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季節のささやき。2

作者: 千桐久遠

秋の終わりと冬の始まりとの境界は、とても曖昧なものなのだろう。移り変わりを告げるのは、一枚一枚と散る紅葉や、身が震えるような冷たい北風。当たり前のように廻り巡る季節は、時に人に過去を振りむかせる。灰色に滲む記憶、古びてくすむ人の縁。過去のどこかに忘れてきたものであっても、かつてと同じ四季を迎えた時には、追憶として浮かび上がってくることもあるかもしれない。

「前回の模試、A判でたわ」

「そっかー」

乾いた落ち葉が風に吹かれて小さな音を立てて転がって行く。狭い道に並ぶ制服姿の二つの影は、すらっと背の高く均整のとれた体型の男と、こちらも平均よりは幾分身長の高い少女である。

「これは安泰だねえ」

「本番までは分からんからな」

男の方は、難しい顔をするでもなく飄々として、そして無意識に歩幅をとなりの少女にあわせつつ。もう片方は、セミロングの髪がマフラーに絡まるのを少し気にしながら。となりを歩く男の顔を少し見上げて。

「東京か。ここより、ずっとずっと都会だよねえ」

「だなあ」

「きっと、いろいろあるよね」

「大変なことも、面白いことも、だろうな」

そこは山の上にある高校からの帰り道。友達以上家族未満の二人組が過ごす、特別でないただの一日のこと。


―――――――――――――――――


 ここ二年と半年ほど、三田徹のもとに厄介事を持ちこんでくるのは決まって一人の悪友である。その悪友との付き合いは、三田が田舎町から上京し大学に入って以来といった方が正しい。

初冬のある日のこと、外気に逆らいすぎて暑いほど暖房が効いている教室の片隅で、彼は三田の肩をたたくのであった。

「おい徹、お前には大変重要な役目がある」

「代返か代筆か代理かどれだ」

朝から妙に機嫌のいい悪友・吉村に、振り向きもしないまま経験上正解率の高い順に選択肢を出す。

「心外だな、栄誉ある役目だぞ」

以前に文化祭で接客を頼まれた時と似た流れを感じ、三田は端正な顔を上げて詳しい内容を聞くことにした。

「近くの某おじょーさま大学との合コンを取りつけてやった」

「おう、そうか」

「おい感動薄いぞお前、彼女もいない男子大学生としてどうなんだ」

抜け目なく大仰なリアクションを取るのはいいが周囲の女の子に笑われているぞ、吉村よ。

「もちろん徹君には先陣を切って口説いてもらいたい」

自分に何を期待しているのか、と一つため息をついて三田は吉村の妙なテンションの高さに納得した。まあ自分だって男だし、行きたくないわけじゃないが。

しかし、三田からみると、うまいこと三枚目を演じている吉村の方が幾分もてるように思える。

「どうせお前が幹事なんだろ。盛り上げ役もすればよかろ」

「残念だが俺はモテるには身長が足りん……」

「そこ気にする女の子はそこまで多くないんじゃ」

「勝者の余裕からくる情けは十分だこのやろう」

あちこちのサークルと仲良くしつつも、特定の一つにはどっぷりと浸かることのない吉村の要領の良さは、実にうらやましい才能であると三田は思う。広く浅くの人間関係を築くことができるのは、子供のころから多くの同級生に囲まれているような環境にいた者だけの特技なのかもしれない。

「で?金全部こっち持ちじゃないなら行ってもいいけどさ。先陣は切らないけど」

以前にも数回、人数合わせだ来いといって引っ張られたことがあった。別に彼女ができることもなかったし、今回も積極的に求める気は起きない。しかし、普通の飲み会になれば元は取れるだろう。

「お前はいてくれるだけで女性陣も積極的になってくれるから大丈夫だ。そうそう、日時……今日。正確には今から5時間後」

「……ああもうそういうことは早く言えこらっ」

 運よくバイトのシフトには被っていなかったものの、なんだかんだ真面目な学生の三田としては明日提出のレポートとか五限の授業とか諸々調整する必要に駆られるのである。

「だって昨日はサボり可の授業しかなかったしー」

 どうせ今着ているおろしたての服を買いにいってたのだろう、と三田は呆れつつもひょいひょいとまた他の奴に声をかけに行く吉村を見送るのだった。


―――――――――――――――――


 平日の夜だというのに、繁華街を抱える駅前の賑わいになんら陰りはない。都会の街は眠らないとはよく言われることで、地方出身の三田にとってはいまだ慣れない景色であった。

参加者は全部で六人ということで、男は三人、三田と吉村ともう一名の友人とがいる。こういう飲み会における最少人数では数合わせという言い逃れは苦しいのではなかろうか、と予約した店への向かう途中から三田は勘ぐるのであった。

