Act7:赤い雨
白衣の男息を切らしながらは雨に濡れながら立っている少年に向かって手に持っていた銃を向けた。
暗い空を見つめていた少年は、こんどは視線を自分の前に向けた。
「この島はこんなきれいに街が並んでいたんだね」
「・・・・すべて分かったよ、この島のこと、監視カメラのモニターが実験室の横においてあって、全部聞こえた」
白衣の男は雨に濡れている眼鏡を拭くのも忘れ、まだ息を切らしながら必死に少年のほうを見ている。
「リタは・・・死んだんだね」
そういうと少年は、白衣の男のほうを見た。
少年は確かにレンだった。しかしレンの髪の毛は黒ではなく銀色になっていた。目は緑色の瞳を持ち、弱弱しく目を開けていた。少年の体のお腹の部分は赤く膨れている。
「はぁ・・・はぁ・・・お前も死ねばすべて丸く収まる。はぁ・・・すべてうまくいく」
「・・・うん、死ぬよ」
「はぁ・・・、はぁ・・・」
「でも死ぬのはみんな一緒だよ、この島の兵士も研究者も実験体も・・・」
「違う!!死ぬのはお前だけだ!お前を殺す!そうすればすべてが元に戻る!」
レンは薄く笑みを浮かべ言った。
「もう・・・終わりだよ、すべてを終わらせるんだ」
「こんな島はあっちゃいけない・・・」
「違う!!!この島こそ世界に必要な島なのだ!どこの国も人体実験は人権に反するだとかそんなことを言っている!だから何も進歩しないんだ!どこの国に遺伝子操作で不妊を無くすことができる?どこの国に人間の体の核を埋め込むことができる?すべて我々の島の成果だ!この島なくしては人類の進歩はありえない!!」
「僕は・・・、この島は幸せな島だと思っていた。ほしいものは何でも手に入り、なんの苦しみも不幸もない」
「でもほんとは・・・この島の人ほど不幸な人間はいない」
「おまえ達はモルモットだ!そんな感情など必要ない!すべて我々に任せていれば全員が幸せのうちに死んでいける!全員が天国にいける!!」
「あんた達も?」
「・・・あんた達が言っていたことで一つだけ正しいことがある・・・」
「天国にいけばさらなる幸せが待っているということ、確かに天国にいけばもうこんな実験をされることもない・・・」
白衣の男は、レンに向けた引き金を引こうとした。そのときレンが言った。
「ごめんね・・・みんな、でもすべて終わらせる」
それをレンが言い終わるのと同時に銃口から激しい音と共に弾が飛び出しレンの頭めがけて飛んでいった。しかしそれはすべてが終わる瞬間だった。
空から針が降ってきたかのように痛いくらいに激しく降り注ぐ雨の中、
人で賑わっていた昨日の夜とはまるで違う静けさのかもし出す街の中心にたつビルの屋上に銀色の髪の毛を持つ青年が立っていた。
青年の目にかかりそうなくらい長い前髪の隙間からうっすら見える
緑色の瞳は力がなく、いまにも死にそうなくらい弱弱しく、その顔には
薄っすら悪魔のような笑みが浮かべられていた。
一瞬
星が赤い閃光に包まれたかと思うと、
次の瞬間には雨は、
赤く染まっていた・・・。
〜Fin〜
最後まで読んで頂きありがとうございます。残酷な話ですが、いかがだったでしょうか?
実はこの話を書いている最中にとんでもないものを見ました。それは映画アイランド。見たことある人はこの赤い雨を読んで「おや?」と思ったかもしれません。確かに類似点は多いですが完全に偶然です。頭の中で話はまとまっていたのでパクリではないです。アイランドの監督と僕は発想が同じなのかもしれません。僕はアイランドを見て連載をやめるべきか本気で悩みました。それだけ似ていることに驚いたんです。
とまぁトラブルもありましたが、無事終了しましたので、感想、評価など頂けると幸いです。それでは次回作もよろしくお願いします。




