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その5  last summer   作者:輪音

夏といえば海か山か。

どうでもいい。


移動方法は電車かバスか。

どうでもいい。


昼ごはんは焼きそばかラーメンか。

どうでもいい。


泳ぐのか焼くのか。

どうでもいい。


競泳するのか潜伏競争するのか。

どうでもいい。


洞窟を探検するのか岩場でカニと戯れるのか。

どうでもいい。


ポロリを期待するのか自ら生み出すのか。

どうでもいい。


巨乳がいいのか貧乳がいいのか。

どうでもいい。


美女がいいのかロリがいいのか。

どうでもいい。


幼馴染がいいのか委員長がいいのか。

どうでもいい。


宿題?

心底どうでもいい。


新学期?

何のことだかわからない。


8月31日?

今日のことだろ?


明日?

そんなもの訪れるはずがない。

だって



今日で地球は滅ぶのだから。





8月31日 晴れ

水平線に程近い場所に浮かぶ紅い球。

ゆらゆらと水面を赤色に染める光景は、じきに今日が終わることを意味していた。

吹き付ける風は未だ熱い。


みんなそろって浜辺に寝そべり、じきに終わる夏の余韻を体全体に感じる。

「しっかし、さすがに半日は遊びすぎたか」

「でもまあ、最初は丸一日遊ぶつもりだったじゃない。馬鹿なの、あんた」

「そいつは間違いなく馬鹿だ。お前だってわかってただろ?」

「ふふっ、まあね」

「ちょおー、お前ら俺を何だと思ってやがるー。俺は世界を救った勇者のまt」

「「黙れ厨二病」」

隣ではいつもどおりの不毛なやり取りが続けられている。

「みんなー、カキ氷買って来たよー」

ちょうどいタイミングで残りの一人が――どうやって持っているのか――合計5個のカキ氷を抱えてきた。

「ん、センキュ」

例を言いながらさりげなく半分持つ自分はそれなりに紳士だとそっと思ったりする。

「あー、カキ氷ー。そういえば食べてなかったねー」

「ちょ、あんたまだ食べるの? 焼きそばスイカとうもろこしエトセトラエトセトラエトセトラ。いい加減はくわよ?」

「大丈夫じゃねえの? 熱40度でてて気がつかずに学校来てるようなアホだ」

「そんなことねぇって、あの時も俺もさすがにちょっと体調悪いなーくらいには思ってたし!」

「普通の人間はそもそも立ち上がるのすら厳しいっての。さ、食べようぜ」

なんとなく話を流しながらカキ氷を配る。

みんな受け取ってもすぐに口をつけようとはせず、全員に行き渡ってからようやく食べ始めた。


波が打ちつける音と、時折鳴るしゃりしゃりと氷を崩す音。

みんなして水平線のかなたを見つめ、黙ってカキ氷を食べる。


「‥‥でもさ、ホント楽しかったよな」

静かに静寂を崩していく。

「そうね、さいごにしてはなかなか悪くなかったわ」

「私も、みんなと一緒で楽しかった」

「俺はまだまだ遊びたいけどな」

「元はといえば誰かさんが遅刻したせいね」

「っな、俺が悪いっての?」

「え、違うの?」

「だぁぁあ、もう。お前いっぺんそこにすわれぇっ。調教してやる!」

「ち、ちょうきょー‥‥。ど、どんなことするのかな‥‥」

「いや、深く考えなくていいから‥‥」

「お前も変なこといってんじゃねえよ。赤くなってんじゃん」

「え、まじ? うっはぁー、かわえー」

「何やってんのよあんたはっ!」

「ってぇっ!! 何も殴らなくてもいいじゃん!」

「だぁぁ、わかった! わかったから引っ付いてくるなうっとうしい!!」


ほんの少しおしゃべりするだけのつもりだったが、いつものように大事になってしまった。

「ふふっ、くすくす」

「え、なにどうしたの」

突然笑われてわけがわからなくなる。

「あ、う、ううん。‥‥なんだか、私たちっていつもとかわらないなぁって思って」

「だな、むしろ変わらなくてよかったよ」

「あれ、あの二人はどうした?」

「ん? 向こうで告白タイムでもやってんじゃないの?」

くいくいと向こうの岩場の陰を指す。

「‥‥ぁ、そうだったっけ」

「え、なになにどういうこと?」

「あの二人好き合ってたんだよ。お笑いだろ? いつもあんななのにさ」

何のためらいもなくいったことには驚かされたが、まぁ俺たちの間柄だ。特に問題はないだろう。