「ひー寒い寒い」

「寒いからこそアツいトークをだな」

「あんまり調子のるなよまったく」

昼間はおおよそ眠そうにしていて生気がないにも関わらず、日が落ちると途端に元気になるのは、仮にも生物のくくりに入るものとしてどうなのだろうか。

「可愛い子いるかなー」

「向こうは期待しててねーとか言ってたぞ。つっても一人は面が割れてるが」

相手方のうち一人は吉村の知り合いだという。背は低いのにとにかく顔だけは広いやつである。

「さ、入るぞ。……本日18時半から予約の吉村ですー」

店内から湧き出るはしゃぎ声、味の濃い料理から立ち上る食欲を刺激する香りと、仄かなアルコール。そこにあるのは、一日の疲れを癒す、解放された時間。人々の熱気につられるために自然と気分が上向く場所で、若者から年寄りまで根を張っている飲み会の文化は残るべくして残っているのだなあ、と思えるのであった。


 少なくともこの国において、男女の出会いはお見合いから結婚相談、合コンから出会い系まで様々あるが、最初の自己紹介がその後の命運を左右するものになる、というのが通説である。とはいえ三田はその後の命運にはいまいち興味が持てないために、毎回テキトーな最低限の自己紹介で済ませている。

 そっけなさに女性陣の気を悪くしたかと懸念する三田であったが、彼の正面に座る女の子は何事もなかったように笑顔で口を開くのだった。

「2年の笹原光莉です。一応文学部で、趣味はピアノとか料理とかです」

ふわりとカールした肩口までの髪と、薄めの化粧なのに良く目だつ茶色がかった大きな瞳が印象的な子だった。

「一つ下か。よろしく」

「よろしくお願いしますね」

 三田と光莉が視線を交わす。何故かは分からないが、その少ない交錯で三田には光莉の考えていることがなんとなしに読みとれる。そこそこ、興味をもってもらえたようだな、と。

 ほぼ初対面の人に惹かれること。第一印象で、打ち解けられそうだと直観すること。三田の人生で、これは滅多にないことであった。


 面通しが済んだところでちょうどよくお酒が出そろったようで、中央に座る吉村とその知り合いだという派手目の女の子が音頭を取り始める。

「さてさて、お酒が入りましたところで」

「この後の時間おおいに楽しむため、まずは乾杯といきましょう」

「「「「お疲れ様ー」」」」」


「三田さん、なんか合コンに来る人にしては珍しいタイプですよね」

「正直なことをいうと数合わせに近い」

「やっぱり。彼女さんいたりするんですかー?」

「いないなあ」

「以外」

本当に驚いたわけではなく、そういう人だろう、という認識をされたようだ。

「別にこまってないけどさ」

「それ言ったら台無しですよ」

 光莉こそ、付き合う相手がいなくて困るということではなさそうだが。遠まわしでも照れるので言わないことにした。

「実はあたしも、半ば数合わせみたいなものです。内緒ですけれど」

「内緒にしておいた方がいいかもな……」

 なにより光莉を見るなりテンションあがった風情の横の二人には。しかし、先陣を切れなどと煽った手前、吉村も三田が光莉と延々しゃべっていても止めづらいだろう。

「まあ、せっかく知り合えたんですし」

「数合わせ同士仲良くするかね」

 クス、っと上品に光莉が笑い、甘口のカクテルを口に運ぶ。二人の間に、ちょっとした悪いことした時の共犯のような、連帯感が生まれたのであった。


 初顔合わせから数時間。席変わろうか、といった提案も不思議と出ず、時たま隣席の吉村たちが会話に入ってくるものの、三田と光莉は相当長い時間話しこんでいくのであった。

「こういう時じゃないとお嬢様っぽいし声掛けられないな」

「あたしなんて全然一般庶民ですって。ナンパとかしないんですか?」

「地方出身だし慣れないよ」

東京からすると近郊どころか隣県でさえない県の、マイナーな町が三田の出身である。

「へー。でも方言とかないみたいだし、言われないとわかりませんね」

「分かる人は分かるみたいだけど。笹原さんはこっち育ちに見える」

「小さい頃に田舎から引っ越してきたらしいんですけど、まあ東京育ちですね」

「やっぱりなあ。こっちの女の子、やっぱり雰囲気違うんだよなあ」

「へえー。でも、地方にも三田さんみたいな人はいるんですね」

光莉の声からは、お世辞のような響きは感じなかった。なんとなく。

「どこにでもいるって」

「そうですかねえ」

向こうから三田がどう映っているのかまでは測りかねるものの、光莉の言葉の端々や小さな仕草から、自分でも驚くほど相手のことが読みとれる気がしたのだ。そう、この感覚、長く付き合いがある人と話しているような安心感。光莉は、自分の知っている誰かに似ている、ような気がする……。会話が弾むからか、お酒が常より進んでしまい、ぼんやりした頭で三田は考えるのであった。


