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二日目 散歩と偽って戦いを始めるのは男の性だ

散歩と偽って戦いを始めるのは男の性だ


美亜と出会って一日が過ぎた。

残りの期間は三日となった。

今日は美亜がうるさいので散歩に出かけることにした。

「ねえねえ。どこ行くの?」

「散歩に行くって何回も言ってるよな?」

この会話をすでに三百回はした。

「だーかーらー、どこ行くのぉ?」

はあ、うるさい。非常にうるさい。頭を抱えたくなるほどうるさい。

気づけば俺は本当に頭を抱えていた。

「どうしたの? 頭なんか抱えて。あはは。面白ーい!」

と言って本気で笑い出す美亜。

ちなみに頭を抱えてるのはお前のせいだぞ?

「なあなあ。君もしかしてひとり?」

変な男が美亜に声をかけてきた。

美亜は世間知らずなのか男を見てこう言った。

「ううん。信五がいるから二人だよ」

そろそろうなってもいいだろうか。いや、ここは唸るべきなのか?

「ああ? なんだよお前。怪我したくなかったらさっさとどけよ」

そう言って男は俺の頬を殴った。

うん。全然痛くない。

「だ、大丈夫?」

美亜は男に向かって言う。男は意味不明だと言わんばかりの顔で美亜を見た。

次の瞬間男は上空三千メートルまで吹き飛んだ。

俺のアッパーが顎に炸裂しまるでロケットのように飛んでいった。

「ったく。ちゃんと敵の強さもわからねぇのに殴んじゃねぇよ。死ぬぞ?」

俺は男に声をかけたつもりだったがそこに男はいない。

「えっと。さすがにあの高さから意識もなく落ちたら死んじゃうんじゃない?」

苦笑いを浮かべた美亜はそう言った。

「あ? そんなのわかってるよ」

俺は落ちてくるであろう場所に立ち、手を高く上げた。

その数秒後俺の手にはさっき打ち上げた男が落ちてきた。

男は白目を剥いて気絶していた。俺はそれを地面に捨てて歩き出した。

「あ、あれ。連絡しなくてもいいのかな?」

「大丈夫だ。一部始終を見た野次馬どもが勝手に連絡するだろ」

そう言って俺は振り返りもせず歩く。

「ねえ。あれ何?」

少し歩くと美亜が立ち止まりクレープ屋を指差した。

「ん? あれはクレープ屋だ。食ったことないのか?」

「うん。私ずっと病院生活だったから」

そう言って目をキラキラさせながらクレープ屋を見る美亜。

俺はポケットから財布を取り出しいちごクリーム味を買った。

「ほら、食えよ」

美亜は不思議なものでも見るようにクレープを見ていた。

「かぶりつくんだよ」

俺が食べ方を教えるとその通りに美亜は食べた。

「うわぁ。まさか、こんなものが世界にあったとは初知りだぁ。うん。美味しい!」

美亜は本当に美味しそうにクレープを食べていた。

俺は食べ終わるまで近くのベンチに腰掛け空を見上げていた。

ああ、面白いことでもないかなぁ。

「今、面白いことでもないかなぁって思ってたでしょ」

俺はビクンと体を震わせて美亜を見る。

「な、なんでわかった?」

「だって、つまらなそうな顔してたんだもん。私といるとつまんない?」

「いや、自慢じゃないが俺はいつもつまらないと思ってる」

「あはは。ホントに自慢じゃないね」

そんなバカみたいな話を十分くらいしてから俺たちは散歩の続きを開始した。

途中、散歩から食べ歩きに変わったのはここだけの話だ。

「うはぁ。美味しかったね」

「俺は何も食べてなねぇよ」

俺は腕に抱きついていた美亜にそっけなく言った。

「ふーんだ。どうせ食べていたのは私ですよーだ」

ご機嫌を損ねたらしい。まあ、關係ないけど。

「あ、あの人だ」

美亜は目の前に立っていた男を指差した。

指を差すなと言って手を下げさせ俺は指差した男をみた。

包帯を頭に巻き杖で立っていた男を俺は知っている。いや、正確には今日知った。

朝、俺たちに話しかけてきた男だ。

「ん?」

よく見ると男は手を俺たちを呼んでいた。

「はあ」

「何ため息ついてんの?」

この状況を理解していないのはきっとコイツだけだろう。

まあ、いい。

男は裏路地に入って行った。

俺もそれに着いていく。美亜は何が何だかわからず着いてきたんだろうがなんだか楽しそうだった。

「おうおう。朝は良くもやってくれたじゃねぇかよ、このガキ! おい! みんな出て来い!」

男が言うやいなや角という角から面白い刺繍を皮膚にした男どもが出てきた。

「兄貴、こいつが例の?」

「そうだ。思う存分痛めつけてやれ。そこにいる女は好きにしていいぞ」

