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最底辺のクズですが、二度寝がしたいので「神の再来」を演じることにしました ~不純な動機で祈ったら全人類に号泣され、世界教皇への退路が物理的に断たれた件~  作者: 朝比奈ミナ
第1章 聖女爆誕編

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第06話:全力の「寝たい」が、究極の防御術式になりました

「――聖女リリアーヌ様。和平を記念し、あの『特区』の中央広場に建てる記念碑……そのデザインを、ぜひ貴女に手がけていただきたいのです」


 国王陛下から手渡されたのは、真っ白なキャンバスと、最高級の魔法絵の具だった。

 なんでも、聖女が描いた絵には「加護」が宿るそうで、国民全員が私の描く「平和の象徴」を待ち望んでいるらしい。


(……面倒くさい。マジで面倒くさい。絵なんて描いてる暇があったら、一分でも長く枕と対話したいのに)


 私は、イーゼルの前で筆を握りしめ、プルプルと震えていた。

 周囲には、カイルさん、セレナ、そして賢者メイメイが、息を呑んで私の第一投を見守っている。


(よし、決めた。ここで「救いようのないほど絵が下手」だということを露呈させて、国民をガッカリさせてやるわ! 聖女の権威を失墜させて、今度こそ引退への切符を掴むのよ!)


 私は、筆に真っ黒な絵の具をたっぷりと含ませた。

 そして、キャンバスの中央に、大きく、歪な「楕円」を描いた。

 さらにその中に、グニャグニャとした「うずまき」を描き込む。


(ふふふ……どうよ! これ、布団の中で丸まっている「私」の姿よ! しかも、あまりの下手さに、何が描いてあるか自分でも分からないレベルだわ!)


 私は、仕上げにキャンバスの隅に「……もう、無理」と、心の叫びを小さく書き添えた。

 そして、力尽きたフリをして筆を落とした。


「……できた。……これが、私の……全力……」


(さあ、言え! 『なんだこのゴミは!』って! 『聖女の風上にも置けない画力だ!』って叫んで私を追放して!)


 だが。

 十秒経っても、二十秒経っても、罵声は聞こえてこなかった。

 代わりに聞こえてきたのは、「ヒッ……」というメイメイの短い悲鳴だった。


「…………な、なんてこと。……なんてことなの!!」


 メイメイが、キャンバスに顔を近づけ、穴が開くほど見つめている。

 彼女の眼鏡が、魔力の共鳴でキィィィィィンと高い音を立てていた。


「メイメイ様!? どうされたのですか!」


 カイルさんが駆け寄る。メイメイは震える指で、私の「布団丸まり図」を指差した。


「カイル、これが見えないの!? この楕円……これは、この世界を包む『次元の殻』よ! そして中のこの螺旋……! これは失われた古代魔法、万物を保護する『胎内の慈母マザー・カプセル』の展開図そのものだわ!!」


(……は?)


「見なさい! この一見するとつたなく見える筆致……! これは敢えて『無』の境地で描くことで、術式の中に『無限の余白』を作っているのよ。……そしてこの文字! 『……もう、無理』……違うわ、これは古代文字の超短縮詠唱! 『もう』――つまり、『めしいた世界よ、悪夢を離れ安らぎに至れ』という究極の平定呪文よ!!」


「なっ……なんと……!!」


 カイルさんが、床に頭を打ち付けて号泣し始めた。


「リリアーヌ様……! 貴女は、ただの記念碑ではなく、この国全体を永遠に守護する『全自動・絶対防御結界』の設計図を、わずか数秒で描き上げられたというのですか!? 自分の睡眠時間を削ってまで、我々の未来を案じて……!!」


「え、いや、マジでただの寝癖ついた自分をイメージしただけで――」


「ああ! 『自分のイメージ』! つまり、聖女様ご自身が『世界の盾』になるという決意表明ですわね!?」


 セレナが両手を合わせて、うっとりとキャンバスを拝んでいる。


「この渦巻きに吸い込まれそうですわ……。まるで母の胎内に戻ったかのような、圧倒的な安心感……。これが、聖女様の愛の形なんですのね!!」


(……誰か、私の「愛」を勝手に巨大化させるのをやめて)


 数日後。

 私の描いた「布団落書き」は、純金で鋳造ちゅうぞうされ、広場の中央に燦然さんぜんと輝く巨大なモニュメントとして建立された。

 

 驚くべきことに、そのモニュメントが完成した瞬間、周囲数千キロにわたって「あらゆる魔物の闘争心が消失する」という異常事態が発生。

 魔物たちはみんな、モニュメントの周りで丸くなってスヤスヤと寝始めてしまったのだ。


「……さすが聖女様だ。敵対する魔物すらも『二度寝』の幸福に導くことで、戦いそのものを無意味にされた!」


 カイルさんの称賛の声が響く中、私は自分の描いた(布団の)絵を拝む群衆を見て、深いため息をついた。


(……魔物たちが羨ましい。私も、あそこで一緒に丸まりたい……)


 私の「寝たい」という執念が具現化した結果、世界はかつてないほどの平和(と、お昼寝ブーム)に包まれることになったのだが――。

 

 それは同時に、「平和になったから、もっとたくさんの公務に出席できますね!」というカイルさんの笑顔を招くという、リリアーヌにとって最大の悲劇を呼ぶのであった。

第6話をお読みいただき、ありがとうございます!朝比奈ミナです。


「ただの布団の落書き」が、有能すぎる賢者の解釈によって

「究極の防御術式」へと魔改造されてしまいました。

リリアーヌが「もう無理(寝かせて)」と言えば言うほど、

それが「世界の平和を願う呪文」に変換される絶望的なポジティブ・スパイラル。


・リリアーヌ:布団に丸まりたい

・メイメイ:次元の殻だ!

・魔物:平和すぎて寝ちゃう


ついに人間だけでなく、魔物まで勘違い(?)に巻き込まれ始めました。

リリアーヌに安眠の日は訪れるのでしょうか?


「落書きの解釈が斜め上すぎるw」

「リリアーヌの不憫さがクセになる!」

と思われた方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いします!

皆様の応援が、リリアーヌの「さらなる多忙」という名の燃料になります。


次回、ついに物語は「聖女の休日」編へ……と思いきや、

向かった先のバカンス地が、実は封印された「暗黒の聖地」で!?

お楽しみに!

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