―――――――――――――――――


 明くる日もまた、期末が近いために人口密度が上昇傾向の教室の片隅で、三田と吉村は顔を合わせていた。

「いやー、好評のようでよかったよかった」

数合わせ同士で本来とは方向の違う意気投合をした三田たちを尻目に、吉村ともう一人は正統派に楽しんだようだ。

「さて三田よ、硬派なお前も今回は楽しんでくれたようでなによりだ」

「……まあ、知り合えてよかったよ」

「笹原光莉ちゃんだっけ。かなり可愛かったなー」

「妙に波長が合う子だったな」

「しかし、徹から特定の女の子の話題が出るとは」

「一応付き合うだろ、お前の品定めにも」

 そこまで朴念仁じゃない……はず。

「淡泊だしなあ。まあようやく春が来たようで」

「そういうんじゃないって。ただ、打てば響くというか、妙に考えていることが伝わってくるんだよなあ」

 何がそうさせるのか分からないが、気になるところであった。ひとめぼれというわけでもないような。好きというわけでもない気もするのに、また、話してみたいと思う。

「運命のなんとやら」

「あほか」

 そんなロマンを信じるのは夢見る乙女だけであろう。現実的には、以前に会ったことがある、というところだろう。

「地元の人じゃあないらしいしなあ」

「俺ならあんな可愛い子そうそう忘れないが」

 大した特技だ、となげやりに返しつつ、三田は記憶を探る。東京育ちといっていた光莉と地方に引っ込んでいた三田が知り合うようなことがあるのだろうか。地元の人々について思い出すと、自然と浮かんでくる顔があった。

「どうするか……あいつにでも聞いてみようかな」

「当てがあるのか」

「幼馴染。転校生とか接点があるようなイベントでもあったなら覚えてるかも、と思って」

連絡を取るのも二年ぶりになるのか、結構気まずいなあ。

「あれですか実は地元に妻を残してきたタイプですか道理で片っ端から……」

「うるせえそんなもんじゃない」

 少なくとも三田にとって幼馴染というのは、友人以上家族未満といった立ち位置であって、その不等式の間に『恋人』なんて項はないのである。

「しかし一年くらい連絡一つしてないし気まずい……」

携帯の電話帳には、幼馴染――箕輪千歳の名前がそっけなく登録されているが、上京してからはほとんど使ったことはなかった。

「てか回りくどいことをするより、せっかくIDからメアドまで連絡先くれるほど仲良くなったんだから直接聞け」

「……そういう発想があるのか」

「おい、何のための合コンだよ」

ずっこけるリアクションのうまいやつだ。

「ほらいけいけ徹。うまいこといった暁には縁結びのきゅーぴっどとして俺も鼻が高いというものだ」

「なにがきゅーぴっどだか」

 事の顛末がどれほどうまく転んでも、お見合いばば、と同列がいいところだろう。

 しかし、光莉を誘うにしても、いかんせんデートのお誘いなんてどうしたらいいのか分からない。

「どうするんだ」

「おいおい、まずはこっちだろ。気軽にいけ、ちょっと二人で出掛けません?くらいで」

吉村は三田のスマートフォンにも一応入っている、最近流行りの緑のアイコンのSNSを指さした。

「そうなのか……」

近頃のSNSやらアプリやら、最近では様々ある交流ツールにはどうも疎い三田であった。


―――――――――――――――――


 近頃広がっているSNSというものは、功罪は様々あるにしろ、人と人とを繋ぐ機能は特定の境遇にある人々をおおいに助けていると思う。例えば、両親の離婚で離ればなれになっていた姉妹とか。

 「お姉ちゃんに話そうかなー」 

 ベッドの上で、名前からしていかにもつながっています感を出しているSNSアプリをいじりながら、光莉は思い切って昔の家族を探した時を思い出していた。

 笹原光莉の旧姓は「箕輪」という。比較的珍しい苗字だったのも幸いして、10年近く会っていなかった姉とのつながりは割と簡単に見つけられたのであった。とはいえ、住む場所からなにから随分と異なる暮らしをしていた二人の遠隔を埋めるためにはいくらか時間がかかった。何が悪かったのかといえば、地元に暮らすことを頑迷に譲らなかった父親と、自分の仕事のために本社勤務を望んだ母親かもしれない。ほとんど会ったことのない片親に対するわだかまりも今だあるし、事情を知ったところで納得できないという感情も十年から抱えていたけれど、あまり気にしないことにしている。

以来、ときどきだけれど取り留めのないことをやり取りしている。姉妹の時間といったものはほとんど持てなかったけれど。画面越しのやり取りをいくらか重ねるうちに、光莉にとって千歳は、気軽に色々しゃべれる先輩のような、そんな間柄になっていた。ネット上の知り合い以上の関係に容易になれたのは、二人に流れる血のつながりが成せる技でもあろうし、お姉ちゃん――千歳の包容力とか人徳のなせるものでもあるのかもしれない。


