表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

企画短編

くーるぐーる!

作者: 銀玉鈴音

 Hey! オイラの名前はCoolGhoul。イカした名前だろう? いや、イカされちゃいねーな、オイラ既に死んでるからな。クールグール!

 体温ニアリーイコール室温の腐臭漂うCoolGhoulなオイラの朝、いや、夜はやっぱりニンゲンのグラッセから始まるんだな。ドライなパセリを突っ込んで、青赤黄色のバター艶がペッカペカに出るまで煮込んだニンゲンのグラッセは最強の一品。付け合せにも、主食にも。オイラグールだから主食になるけれど、あんたにゃきついかもな。でも、食ってると慣れるぜ、ニンゲンのグラッセ。超お勧め。

 あ、法律に触れるんじゃねぇかって?

 やめてくれよ、オイラCoolGhoul、ニンゲン社会の法律は守ってるぜ?

 若い頃はヤンチャが過ぎてさ、ニンゲンをヤってヤって喰ったモンだけどさ、最近はアンチ・アンデッドの宣教師が縄張り張ってやがるから、しょうがなく法律って奴を守ってやってるさ。

 そんなオイラのお勧めは胎児を使うグラッセ。ヤってから6ヶ月位がちょうどいいね、供給もそこそこで、お値段そこそこ。病院から直で廃棄されてるから、ちょうどいいんだわ。手間がねぇし。

 ああでも、やっぱり量がないから文句はでるさね。

 そうそう、病院っつったら、やっぱジジババはダメさ。

 どうしても手にはいらねぇっていう時に喰うけれど、硬いわくせぇわ、たまどころかほとんど病気持ってるわで、最悪だわ。

 え、オイラ的に最高の食材はなんだって?

 やっぱり最高なのは事故か何かでおっちんだお子ちゃまが一番だぁね。なんだかんだで結構親が泣いてるのさ、そういうのを見ると、オイラがグールになったときにはどっちも泣いてなかったなぁーって、ちょっと、すげぇ、イラっと来る気分になって、両方ともザクっとグラッセにするんだけどよって、ああ、まずいまずい、ここオフレコな、オフレコ。AU牧師に聞かれたら溜まったもんじゃねぇよ。まぁ、何とかするけどよ。一度あいつらに追い掛け回された時にゃ、オイラ一度死んでるけれど、もう一度入滅するかと思うぐらいにゃひどい目にあわされたんだぜ。

「不浄なるアンデッドよ、土に還れ」ってよく言うけれど、腐ってもグールだから、腐るわけじゃねーのよ、筋組織判る? アレが何かマジカルなパワーで腐敗菌に冒されずに済んでるっていうか、乳酸菌っぽいのがあるじゃんな、オイラこう見えても医者だから、ああでも脳みそ腐ってるだろ(笑)ってよく同僚に言われるからアレだけどね。土に還るって有機物が分解されて無機物になる過程をいってるんだと思うけれどよ、人間的に有用な変化を発酵とか言うらしいな。クールグール! オイラグール的にも有用な変化を発酵っていいんじゃねってお上に上申してこよう、このインタビューが終わったら! いや、いいや、それよりなにより、お前さんがちょっと世間に広めてくれればいい。オイラの顔を広めるんじゃなくて、オイラの主張って奴を広めてくれればいい。

 クールグール! いい考えだろう?

 首を縦に振れば、あんたは命が保証されて、オイラは今まで無意味に、無作為に、思いつくがままにしゃべり散らしていた状態を改めることができる。カイゼンって奴で、オイラとあんたの関係もカイゼンするって寸法さ。

 ん、ああ、オーケイオーケイ。首は縦にきっちり振ってくれたな。横に振ったらちょっとばかり、お互いに非常に不愉快な時間を過ごさなきゃいけないことになった。

 おおっと、汗がひどいな、拭ってやるよ。

 オイラ、医者だからな。あんまり患者が苦しんだりするのは好きじゃないんだよ、遺伝子的にな。ハハッ。

 いや、なにもおかしなことじゃないんだぜ、遺伝子。人間の遺伝子って奴は結構センチメンタルな奴で、恐怖に対して敏感な遺伝子って奴もあるわけさ。グールもそうなんだよ。オイラはそいつをぎっちり脳味噌に詰め込んでる。人間だったときからな。へへ。いいだろ、クールグール!

