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最底辺のクズですが、二度寝がしたいので「神の再来」を演じることにしました ~不純な動機で祈ったら全人類に号泣され、世界教皇への退路が物理的に断たれた件~  作者: 朝比奈ミナ
第1章 聖女爆誕編

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第01話:【プロローグ】五世紀ほど二度寝がしたい

初めまして。朝比奈ミナです。


この物語は、

「世界を救いたい正義の聖女」の話……ではありません。

「いかにして働かずに、ふかふかの布団で二度寝を決めるか」に命を懸ける、

どうしようもないクズな少女が、周囲の猛烈な「深読み」によって

勝手に神格化されていく物語です。


・主人公の心の中:100%真っゲス

・周囲の評価:100%真っ白(神)


この温度差で風邪を引く……もとい、思わず吹き出していただけるような

テンポの良いコメディを目指します。


「お仕事や勉強で疲れた。何も考えずに笑いたい」

そんなあなたに捧げる、究極の他力本願ファンタジー。


どうぞ、お楽しみください!

「……ああ、あと五世紀ほど二度寝がしたい」


 それが、一国の命運を左右する『聖女選別儀式』の最中、私の脳内を占めていた唯一の、そして切実な願いだった。


 目の前には、眩いばかりの光を放つ黄金の『聖杯』。

 周囲には、固唾を呑んで見守る数万の民衆と、重苦しい鎧に身を固めた騎士たち。

 そして私の隣には、今にも感極まって泣き出しそうな顔をしたイケメン騎士団長、カイルが控えている。


 状況を整理しよう。

 私は一週間前まで、路地裏で泥水を啜るような生活をしていたただの孤児だった。

 それがどういうわけか、行方不明になった『本物の聖女』に顔がそっくりだというだけの理由で拉致……もとい保護され、「影武者をやれ。失敗したら不敬罪で首を撥ねる。成功したら金貨三枚やる」と脅されたのである。


(金貨三枚……! それだけあれば、田舎で一生ニート生活ができるわ!)


 私の志は低い。エベレストの麓よりも低い。

 だが、この儀式はあまりにも長すぎた。

 昨夜、緊張(というか脱走のシミュレーション)で一睡もできなかった私の体力は、すでに限界を迎えていた。


「リリアーヌ様……さあ、その御手を聖杯へ。あなたの清らかな魔力で、この国に宿る古き呪いを浄化していただくのです」


 カイルが仰々しく、だが震える声で促してくる。

 こいつ、さっきから私のことを「神の再来」だの「慈愛の化身」だの呼んでいるが、節穴にも程があるだろう。私の目は今、睡眠不足で死んだ魚のようになっているはずだぞ。


(……あー、もう無理。立ってるだけで意識が飛ぶ。っていうか、この聖杯、さっきからドロドロした黒いモヤが出てて超不気味なんですけど。絶対に関わりたくないタイプ。呪い? 浄化? そんなの知るか。私はただ、ふかふかの布団にダイブしたいだけなんだ!)


 私は決意した。

 ここで派手にやらかして、「偽物でしたー!」と叫んで逃げよう。

 処刑される前に、このクソ重い聖杯を投げ捨てて全力疾走すれば、案外なんとかなるかもしれない。


 私はよろよろと手を伸ばし、聖杯を掴んだ。


(お、重い……! 何これ、嫌がらせ? もういいや、捨てちゃえ)


 私は聖杯を掲げるフリをして、そのまま全力で石畳の床へと叩きつけた。

 ついでに、あまりの眠気とストレスで出かかった欠伸を、強引に言葉へと変えて吐き捨てる。


「……ふぁ……あ、消えろ……(消えて寝かせてよ、もう!)」


 ガシャアァァァン!!


