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009-困窮

「ただいま」

「お帰りなさい」


こうして私は、家に帰った。

インフラがめちゃくちゃになって、ちょっと不便になったけれど、私たちにはまだ家があった。

非常用の自家発電機を回して、それから三日経った。

流石に学校はまだ復旧できないらしくて、私は避難所にいるみんなに会いに行った。

流石に死んじゃったと思ってたシラーおじさんも、全身包帯巻きでガハハと笑っていた。


「(私...みんなを守れた...のかな)」


あの仮面の男が言ってた、生命のサイクル。

襲撃事件によって、多くのサイクルが失われた。

お父さんもそうだった。

お母さんは敢えて口に出さない。

お父さんは、お母さんを助けるために囮になって...そこで...


「......」

「ご飯できてるわよ」

「...はい」


クリームグラタンだった。

でも、喉を通らない。

嫌いな父親じゃなかった。

でも今は、何も思えない。

悲しいとも、せいせいした、とも思わない。

父親が死んだのに、なんの感情も抱かない。

それどころか、私は...

人を殺


「どうしたの? 食べないのなら、冷蔵庫に入れておくわよ」

「...ううん、なんでもない」


私はもそもそとグラタンを口に運び、機械的にお風呂に入って、歯磨きをするために鏡の前に立った。

ひどい顔だ。

だけど...どんな顔したらいいんだろう?

私の行いは、結果として街を守ったのかもしれないけど、それを成し遂げたのは大半はあのいけすかないシンとかいうニンゲンだ。

結局お父さんは死んじゃった。

両親を守れなかった私は、無駄な事をしたのかもしれない。


「...」


布団に入る。

眠れない。

頭の中を整理出来ない。

どうして、なんで、どうすれば、WhyとIfがシナプスの間を駆け回る。

気付くと、外が明るかった。

私はカーテンを開いて、外を見た。

いつもなら、朝日を浴びて輝く都庁舎が見えるはずだ。

でも、都庁舎は真ん中から融け落ちて。

今の私みたいに、うじうじとへばりついたガラスのカケラだけがキラキラと瞬いてた。


『待ってるぞ』


その言葉が、頭の中でエコーがかかって響く。

今の私は空っぽだ。

以前よりずっと。

求めてた、渇望した答えに囲まれて、何をするべきかを忘れてしまった。

もし私にできる事があるとすれば、それは...


「お母さん、これからどうするの?」

「......お父さんの葬儀が終わったら、私も職を探すわ。...この国で、女の人がつける仕事なんて殆どないけど、あなたのためならお母さん、頑張るから」


このままじゃダメだ。

私はそう確信する。

このまま答えに溺れて、苦しんでるだけじゃ。

私は、お母さんの前で言った。


「お母さんは家で休んでて! 私がバイトして稼ぐから!」

「あなたにだけ無理は...」

「大丈夫、自分のお金は自分で稼ぐから」


無茶だってわかってる、でも...人を殺してまで無駄な事をして、今なおウジウジと苦しんでいる私にできることなんて、これくらいしかないから。


「その、前からバイトしようと思ってたんだ」

「そうなのね.....」


バイト先は、とりあえず思いつく限りでは....

近所の雑貨屋か八百屋、あとは掃除のバイトくらいかな....

すぐに履歴書を書いて応募しようっと。


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