がははと笑う集団。

はあ、メンドくせぇ。

さっきちらっと睨みつけたが恐るどころか笑いやがった。

俺が睨めば野生の動物たちは一目散に逃げ出す。あのライオンやアナコンダですら逃げ出したくらいだ。

動物は野生の本能で察知できるのだろうがこの頃の人間はそういうのに疎い。

仕方ない。やっちまうか。

俺は集団に向かって歩きだそうとすると美亜が俺に抱きついていた。

震えている。美亜が俺に抱きつき震えていた。

「し、信五。あ、謝ろう。きっとわかってくれるよ」

ああ、こいつはきっと本能でこれはやばいと思ったのだろう。

俺は美亜の頭に手を乗せなでていた。

「ったく。いつも能天気なのに今に限って弱気でいんだよ。大丈夫だ。だって俺は」

襲いかかる男ども。

それを俺は片手で吹き飛ばした。

「最強の人間なんだぜ?」

俺は微笑み美亜を振り払う。

男どもはなおも飛びかかってくる。俺はニヤつきそれらを全てなぎ払った。

「ほらほらどうしたよ! この程度で終わりか!」

俺の心が満たされていった。

ああ、おもしれぇ! おもしれぇぞチクショウ!

「ひぃ! あ、悪魔だ!」

一人の男が叫ぶとほかの男どもうろたえその場で止まっていた。

「はーい。そこまで。おいガキ。この子がどうなってもいいのかな?」

包帯を頭に巻いた男は美亜の首に手をかけナイフを押し付けていた。

「し、信五ぉ」

美亜は泣いていた。

俺は別に美亜に興味はない。だけど、俺のせいで誰かが傷つくのだけは勘弁ならなかった。

「おい、貴様」

「あ? なんだよ。命乞いか?」

俺は男を冷たい目で見つめ言う。

「死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」

「あ――」

きっと、ああ? と言いたかったのだろうが俺がそれを言わせない。

俺は一瞬のうちに男の間合いに入り鳩尾に膝蹴りを入れていた。

「かっ……」

男は腰の辺りでくの字に曲がり壁に向かって飛んだ。

俺は男の頭を掴み地面に叩きつけそのまま走り出す。

顔の半分が地面にめり込んだのを確認して俺は手を離し集団を見る。

「まだやるか?」

集団は四方八方に分かれて逃げて行った。

残ったのは俺と美亜と気絶した男だけだった。

美亜は一瞬の出来事を思い返したのか唖然としていた。

きっと、恐れて俺と一緒にいたいとは思わなくなるだろう。だが、それでいい。

俺は孤独な存在だ。俺と一緒にいられる存在はきっといないのだろうから。

「か、かっこよかった」

は?

俺が美亜を見ると美亜は拍手していた。

「かっこよかったよ。信五」

俺は思っていた事とは違うことを言われて釈然としない態度で立っていた。

かっこよかった?

俺が?

「は、はは」

俺は笑っていた。

なぜかわからないが笑いたくなった。

「どうしたの?」

わかるかよ。

「お前のせいだ。クソッ。笑いが止まんねぇ」

こいつはホントによくわからない。

悲しがったり笑ったりかっこいいだの可愛いだの言ってこいつは喜怒哀楽が表に現れすぎてるよ。

「えー、なんで私のせいなのぉ~?」

美亜はこんどは怒っていた。

俺はまた笑いがこみ上げてきた。大爆笑だ。

「もう、笑わないでよ!」

そう言って美亜はポコポコと俺の背中を叩いた。

「わかったわかった。くくく、くははは!」

だが、笑いは止まらない。

「もう! 早く帰ろう」

そう言って振り向き勝手に歩き出した美亜。

俺もそれについて行った。

「ごめん。信五」

「ん? なんで――」

だ?

言いきる前に美亜が倒れた。

俺の目の前で倒れたのだ。

「ど、どうした! 美亜!」

俺は美亜を抱きかかえ肩を揺らし叫ぶ。

「あ、あはは。今日はちょっと頑張りすぎた、かも。ちょっと限界」

そう言って汗が流れていた。

「頑張りすぎたってどういうことだよ!」

「わ、私。ホントはこんなに歩いちゃいけないんだ。し、心臓に負担がかかっちゃってね」

淡々と語るが表情は苦しそうだった。

「じゃあ、なんで散歩に行こうなんて言ったんだよ!」

「だ、大丈夫だよ。少し寝れば治るって」

もう、話のキャッチボールができていなかった。

「クソッ!」

俺は走って家まで行った。

美亜は背中で荒い息をしていた。

俺は医療関係のことは全く知らない。ただの子供だったんだ。

俺は美亜が行った通り寝れば治るのだと思っていた。だが、それは叶わないことだと気づくのだった。

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