 静寂に包まれていた大聖堂に、耳を劈くような破壊音が響き渡った。

 聖なる器が粉々に砕け散り、中からどす黒い霧が噴き出す。


(よし、やった! これで「聖女失格」間違いなし! さあ、今のうちに退職金代わりの指輪でも剥ぎ取って逃げ――)


 しかし。

 私の予想に反して、悲鳴は上がらなかった。


「……なっ……!?」


 騎士団長カイルが、膝から崩れ落ちる。

 その目には、大粒の涙が浮かんでいた。


「……おお……おおお! なんという……なんという慈悲深き決断か……!」


(は?)


 カイルは砕けた聖杯の破片を見つめ、震える声で叫んだ。


「皆様、見なさい! 聖女様は……リリアーヌ様は、一瞬で看破されたのだ! この聖杯が、数千年の時を経て『民の強欲を吸い上げる呪いの器』へと変質していたことを! 彼女は、あえて聖具を破壊するという『大罪』を自ら背負い、我々の穢れを物理的に粉砕してくださったのだ!!」


「え、ちょっ――」


「さらに聞きましたか!? あの凛烈たる一喝を! 『消えろ』と! それは我々の中に巣食う邪心への、神の裁き! 見なさい、聖女様の御体を! 聖杯から溢れ出した猛毒の呪いを、自らの体で受け止め、浄化しておられる……!!」


 見れば、聖杯から出た黒い霧が、私の体に吸い込まれていく。

 いや、これ、単に私が「あー、マジで不気味だわー」と顔を顰めて固まっている間に、霧が勝手に霧散しているだけなんですが。私の特異体質(魔力吸着)がたまたま働いただけなんですが。


 だが、周囲の民衆は違った。


「ああ……聖女様……!」

「我々のために、自らを汚してまで……!」

「なんと神々しい……あの死を恐れぬ虚脱の表情(※単なる寝不足)を見ろ!」


 地響きのような歓声が巻き起こる。

 私は絶句した。

 逃げるチャンスを完全に失った。


(……待って。なんでみんな拝んでるの? 私、国宝を壊したんだよ? 普通は打ち首だよ。なんでカイルさん、私の手を握って『一生ついていきます』みたいな顔してるの?)


 限界だった。

 極限の緊張と、想定外すぎる展開に、私の脳はシャットダウンを選んだ。

 私はそのまま、白目を剥いて床に倒れ込む。


「リリアーヌ様ーーッ!!」


 カイルの絶叫が聞こえる。


「いけない! 呪いを一身に受けた反動が! 急げ、最高級の寝台を用意しろ! 一刻も早く、彼女の尊き魂を癒やすのだ! 我らが命に代えても、この聖女を守り抜くぞ!!」


「「「「おおおおおーーーッ!!」」」」


(……あ、静かな部屋で寝かせてくれるなら、もうそれでいいや……おやすみなさい……)


 こうして、私の「クズ聖女」としての輝かしいキャリアが、最悪の形で幕を開けたのである。


 ――後にこの出来事は、『大聖堂の浄化』として教典に刻まれ、一人の少女を「生ける神」へと押し上げる最初の奇跡として語り継がれることになるのだが……。


 当の本人が、目覚めた瞬間に「ここは天国(ニート部屋)か?」と間抜けな声を出すのは、また数時間後の話である。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!朝比奈ミナです。


「聖杯を壊せばクビになれる」というリリアーヌの浅はかな考えが、

騎士団長の「超高度な深読み」によって伝説へと変換されてしまいました。

本人は寝たいだけなのに、周りが勝手に神格化していく……この地獄(?)を

楽しんでいただけたなら幸いです。


「リリアーヌのクズっぷりがもっと見たい!」

「カイルの勘違いがもっと加速してほしい!」

と思われた方は、ぜひ【ブックマーク】と【評価】をお願いします!


皆さんの応援ポイントが、リリアーヌの「二度寝」を邪魔する

新たなイベント(奇跡)を生み出す原動力になります(笑)。


次話、リリアーヌが目覚めたらそこは……?

お楽しみに!


当面の間は1日3話を投稿予定です。

ブックマークをして待っててください。

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