ、たくさんの小型の魔物たちがいた。

(ここにいる魔物たちは争いが嫌いな温和な魔物たちだけ。

人間になれてないから不用意に近づいて怯えさせないであげてね。)

少し奥に行くと結界に包まれている洞窟があった。

(この先は、主しか通せない。危険は一切ないから大丈夫だよ。)

1度振り返り、皆の顔を見回す。

「それじゃあ、行ってくるわね。」

心配そうな顔をしている5人に笑顔を見せ、私はそのまま足を進めた。


洞窟の中は思っていたよりも明るい。

少しすると小さな泉が見えてきた。泉の中央には台座が置かれている。

(ここが最深部。主あの台座のところまで進んで。)

私はソックスやブーツ、コートを1度脱ぎ、泉の中へと入っていく。

私はメーアの指示に従って、台座の脇に立ちメーアを台座の上へおろす。

(主、僕は主をどんなことからも守る。どんな時でも傍にいる。

僕を信じてくれる?)

メーアは不安そうに私に問いかけてくる。

「私は信じるよ。誰が疑っても、非難してもどんなことがあろうとも。

メーアも私を信じてくれる?」

(…僕、主の事大好きだ‼)

メーアと意思を確認しあい、儀式を始める。

泉全体から光が浮かび上がる。

(我、主従の儀式を望む者。

我は誓う、いついかなる時もユウ・エアハートを信じ、守り抜くことを。)

「私は誓う、いついかなる時もメーアを信じることを。

そして、私もメーアを守ることを。」

私のその言葉にメーアは驚いた表情を見せたものの、それは一瞬ですぐに嬉しそうな表情に変わった。

私は守られるだけの姫でいるつもりは少しもありませんからね。

光の輝きは強くなっていき台座の真上、私の正面に何かが輝きを纏いながら浮かび上がる。

(主、それは僕達の主従契約の証。手に取ってみて。)

手に取ると光は収まり目に映ったのは、2つのチャーム。

音符と薔薇が重なりあっていて、片方にはサファイア、もう片方はダイヤモンドがつけられている。

(サファイアのほうは主が持っていて。これはお互いの色だから。僕の色を主に持っていてほしいんだ。)

私はそれに頷きダイヤモンドのほうのチャームをメーアのチョーカーに着ける。

サファイアのほうはとりあえず杖のチェーンに着けておくことにした。


来た時と同じようにメーアを抱いて来た道を進んでいく。

洞窟の中だったために日の光が少し眩しい。

「姫様、お怪我はございませんか?」

「大丈夫よ。儀式も終えたわ。ありがとうレイス。」

皆にチャームを見せたりして報告を済ませる。

「せっかくだし、ここでお弁当食べましょうか。」

実は、時間がかかるだろうとハロルドさん率いる王宮のシェフさん達がお弁当を持たせてくれたのだ。

「こんな綺麗なところなんだし、いいでしょう?」

レイスだけは反対したが、私とディオでどうにか宥めすかした。

最後には渋々だが納得もしてくれた。

近くには湖があって、お昼はそこで広げることにした。

お弁当が入っている袋の中には、お弁当の他に紅茶とコーヒーが入った水筒が1本ずつ。

メーア用にカットフルーツ。ご丁寧にレジャーシートまで一緒に入っていた。

お弁当の中身は食パンとライ麦パンで作られた一口サイズのサンドイッチと付け合わせにポテトとプチトマトだった。

ガイがレジャーシートを敷き、レオンが飲み物を配る。

軽く談笑しながら食事を進めていく。

そしてふと目に入ったのはたくさんのブルーベア達。

メーアのように小さな子、2m程ありそうな大きな子もいる。

メーアが元気よく駆け寄っていく。

私もメーアに続くように近寄っていく。

(尊きオレガノの姫、ユウ・エアハート様ですね。

私はここに住むブルーベア達の長、アスールと申します。)

約1m程のブルーベアが話し出す。

(やはりあなたのもとへ行かせたのは正解だった。

姫様、貴方はたくさんの者達に狙われる事でしょう。

そして、そう遠くないうちに戦いが起こる。

我々は姫様のためならば力になりましょう。貴方は光のように暖かく優しい方。

貴方のためならば我々は力を奮う事を惜しまない。)

「ありがとうございます。

アスール、貴方たちの気持ちを私はとても嬉しく思います。

貴方達も私に何か出来ることがあれば何でも言ってほしい。

私は国も民も貴方達も等しく大切に思っているのですから。」

(…いつでも来てくだされ。貴方方なら我々は歓迎致します。)

「ええ。せっかくですし、貴方達も食事にしましょう。

カットフルーツは山のようにありましたしね。」

そのあとはブルーベア達や小型の魔物たちも交え、楽しい時間を過ごした。


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