『こんばんはー』

 お姉ちゃん、千歳とのチャット部屋に書き込みをいれる。引っかかったのは、昨日の合コンにて、三田との会話で出てきた町。よくよく思い出してみると、そこは今もお姉ちゃんと父親がいる場所のはずだった。

『こんばんは、光莉。なになに』

 夜も浅い時間のせいか、数分で応答があった。

『ちょっと確認だけど、お姉ちゃんたちの住んでる町ってさ』

 東京からは北に二つくらい県をまたいだところにある町の名前を告げた。光莉が知っているのはその名前だけ。母親と主に東京に移り住んだのは、小学校に上がる前だと聞いている。

『うんそうそう。急にどうしたの?サプライズ訪問みたいな?』

『いや、あたしが行くとかじゃないって』

 ほとんど会ったこともなく、もう一人の娘に全くコンタクトを取ろうともしない父親に対してどう接したらいいか、なんて。まだ二十年しか生きていない学生には、結構荷が重いよね、と光莉は思う。再び全員が血のつながった家族として顔を合わせるかを決めるのは、光莉や千歳ではないのだろう。

『昨日大学またいで飲み会があってさ。まさしくその町出身の三田って人に会ったんだけど。お姉ちゃん知ってたりする?』

『お、徹のことじゃん』

あっさりと返信がきて、拍子抜け。

『小中高一緒家も近くの幼馴染ってやつかな。偶然だねえ』

……え?


―――――――――――――――――


 冬至が迫り大分傾いでいる昼間の日差しのもとでは、日向にいたところであまり体感気温は変わらない。この時期、慌しい雰囲気に満ちているのはつるべ落としよりなお早い夕暮れにせかされるゆえか。そんな行き急ぐ人々の集う昼下がりの駅前に、待ち合わせの男女が二人。

「こんにちは」

「こんにちは。来てくれてありがとう」

「三田さんから誘われたんですもん、もちろん」

三田は、今の状況まで極めてスムーズに進行したことに小さい驚きと感動を覚えていた。太陽の下で初めて見る光莉は、三田としても可愛いというにやぶさかではない。しかし、やはり何かの既視感を覚えるのであった。

「えーと笹原さん」

「会うの二回目ですしせっかくですから名前で呼んでください。距離ぐっと縮まりますし」

「そうした方がいいのか」

仲のいい後輩、くらいの響きになるようように、小さく二三回呼んでみる。はい、と緊張した様子もなく光莉は答えるのであった。

「さて。これは、おためしデート的な?」

小首をかしげて、試すような調子で聞いてきた。光莉に興味が湧いたのは本心であるものの、合コンのあとに二人でお出かけなんてシチュエーションは煽られた勢いで達成されてしまったものなので、三田としては極めて答えづらい。

「いやーそういわれると違うような気がする」

「えー。そこ否定しますー?」

「うーん」

これ以上続けても曖昧に逃げることしかできなそうなので、三田はとりあえず話題をそらすことにした。

「それより寒そうだけれど大丈夫?」

スカートも短いし、冬物としては薄めのコートに見えた。寒くはないのだろうか。

「も・ち・ろ・ん、大丈夫です。ま、でも早くいきましょうよほら」

光莉は一瞬唇を噛んで、ぐいぐい三田を引っ張っていく。何故だかは分からないが少し不機嫌にさせてしまったらしい。


場所を喫茶店に移して、三田は早速本題に入ることにした。

「それでさ、一番聞きたかったことがあるんだけれど」

「なんですか?」

先ほどまでの会話の続きのように、何気なく聞く。

「俺、光莉にどこかに会ったことない?変なこと聞くようで悪いけど」

気のせいだろうで片付くと三田は期待していたけれども。自然な会話の流れが数瞬止まり、光莉がおもむろに話し始めた時点で、その期待は裏切られるだろうことが分かった。

「そうですね。あの後よくよく思い出したら、あたし昔三田さんの出身の町にいたことがあるらしいです。親が別れる前の名前は、箕輪光莉」

その時、三田の中で全てが腑に落ちるのだった。そう、少年時代には四六時中顔を会わせていた幼馴染に光莉は似ている――どころか、血を分けた姉妹、であろう。


―――――――――――――――――


これは、神様が気まぐれを起こして演出した、嘘のような偶然の出会いなのかもしれない。数日前の千歳との会話以来、光莉はそう思っていた。

「……まさかだなあ。千歳の妹か」

「……三田さんはあたしの姉も父親も知っているんですよね」

「千歳は幼馴染だしな。たしかに父親しかいなかったけれど、俺にも千歳の両親が揃っていたころの記憶ないぞ」

「そうです、本当にまだ小さかった頃らしいですから」

もちろん一つ年下の光莉にしたって母親から話に聞いているだけだ。会ったことがあるのかも、というのはもしかしたら正しいのかも知れない。

対面に座る三田はと言えば、千歳の姿を光莉と比べているのか、少し無遠慮なくらいにこちらを観察していた。真剣な視線を浴びるのが恥ずかしくて、光莉は頼んだラテに口をつけて顔を僅かに伏せた。

