004-仮面の男
『次はー、ミカルミ、ミカルミです』
「ふぁあ....」
私は、車内アナウンスで目を覚ます。
場所は都営のバスの中。
この時間は、サリナ女学校ともう一つ、ペシュナ聖学園に通う学生でバスの中は騒がしい。
始発で座れる私は、立ってくっちゃべる面々を無視して、狼人用のヘッドフォンを頭に付ける。
音楽を聴きながら、サリナ女学校前に着くのを待つ。
渋滞しているみたいで、中々着かない。
多分ストライキをやってるんだろう。
セレステラⅡは主要な産業が加工業なのだが、賃金が安いとかで労働者がよく騒いでいる。
「あ.......」
その時。
太陽の位置が変わったのか、ビルの間から太陽の光が差してくる。
影を落としていた街並みが、急速に光に照らされて輝く。
問題は、太陽光が直射だという事。
慌てて視線を下げて、じりじりとした暖かみに耐える。
暫くするとバスが走り出して、ほどなくしてミカルミに着く。
あと三駅.....
三駅......
「寝過ごしたぁ!!」
起きると、サリナ女学校前から六駅先の「ハシブナ」だった。
しかもバス停が遠い。
仕方なく歩く。
体がだるい。
人通りがやけに少ない通りを歩きながら、太陽に照らされた大きな塔を眺める。
あれは都庁舎、あれの足元くらいにサリナ女学校があるから、そっちを目指せばバス停がある。
再び歩き出そうとしたその時。
「あー、済まない」
真横から声をかけられた。
そちらを向くと、人が立っていた。
変な格好だ。
大昔の船長みたいな格好で、顔には今時パーティグッズでしか見ないような仮面をつけてる。
私に近づいてきたその人は帽子を脱いで、私に言った。
「バス停を探してるんだが、カムラン行きの...知らないか?」
「にっ...ニンゲン...!?」
「珍しいか?」
その頭には、耳がなかった。
獣人は区別しやすいように耳と尻尾を出すことが義務付けられているけれど、この人にはどっちも無い。
ニンゲン、どう考えてもニンゲンだ!
「俺の質問に...」
「ニンゲンさん、聞きたいことがあるんです!」
このチャンスを逸しちゃいけない。
私はニンゲンに、聞いた。
「ニンゲンさんは100年生きるんですよね? 一生をどんなふうに見てるんですか?」
「...予想外の質問だな、だが...そうだな。人が生きる事はサイクルだ。サイクルに求められているのは「始まり」と「終わり」だけなんだよ。生きる時間や、どう生きたかは関係ない。生まれてサイクルが始まって、子供を作って...作らなくてもいい。サイクルの終わりが次に続くかどうかは、その人が決める事だ」
「あ...」
「...俺の質問に答えてくれるか? カムラン行きのバス停を探してるんだが」
カムランといえば、いつも乗っているバスの行き先だ。
私は来た方向を指差す。
「...あっちです」
「どうも」
そのニンゲンは去っていく。
なんだったんだろう?
だけど、ニンゲンの答えは教えてもらった。
サイクル...始まりと終わり...
「って、遅刻する!」
とっくに遅刻なんだけど、私は急いで走り出す。
バスの時間に間に合わないと、またお説教だ。
今日は流石にお父さんも帰ってるだろうし、サボったら晩御飯抜きにされるかもしれないから...
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