006-行け、少女よ。羽ばたけ、戦士よ。
博物館の中で、サイレンが鳴り響く。
侵入者を感知したためだろう。
だが、それを咎める者は居ない。
私は急いで、「征服戦争と武器」のコーナーを目指す。
途中何度か轟音が響く。
お父さんとお母さんの無事を祈って、私はいくつものコーナーを通り過ぎる。
閉館時でもスタンバイ状態になっているらしく、私の心の傷を抉るように音声が流れる。
『ノーザン・ライツ様はいくつかの別人説が囁かれており、そのうちの一つが黒髪の青年だという話です』
そんなもの、まやかしだ。
噂に過ぎない。
私は声を振り切るように走って、展示エリアに出た。
「やっぱり、あった」
私は展示エリアの中央に鎮座する白銀の機体...スワローエッジのレプリカの上に上がる。
自分で調べたから、コックピットの強制解除スイッチの場所も知っている。
「バッテリーがまだ残ってる...!?」
流石、伝達前技術。
獣人達に伝えられる前の、ノーザン・ライツ達が持つ技術が使われている。
「私に動かせるか分からないけど!」
すごい昔の機体なのに、コックピットは物凄く簡素だった。
私は急いで電源をつけて、メインフレーム作動のメッセージを見た。
「やっぱり、動く!」
私はコックピットを見渡す。
右に何かレバーがあって、そこが点灯している。
私は試しに、それを最大まで上げてみた。
「わあっ!?」
轟音が響くと同時に、コックピットの覆いが閉じた。
開ける方法がわからない以上、私は目の前に鎮座する操縦桿を押し込む以外の選択肢はない。
「私にだって...出来る!」
操縦桿を押し込んだ瞬間、強烈な高揚感と共に機体が浮き上がった。
気がつくと、機体は博物館の壁に突き刺さっていた。
「すごい頑丈...このまま行く!」
スロットルを最大限に上げたまま、私は機体を思いっきり上に上げた。
ガラスの天井を突き破って、機体は空に飛び出した。
「飛んでる...!」
今、私は自由になった。
自由に空を飛んでる!
「っ、戦わないと...」
敵を倒さないといけない。
私は操縦桿を引く。
その途端、機体が逆さまになって墜ち始める。
「なっ、なんで!?」
意味のわからない警告音が鳴り響く。
慌てて操縦桿を押し込むと、ますます機体は速度を上げていく。
どうしたら、どうしたら!?
「なっ、何とかなってっ!!」
直後。
私の周囲の時間が、ものすごく遅くなった。
何が起きたかわからなかった。
でも、これなら...
冷静に対処できる。
気持ちを落ち着かせて、操縦桿を操作しながらスロットルの出力を抑えて、浮力と推進力のバランスをとった。
「行ける、私だって...っ!」
画面が敵の存在をとらえた。
私は機首を上げて、敵の真上に回り込んだ。
自動ターゲットを使って、操縦桿についている機銃のボタンを押して...
《エラー:WEAPON NOT EQUIPPED(装備が取り外されています)》
エラーが鳴り響く。
武器が使えない!?
「(やっぱりだ)」
憧れも、人生も、この機体ですら。
私の思い通りには決してならない。
敵に気付かれた、砲塔が回転するのが、スローモーションの視界の中で見える。
私は思わず目を瞑って、
『いい腕だ、悪くない。だが...一人じゃ何もできないだろう』
声が聞こえた。
思わず目を開けると、コックピットの横を何かが飛んでいた。
敵が撃つ前に、それは撃った。
夜空を眩く照らす光が、その機体を染め上げた。
「な、んで」
その機体は。
見間違えるわけがない。
私はその機体をよく知っていた。
「死んだはずじゃ...」
その機体の呼ばれ方は様々、でも、本当の名前はたった一つだけ。
KETER-001、KETERナンバーで最初の機体で.........ノーザン・ライツの乗機だ。
「ねぇ、あなたは誰?」
『戦え。その覚悟があるならな』
《WEAPON DATA LINKING(武器情報共有)...HIDDEN WEAPON DATA RELEASED(偽装武器解除)》
そんな表示が出て、私の機体の側面から武器らしきものが飛び出た。
詳細を見ると、機銃らしい。
『その機体に目をつけたのはいい視点だが、その機体には反乱に使われた時に備えてセーフティがかけてある』
「あなたは誰なの!?」
答えないまま、KETERは私の機体から離れていく。
こうなったら戦うしかない。
そうじゃないと、誰も守れない。
「うぉおおおおおおお!!」
スロットルを最大まで引き上げて、機体は制御不能な速度にまで達する。
でも、この遅くなった世界なら...どこまでも行ける!
面白いと感じたら、感想を書いていってください!
出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。
レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。
どのような感想・レビューでもお待ちしております!
↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。