「そっか、千歳の……。あんまり聞かない方がいいのかもしれないけど、別れてから全然会ってないの?」

「父親ともお姉ちゃんとも会ってませんよ」

無意識に出た答えは、純粋な事実だけを告げるものだった。しかも、あたかも赤の他人であるかに響くように。

実はお姉ちゃんとはよくチャットしてるしそこそこ姉妹やってるよ、と告げてしまうことへの抵抗。そうしてしまえば、笹原光莉という女の子は、三田さんにとって完全に幼馴染みの妹、になってしまうから。

「そうだよな、全然聞いたことなかったし。連絡とか、つくけど……お節介かな」

三田さんも驚きから冷めたらしく、誠実そうだけどどこか飄々とした普段の雰囲気に戻っていた。

「物心つく前からお母さんと二人でしたから。本当に今さらなんですよ」

お姉ちゃんとコンタクトを取る前だったら、という答えを用意する。隠しごとには後ろめたさはあるし、すぐにばれるようなことだろうけれど。もう少し、このままの関係でいたかった。

「そうか、こればかりは箕輪家の問題だよな、干渉することじゃない。でもいつでも言ってくれ、千歳、いいやつだからさ。悪いようにはならないよ、きっと」

「分かりました、もうすこし考えさせてください。それにしても、もっと昔からあたしと三田さんが関係あったってことも衝撃ですよ」

「それも良かったよ、どこかで会ったような気がして、もやもやしてたから」

幼馴染というほど近くでお姉ちゃんと過ごしてきた人から見て、あたしと千歳お姉ちゃんは似ているということなのだろう。育った環境はかなり違うだろうに、血のつながりとは強力なものだと感心した。

「幼馴染というほど親しくしていたなら、本当に会ってはいるのかもしれませんよ」

「はは、そうかもな」

「ふふ、解決ですね。じゃ、デートかっこ仮、の続きしましょうよ」

「……申し訳ない、実はこの後、あまり考えてない。吉村からもらった雑誌のデート特集号ならあるんだが」

自分では買わない男性誌が珍しいのか、光莉が三田の手元を覗き込む。

「おもしろいもの持ってるじゃないですかー」


 それにしても、スカートの裾から吹き込む冷気を我慢して、せっかく気合入れた格好してきたのに。なかなか三田は光莉を彼女候補の女の子として見てくれなさそうだった。三田が持っていた雑誌のお勧めコースとやらを、半分冷やかしがてらまわってみている間は、楽しかったけれど。今のところは、光莉は三田にとって仲の良い後輩のポジションなのだろう。

 しかし、光莉の中で一つの疑問が首をもたげてくる。三田とは話もしやすかったり、ちょっとした仕草で思っていることが伝わったりするけれど。その理由は相性が良いというものではなくて。三田は光莉を通して千歳の姿を見ていたからなのではないかって。その疑問は、喉に刺さった魚の骨のように、なかなか取れないまま光莉のなかで不安を拡大させていくのであった。


―――――――――――――――――


『そっかーまた徹に会ったんだ。世の中狭いね』

ガーリーな雰囲気の光莉の部屋で、今日も姉妹のチャットが進んでいた。

『向こうからちょっと出かけない、って来たよ』

『おおお。光莉、徹と脈ありですか』

『どうかなあ』

少なくともあたしは。三田さんと一緒に買い物したり映画見たりして、結構幸せな気分になれたと思う。どうにも向こうが煮え切らないようけれど。

『実に複雑な気分ねえ。会ったことない妹と姉弟みたいなものの徹がセットになるとは』

『セットって結構ひどい言い方』

『独り者のひがみと思って聞き流して』

『というか姉なんだ』

『そらそうよ、徹ってば基本真面目なのに自分のことばかりはテキトーなんだから』

『ふーん』

 幼馴染という近すぎるほど近い関係は、実に不思議なものだと思う。血縁のある千歳と光莉よりも、三田と千歳の方がよほど姉弟らしく過ごしていたんだろう。

『で、光莉のお姉ちゃんとしては応援するけど』

『だから、そんなんじゃない気がするって』

『あの徹の恋路なんてからかいのネタよねー』

 伝わって来るのは飾り気のない文字だけでも。お姉ちゃんと三田さんの間にある幼馴染という関係、その深さを感じた。光莉には幼馴染に当たる人がいなかったから、それを測ることはできないけれど。

