14話
翌日、家族揃って朝食を済ませる。
午前中は魔法世界及び国についての勉強。
午後は訓練場にて風魔法の訓練。
今日は上級魔法をいくつか覚えることができた。
「姫様は呑み込みが早くて助かります。
明日は午前中に風魔法。午後は水魔法の訓練になります。
風魔法は明日で上級はすべて覚えることが出来るでしょう。
午前9時と午後1時半にここへ来て下さい。」
「分かったわ。」
呑み込みが早いのは、幼少期に魔力のコントロールを完璧にしていたのとレイスのスパルタ訓練のせいだと思う。
「アフタヌーンティー後の予定はありませんのでご自由にお過ごしください。
くれぐれも1人で行動はなさらないでくださいね?」
「…分かっているわ。」
「では、お部屋までお送りします。」
部屋にはお茶の準備をしたリタと兄様、セシルがいた。
ちなみにメーアは私の肩の上だ。最近はそこが定位置になっている。
「お疲れ様でした。」
「リタもお疲れ様。」
「今日も一緒にいいかな?」
「もちろん。」
「姉様!!」
セシルが走り寄ってくる。
抱っこをしてソファまで行く。
兄様の向かい側に座り、セシルが隣に座る。
「本日のスイーツはベリーのパンケーキです。
紅茶はブラックティーを用意いたしました。」
ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーなどがたっぷり使われている。
ソースはストロベリーのようだ。
メーアにもフルーツの盛り合わせが用意されていた。
談笑しながら食べ進めていく。
話題は主に日常生活についてだ。
私の科学世界での生活は今週からはガイ&レオンからレイスへ。
そこからお父様たちに報告されているらしい。
その前はお父様直属の諜報部員?が報告を行っていたらしい。
交友関係も把握済みというわけだ。
今日は皆の普段の生活を知ることができた。
兄様はお父様に付き、国王としての仕事を学んでいるそうだ。
セシルは来年から学園に通うことになっているため、国の歴史などの勉強に魔力のコントロール、初級魔法の訓練などをしているそうだ。
教師役はセシルの専属執事のマーク・カリエール。
物腰が柔らかく穏やかな性格だ。
セシルもマークにはよく懐いている。
適正属性は、兄様は火と風、セシルは水と土らしい。
マークもセシルと同じ属性らしい。
アフタヌーンティーをゆっくり楽しんだ後は、ダンスの練習をした音楽ホールのような場所で音程の確認と作曲をすることにした。
もちろんリタにもついてきてもらう。
音程の確認の際にはリタにピアノを頼み、何回か歌う。
確認が終われば、ピアノを使い作曲に没頭する。
集中し過ぎていたようでリタに声を掛けられた時には夕食の時間がかなり迫っていた。
集中していたおかげで作曲はかなり進んだけど…。
リタと共にダイニングルームへと向かう。
家族揃って食事をとる。
兄様やセシル、マークは私の歌を一部聴いていたみたいで、流れでお父様たちの前で今度歌うことになってしまった。
家族の前でのオリジナル曲はなかなかに恥ずかしいんだけど、どうしても断り切れなかった。
いつも通り和やかに夕食は終わり、私は自室に戻り光属性の魔術書を読むことにした。
上級ともなってくるとかなり難しい。複雑な術式が多く理解するのに1つ1つ時間がかかる。
私のやり方としては術式を理解してから実践という流れになっている。
今までの中級までの光魔法は空き時間を利用しなんとか使えるようになった。
それでもコントロールが難しく時間はかかってしまったが…。
結局この日は2つほどしか理解できなかった。
翌日、いつも通りに起き、朝食を済ませる。
時間は過ぎていき今は午後3時。
「お疲れ様です、ユウ様。」
「さすがに疲れたわ。」
ディオと互いに苦笑を交わしながら話す。
「午前中はレイスの指導でしたしね。昔から自分にも人にも厳しい人でしたから。」
「そういえばディオはレイスの先輩なんでしたっけ。」
「ええ。」
ディオとは訓練後はよく話をする。
普段のことだったり、学生時代の話だったり色々だ。
「ディオ、良ければ一緒にお茶しましょう。
兄様とセシルも来るでしょうし、私ももう少し話したいわ。」
「ユウ様からのお誘いとなれば断るわけにはいきませんね。
お言葉に甘えてご一緒させていただきます。」
返事を聞き、ディオと共に自室に戻る。
部屋にはお茶の準備をしているリタ、ソファには兄様とセシルが居た。
「姫様、ディオ様、お疲れ様です。」
「リタもお茶の準備ありがとう。
ディオの分もお願いできる?」
「勿論です。すぐにご用意いたしますね。」
私とディオは並んでソファに座る。
「2人ともお疲れ様。調子はどうだい?」
「風魔法は習うようなことは終わったわ。」
「水魔法は上級をあといくつかお教えして終わりですから、あと2回ぐらいでしょうかね。」
「そうか。
ユウこの訓練が終わればもう少しゆっくりできると思うから頑張るんだよ。
まぁ、レイスの事だからそのあと実践てことでどこかに連れ出されると思うけど。」
後半兄様の顔色がどんどん青くなっていく。
「…どこかって?」
「私の時はオフェリア鉱山だったよ。ちょうどよく騎士隊に依頼が来ていてね。」
オフェリア鉱山はオレガノ王国の北西に位置する鉱山。
名前の通りオフェリア一色の美しい鉱山だ。
基本魔物は魔力が満ちている場所、一部の森や山、洞窟などにいる。
そういう場所を私達はディアボロと呼んでいる。
オフェリア鉱山は普段は魔物が出ない安全地帯だが稀に魔物が出る時がある。
それはオフェリア鉱山だけでなく、他の森などもそういうことがある。
「まぁ、レイスやリタも同行するだろうから安心していいよ。
不安がっているユウに1つだけアドバイス。落ち着いて対応すること。
落ち着いてさえいれば危険もないだろうから大丈夫だよ。」
「はい。ありがとう、兄様。私頑張りますね。」
話が一段落ついたところでリタから声がかかる。
「ご用意できましたよ。
本日は蜂蜜とキャラメルのロールケーキです。
紅茶は甘さ控えめのレモンティーをご用意いたしました。」
私たちに配り終えると、メーアにもフルーツの盛り合わせを出す。
「んっ、これすごく美味しい。」
「ユウは昔から蜂蜜とキャラメルの組み合わせ好きだったからね。」
「姉様、すごく幸せそうな顔してるよ。」
セシルにそう言われて顔に熱が集まるのが分かった。
「ユウ様は本当に可愛らしい方ですね。」
「ディオ…追い打ちかけないで。」
今日のティータイムは私の羞恥が最大の状態まで高まった時間でした。
アフタヌーンティー後は昨日と同じ部屋で作曲に没頭。
夕食ギリギリまで作業して曲を完成させた。
楽譜をリタに預け、今日はそのままダイニングルームへ行く。
いつも通り和気藹々とした空気が流れている。
するといきなりお父様が私に話を振ってきた。
「ユウ、2週間後に体育祭があるらしいな。
私たちも見に行こうと思ってるからな。頑張るんだぞ。」
「え…。お父様?私たちって?」
「私とディアナ、エイベル。セシルお前はどうする?」
「僕も行く‼」
「よしよし。ということで4人で見に行くからな。」
「ふふ、楽しみですねぇ。」
みんながニコニコと笑顔で私を見てくる。
ああこれは止めても無駄だ。この美形集団が来たら…憂鬱すぎる。
私は複雑な思いを抱きながら夕食を終えた。