「あれであいつもツンデレだからな」

「へ、へぇ。そうなんだ‥‥」

「んで、お前はこいつのことが好きなんだろ?」

「んなっ、お前なんてことを」

「ふ、ふぇえ?! え、と。あの、その」

「ほらぁ、困ってんじゃん!」

「ん。でもホント」

「‥‥まじ?」

こくんと黙って頷く。

「な?」

「お、おう」

そういわれたら何も言えない。

「まぁ、そんなこといっといてなんだけどさ」

そういって太陽を見つめる。

「今日で、地球が終わるんだもんな」

心なしか、先ほどと比べると太陽は大きくなったように見える。


昨日、急に言われた「地球が滅ぶ」。

事の真偽はさておき、既にいくつかの国が蒸発していることがわかっている。

太陽に近づきすぎた地球が、自転によって地表を焼いていっているのだ。

その報道の直後、犯罪が急激に増加。

安全を求めた俺たちは都会から離れ、最期のときまで海で遊び続けることにしたのだ。


「ま、さいごがよければ俺はそれでいいよ」

もともとそれが人生の目標でもあったしな。と付け加える。

「私も、一緒にいられるなら‥‥それでいい」

「はぁ‥‥、二人ともじじばばくさいなぁ」

静かに苦笑する。

「ま、いいと思うけどね」

「で、そういうお前は誰かいないのかよ?」

「そ、そうだよ。私のもばらしちゃったんだし‥‥」

「俺? 幼馴染の、大学生」

「え、年上?」

「俺が年上と付き合っちゃ悪いかよ」

「‥‥てっきりロリコンだとばかり」

「‥‥ドアホー」

「でも、なら一緒にいなくていいの?」

「うん? お互いわかってんのよー。何が一番大切かって」

「大切?」

「そ。あいつは家族が大切。でー」

と、俺たち。と帰ってきた二人を指差す。ちなみにがっちりと手をつないでいた。


「俺は友達が大切」



9月1日午前0時

太陽は地球を焦がし、とうとうその範囲は日本、さらにハワイへと広がっていった。

すでに大半の国は焼失し、残っている数えるばかりの人類もやがて死に絶えるだろう。

もしかしたら彼らがアダムとイブになるのかもしれないが。


どれだけ犯罪を犯したものでも、どれだけ社会に貢献した人でも、その死は平等に訪れる。


あなたは、幸せでしたか?

あなたは、大切な人に想いを伝えられましたか?

あなたは、悔いのない人生を送ることができましたか?

あなたが愛した人は、幸福を手に入れましたか?


あなたの人生は、あなたにとって大切なものになりましたか?



あなたの「夏」は、あなたの宝物になりましたか?






the Planning of short novels that called SUMMER is finished now...

if your summer became your treasure please don't forget it.

when you need support it help you.


get a happy summer!

短編小説企画summer。これにて閉幕となります。

当初10名を越える予定だったライターさんも、気がつけば4人。なんとも悲しい結果になってしまいました。

しかし、決してこの企画が無駄になったとは思いません。

読者の皆様方、ひいては私たち執筆者にとっても大事な物になったと思います。

みなさんがこれを楽しんでいただけたのならそれが私たちにとって一番の幸せですし、また望みでもあります。


調子に乗って秋、冬、春と季節をテーマにした短編小説を書こうかと思いましたが、一つ一つのクオリティが落ちてしまう可能性があったため、今回はやらないことになりました。

その代わりに、現在大きめともいえないかもしれませんがひとつ企画を考えています。

今回はきちんとした予定を立てているので大きく予定外なことは起こらないはずです。

完成した時にはこのサイトで報告させていただきたいと思っています。べ、べつにお気に入り登録してほしくて言ってるわけじゃないんだからねっ☆


では、また皆様の目に入ることを祈って、今回はおしまいとさせていただきます。

このたびはこの作品を読んでいただきましてありがとうございます。

いずれまたお会いしましょう。

では、また。

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