『うわー、熟年夫婦の会話だ』

『なにが熟年か。ゆうても最近全然会ってないんだけど』

『そうなの?』

『徹が上京して以来、ほとんど。小学校からこの方本当に一緒だったから、その反動かもね』

『三田さんも都会慣れして変化してる、と』

『忘れられてたりして』

しかし、本当にそうなのだろうか。会っていないことで、かえって心の繋がりが増すということもあるんじゃないだろうか。

『まさかあ。すごい懐かしそうに千歳は~、とかあいつだったら~、とか話してたよ』

『ふーん、そうなんだ』

 三田さんとお姉ちゃんの関係を知ってからは、とても不安になる。三田さんは、本当はあたしの中にお姉ちゃんの片鱗をみているのかもしれない。もっと長く付き合って、笹原光莉にしかないものを沢山知ってもらえばいいのかもしれないけれど。こちらから押していくばかりなのはちょっと悔しい。

『まったく、地元に帰ってきた時くらい会いにくればいいのにさ』

『愚痴っぽいよ、お姉ちゃん』

『すまんな妹よ』

『なんだかんだ三田さんに会いたいんでしょ』

『そりゃまあなんというか。東京暮らしどんなのかなーとか心配だし』

『想ってるねー』

『違うわ』

 もし、お姉ちゃんが三田さんにとって家族に近いくらいの位置にいるばかりに、恋愛の対象にならなかったとしても。数年も離れていれば、そのかけがえのなさを再認識したり、女の子として見る視点を手に入れたりすることができるんじゃないだろうか。


 ぽつぽつと続いていたチャットを、そろそろ寝るから、と言って打ち切る。立ち上がって、寝転がっていたばかりに乱れていた寝巻のネグリジェの襟とか裾を直した。

「このままじゃ、いけない気がする」

 高層マンションの窓の向こう、あの町のある北を眺める。そう、時節はもうすぐ年末。三田さんも帰るのだろう、お姉ちゃんの待つあの場所へ。


―――――――――――――――――


 週明けにはクリスマスのイベントを控える三連休、最初の土曜日のこと。本格的な冬に入るべく寒波はますます強くなったようで、防寒装備を纏った若者たちがキャンパスを行き交っている。年末を控えた土曜日のため平時ほどの人通りはなく、静謐さをたたえた学問の殿堂という雰囲気が強かった。大学の正門近く、屋外のテラスにテーブルと椅子が並んでいる学生ラウンジに、やはり冬らしい格好をした笹原光莉の姿があった。

「やっぱり寒いなあ」

はたして三田は、土曜の授業をもきちんと受けた後、明日には地元へ帰るという。とある作戦のため、地元に帰る前に三田に頼みごとをするべく、一言連絡を入れてここで光莉は待っていた。


 左手の校舎から、いつもの背が高くきっちり歩きかたをする人影が出てくる。光莉は気づいていないふりをして、頬杖を突いたまま伏し目がちに音楽を聴いていた。向こうから気づいてくれるかな。

「お、いたいた。ちと……じゃなかった光莉」

 たいして探すこともなく、お目当ての相手をみつけて。最初、呼ぼうとしたのはお姉ちゃんの名前だよね、三田さん?

「あ、いや。下校するとき、千歳がよくその体勢で待ってたんだ」

 そんな大したことのない仕草も似るもの、なんだろうな。

「どうする?寒いしどこか場所かえるか?」

「このままで大丈夫ですよ」

 そういうところの優しい配慮が、三田さんの魅力。でも、彼にとってのヒロインは光莉じゃないのだろう。

「そうですねー」

 少しいたずらをしてみたくなった。立ち上がって、距離を縮めて、腕をとって。ちょっと媚びすぎてるあざとい上目づかいで。

「本当は、三田さんの下宿までついていってみたいですけれど、ね」

「っおいおい」

 お、ちょっと動揺してる。何かに勝った気分になった。言葉にはしにくいけど。

「それで、故郷に帰る三田さんに一つ頼みがあります」

「故郷だなんておおげさな……」

 触れあいそうな距離はそのままに、あたしは続ける。さて、昨日決めたことを実行に移そう。

「もし、お姉ちゃんを知ってるなら、ちょっと伝えてください。あたしは父親や姉を恨んでないし、いつかは会ってみたいって」

 ――それは、三田さんとお姉ちゃんをもう一回会わせることだ。光莉の考えているように、三田の中で元幼馴染と恋人候補が同じ位置にいるのだとしたら。直接会って話をすればどちらかに転ぶのではないだろうか。

