その3 小さな姫君・中 作者:輪音
目が覚める。
相変わらず風通りの悪く、蒸し暑い部屋で親の恨みとばかりに降り注ぐ太陽光を浴びて意識が覚醒した。
これが日常である。
しかし、いつもとは違う光景が部屋の中にはあった。
窓からの四角い光が一部切り取られ、僕の体の上にわずかながらの日陰を作っていた。
植木鉢だ。
8月6日
植木鉢の中をのぞくとすでに小さな芽が出ていた。
昨日植えたばかりだというのにずいぶんと気が早いものだ。
まぁ、しかし。僕の気が長いといえるかというとそういうわけでもない。
芽も出ぬまま9月が終わっていた、なんて洒落にならない。
奇妙ではあるが、まずはこの変化を喜ぶことにしよう。
8月7日
昨日と比べると5センチほど伸びている。
わずかながらふくらみがあるようにも見える。
子房だろうか。
8月8日
明らかにつぼみのようなものができている。
成長が早いのはいいことだが、植えてからわずか3日だ。
さすがに早すぎるのではないだろうか。
小さな不安をよそに、夕方には朝見たときよりも大きくなっていた。
肥料を変えることにした。
8月9日
肥料を変えても特に変化なし。
相変わらず異常な成長を遂げている。
植木鉢のふちから20センチほどの長さで、中ほどに握りこぶしよりやや小さめのふくらみがある。
夜、月に照らされた影が動いたような気がした。風のせいだろうか。
カーテンは揺れていなかったが。
8月11日
前日は友人宅に泊まりに行っていた。
帰ってくると、つぼみらしきものが開きかけていた。
近いうちに咲くのだろうか。
8月12日
植木鉢から、女の子が生えていた。
しばし無言になる。
重苦しい空気に耐えられずため息を吐くも再び無言の空間が訪れる。
女の子は僕のことを不思議そうな目で見上げていた。
いや、そもそも女の子と分類してもいいものなのだろうか。
よくみれば、下半身は例の植木鉢から伸びる植物に繋がっている。
というか、おへそより下は植物だ。
そして肌が全体的にうす緑がかっていて、髪の毛は鮮やかな緑。
あとかわいい。
ついと手を近づけても特に反応はない。
同じように不思議そうな視線を向けてくるだけだ。
頭を優しくなでるとくすぐったそうに目を細める。
とても人間らしいしぐさも見せる。
植物に話しかけると良いと聞いたことがあるので「ありがとう」といってみる。
特に変化なし。
何回か繰り返していると、口をパクパクと動かした。
すぐにはわからなかったが、口の動きを真似しようとしているようだ。
結論、僕の拾った種から、女の子が生まれた。
夏はまだまだ続く。
はい、というわけで今回は日記調にお送りいたしました。輪音でございます。
気がついたら参加メンバー4人☆
いやぁ、これはもう私の指揮力不足といいますかなんというか。
なんというか。
なんというか
なんというかぁーーーー涙
物語はファンタジックに進みます。
この種は何の種なのか。
そしてそれがもたらすのは幸せか、はたまた‥‥。
今回中編と言うことで、次回後編。といいたいところですが、尺の関係で中後編になりそうな予感w
気長にお楽しみください。
では、また。