 人間だったときのことを思い出さないのかって?

 いや、きっちり毎日三回思い出してるぜ、朝飯、昼飯、夕飯の時間にだ。時間が十二時間ずれたときから、きっちり思い出してるさ。

 時々勘違いしてる奴らも多いけれどよ、オイラは別になにも、人間が嫌いな訳じゃないのさ、LOVEに満ち溢れてるっつってもいい。ラビットはラブでイットだからラビットなんだって話さ。クールグール!

 そろそろ酒も回ってきたかい? オイラはそうだ。お前さんも結構いい感じに回ったように見える。

 まぁ、こいつを食っておけよ。オイラ朝飯、おまえ夕飯。ちょいと重めの生姜焼きって奴。

 ああ、人間じゃない、単なる豚肉だ。豚肉。そして、おれのは人肉。おかしな味がするならその場で皿を取り替えようじゃないか。

 ああ、うん、不味くない。クールグール! 楽しんでいるか? 楽しもうじゃないか? 楽しめない? それはどうしてだい。

 オイラは楽しいが、あんたは楽しくない。そりゃあよくない。クールグール!

 どうしたら楽しくなるか?

 簡単だ?

 オイラがもう一度死ねばいい?

 こりゃ妙なことをいい始めた。オイラクールグール。一度死んだ死にぞこない。そう簡単にはあの世にはいけないっぽいんだぜ。

 一つ話をしてやろうじゃん。

 幹細胞ってしってるか?

 シラネ?

 こりゃ失礼。

 まぁ、未分化細胞って奴でな、ガキンチョが生まれてくる前の、さらにオカンの腹ん中にいる時期に活発に動いている細胞でな、なにものにでもなることができるって奴なんだ。

 心臓、脳味噌、眼球、まぁ、傷ついたら一生モノでてーへんな奴も、生まれてくる時にゃ自然とできるって奴さ。

 でも、そいつはだんだんとなくなっていく。オカンの股からズルっと生まれ落ちたかつてのオイラやアンタが、今みたいなかわいげのない面になった後で、何者にでもなれるっていうのは、ちょっとな。そいつはズルいって感じる人間が多かったからそうなったんじゃね。

 だけどな、オイラ達グールは、そういうまっとうな細胞のタガがはずれてだな、ふつうなら、存在しないそいつで満ち溢れてる。可能性のかけらって奴で、満ち溢れてる。

 クールグール!

 実にホットな話じゃねぇの、死んだ後にしかできない話っていうのが実にホットだ。 

 普通なら、存在しちゃあならねぇ可能性って奴で、満ち溢れてるって奴さ。

 ところでさ、オイラの体温知ってるか? お、しらねって顔してんな。まだ若いのに、そんな世界に興味なさげに生きてちゃつまんねーだろ?

 特別に教えてやんよ。だいたい気温プラス十度をちょうど保ってるクールな体温だ。ほれ、ちょっとヒンヤリするだろ? 生温くてキメェ? まぁいいじゃねーか。オイラ、生きてる人間に触れるのもまた、楽しみなんだからよ。

 まぁ、オイラ医者だから。ほかの奴らがあんまり気にしないことを気にかけてるクチだから。仕方ないよな、まぁ、本当にこいつは秘密なんだが。

 ……で、まぁ、どういう理屈かわかんねぇけど、死体幹細胞が発生する温度がそういう感じでな。室温+十度。この条件なら、死体から徐々に増えるのさ。


 室温プラス十度。こいつって、結構人間の体温に近いと思わないか。


 ところで、今日の室温二十六度。人間の体温は三十六度。グールの体温も三十六度。

 クールグール!


 お仲間にならないか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。 グロいはずなのにおもしろくて驚きました。 グールさんの過去にちょっとほろりと来ました。どっちか泣いてあげればいいのに…。
[一言] 幹細胞が出てくるとは思いませんでした。 グール(ゾンビみたいなものですか?)の謎解明って感じですね。 インタビュアーはやはり、豚の生姜焼きでたらふくにさせた後に食べちゃったんでしょうか? …
[一言] 読んでいる最中、ラップを聞かされているような錯覚に陥りました。 なんだか癖になりそうです、クールグール! 聞き手(?)の最後がどうなったのか、凄く気になります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