「荷が重い役目だなあ、おい。自分で直接言った方がいいんじゃないか」

「顔も知らないし、あたしと姉がすれ違ったとしても分からないくらい。ほとんど他人なんですよ。あたしが会いたいと思ってても、向こうはどうかは分からないです」

「箕輪のおじさんはともかく、千歳に限ってそれは無いと思うけれどなあ」

 どうして会おうとしなかったのかは分からないけれど、お姉ちゃんと決着をつけてもらおう。

「そんなに姉を理解している三田さんだから頼めるんです。良かったらですけれど、姉や父の反応、見てきていただけませんか」

「……よし、任された。とりあえずは千歳に聞いてみるよ」

 ぽん、と肩に手をおいて。笑顔で約束してくれた。ほんの少し、胸が高鳴る。罪悪感がこみあげるけれど、今のところは我慢。

「さて、どうする?どこかいくか……俺の下宿以外なら」

「あたしの家とか空いてますけれど」

「勘弁してくれ」

 あわてた様子を隠しきれない三田。この手のからかい方をすると面白いことに、光莉は気付いた。

「あらら。まあ今日はいいです、三田さんも帰る準備とかあるでしょうし。さっきの頼みごとをするために来たので」

「そうか。せめて駅の近くまでおく……」

「うちのマンション、歩きでいけるところですけれど」

「……いやなんでもない。じゃあここで。良いお年を、光莉」

「ふふ、良いお年を、三田さん」


 三田さんを見送った後、お姉ちゃんとのいつものチャット部屋を開く。数分じっくり考えて、自分が思っていることと、お姉ちゃんにしてほしいことを伝える。

「なんであたしがお姉ちゃんの世話を焼いてるんだろ」

普通、逆じゃない?

 あたしだって、素敵な人と並んでクリスマスの街を歩いてみたい。好きな人と一緒に。でも、三田さんの目は、自分を通して別の人をみているままだから。そう、お姉ちゃん――千歳さんを。あの二人がうまくいったなら。お姉ちゃんにだけは、今度こそ会いに行って、妹らしく甘えてみようかな。


―――――――――――――――――


 久しぶり、と言っても夏以来になるのか。首都圏から北方に電車をいくつか乗り継いで、三田は地元を目指していた。関東平野を抜けて、車窓の景色が山並みばかりになると、故郷の町が近づいてくる。

 三田は列車の座席で車窓を眺めていた。一つトンネルを抜けると、冬枯れの山並みと町の横手を流れる川が見渡せた。まばらに高い建物の見える中心から広がる家並みは、麓に向かって徐々に森に溶け込んでいく。ホームに降り立つと感じる、山から下りてくる風。改札を抜け駅前に出ると目に入るのは、ささやかにクリスマスムードを主張するイルミネーション。別に一年前や二年前と変わらない景色を眺めるだけで、自分の町に帰ってきたのだ、としみじみ実感した。駅から自宅への道すがら、三田はときどき中高時代を回顧する。地元のあちこちに刻まれた思い出には、いつも隣に千歳の姿があるのだった。


 実家に帰るなり三田が優先したのは、光莉に頼まれたことだ。生き別れの姉妹のこと、千歳と光莉。三田のやり方次第では、もしかしたら再び姉妹の間を繋ぐことができるかもしれない。

 しかし、千歳にいきなりどこかで会おう、なんて連絡するのが気まずい。昔は、なんてことなかったのに。

「徹、箕輪さん家にお歳暮届けてきてー」

 天の采配と言うべき流れはあるもので。都合よく理由もできてしまった。


 千歳の家は三田の実家からほど近くにある。和風の引き戸の横についた呼び鈴を鳴らすと、構える暇もないまま扉は開いた。

「久しぶり、……千歳」

「あ、久しぶりー徹、二年ぶりくらい?」

 理由も分からないままこれまでになく緊張していたのに、感動するほど昔のままの千歳を見て、気が抜けた。数年のことなのに、涙が出るほど懐かしい気分になる。

「そうなるな」

「しかし変わってないねー」

 三田が昔のままにみえることがよほど嬉しいのか、千歳の顔はほころんでいた。向こうも同じらしい。

「あ、お歳暮?そこおいといて」

「おっけ」

 土間まで入り、廊下の隅にテンプレお歳暮包装の箱を置く。

 さて、どこから話したものか、と三田は逡巡したものの、ひとまずストレートに光莉の存在を伝えることにした。

「ちょっと頼まれごとがあって。えっとだな、千歳に妹がいる、って言うだけで分かるか」

「いるはずだね。徹にはほとんど話したことなかったけれど」

「偶然にもほどがあるんだが、このまえ向こうで」

 しかし、意を決して話し始めた三田を、千歳が唐突に遮る。

「あ、うん。実は、光莉から色々聞いてる」

「は……?」

 目が点になる、とは正しくこのような時を言うのだろう。

「一年半くらい前に、連絡が来て。最近はときどきしゃべってるよ」

 ほら、と差しだされた千歳の携帯の画面には、騙してごめんね、とメッセージとちろっと舌を出した光莉の写真が映し出されていた。

「……なんであんな嘘を……?って嘘でもないのか」

「少なくとも親が別れてから直接会ったことはないしね」

 光莉は上手に事実を隠しただけなのだろう。しかし、連絡がついたなら真っ先に言うようなことを、いまさら伝えてくれと頼むのは何のためだろうか?

 三田の頭にいまだ疑問符が浮かんでいるものの、千歳は気にしたふうでもない。

「ほら、今日クリスマスイヴだし。同級生で独り者集めてパーティやってるから、徹も飛び入り参加しよ」

 元から一緒に行くつもりだったのか外出の準備は万端のようで、千歳は土間に下りて玄関の戸をあける。

「ちょっと待って」

「あ、それとももう独り者じゃない、とか?」

「それは……」

「残念ねー。一人寂しく暮らす徹の見栄のためなら、彼女になってあげてもよかったのに」

 冗談交じりに千歳は言うけれども。三田の心臓が一つ、大きく打った。

「いや、特別彼女はいないって」

「そうなの?」

「そうだよ。……なあ、なんで光莉は俺を騙してお前に会いにこさせたんだ?」

「分からない?」

 白い息があたるほどまで簡単に近づける幼馴染みの距離感で、千歳は三田の顔を覗き込んむ。

「……」

「じゃあ、一つ質問。もし、わたしと光莉が同時に徹に告白したら」

千歳の声にはいつもの気やすい響きは無くて、微かに震えていた。三田を見つめるまなざしは、どこまでも真摯で。様々なものが込められた二者択一をせまるのだった。

「どっちを選ぶ?」

 その時、三田は気づいた。光莉が嘘をついたのは、三田と千歳を会わせるためなのだろう、って。三田が光莉に会った時、すでに千歳と光莉が知り合っていたとしたら。光莉の中に、千歳の姿を探していたことを悟ったのかもしれない。女の子の敏感さに感服するとともに、光莉に対する申し訳なさと感謝の念が湧いてくる。

「……もうひとつ、伝えるよ」

 いつだかの冬の日、酔っ払った吉村が説教くさく言っていたことが頭をよぎる。

『何かのチャンスってのは、気づくと時期を過ぎているもんなんだからな、掴める時を逃すんじゃないぞ』

 今こそがその時だ、と三田は本能的に理解した。

 どこか喪失感を抱ええたまま過ごすうちに、千歳とは違うけれどその面影がある女の子、光莉と出会って。結局、自分にとって一番は、目の前にいる女の子なんだな、ってようやく気づくことができた。

「俺は、お前がいい」

「……。光莉じゃないの?」

「いや。でも、あいつのおかげで、自分の気持ちに気づけたかもしれない」

「そう……。ねえ、もう一度、いって」

 驚いていた様子の千歳は、その答えが信じられないかのように、確認を求めた。

「お前に告白されたら。他に誰を選ぶことができようとも、俺はお前を選ぶよ」

「……本当に、徹、わたしのこと好きなんだ」

 もしかしたら、それは必然。誰よりも近くにいた幼馴染みとしばらく離れてしまったら、改めて相手を男女として認識することになる。そしてできる新たな関係は、誰よりも互いのことをよく知っている、二人の異性なのだから。

 しばらくの沈黙の後。返事があった。

「ずっと、待ってたよ。このままだと。季節が巡るたびに。もう会えないような気がしてきて」

 言葉を切りつつ、千歳の本音が唇から溢れだしてくる。瞳には透明な雫がにじんでいた。

「いつものようにそばにいるのが当たり前すぎてさ。足りなくなってから気づくんだね」

「……俺もだよ」

 千歳が寂しさを抱えたまま過ごしていた数年間が想像できた。もっとその存在を感じたいと、背に手を当てて抱き寄せた。

「これで、幼馴染から恋人になれたんだね」

「そうだな」

「せっかくステップアップしたんだし。恋人らしいこと、してほしいかも」

千歳は腕をとり、もう片方の手を三田の頬にあてる。

「分かった」

 三田をまっすぐ見つめる上気した顔がいとおしくて。白い息が交差するほど、三田と千歳は近づく。自然と、腕は千歳の細い体を抱きしめていて。やがて、直に触れあうただ一か所だけが暖かかくなる。

それは、雪が降る前の静謐と、急ぎ足で通り過ぎる北風が印象的な日に刻まれた、季節の記憶のひとかけら。


――――――――――――――――


"添付画像"

『騙してごめんね』

『って三田さんに伝えておいて』

『あとさ。三田さん、かっこいいし優しいし、すごいもてると思う。あたしも好きになっちゃいそう』

『でも三田さん全然彼女も作らないみたいだし、そもそも周りの女の子をそういう目で見ていない気がする』

『そして、それはお姉ちゃんがいるから、なんだと思う。幼馴染ってちょっと羨ましいな、あんな素敵な人とずっと一緒に過ごせてきたなんて。きっと、三田さんのヒロインはお姉ちゃん一人』

『というわけで。箕輪光莉じゃ代わりになれないからさ。自分の男くらい、しっかりつかまえておいてよね、頼れるお姉ちゃん』


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