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003-生命観

夜。

みんなと一緒にサリナ女学校に戻った私は、先生からたっぷりお説教を貰って帰ってきた。

話はもう親に伝わっていたけれど、


「ご飯できてるわよ」

「はーい」


お母さんは優しく出迎えてくれた。

お父さんはまだ帰っていないようで、食卓にはいない。


「お父さんは?」

「お仕事が忙しいそうよ、なんでも中央からの艦隊がこっちに来るみたい」

「中央から...」


私はあんまり政治に興味はないけれど、お父さんはそうもいかない。

お父さんはこのセレステラⅡの外交官の一人だから。

一番偉い人って訳でもないけれど、所謂“悪いヤツら”の交渉には引っ張りだこなくらいの達人だってお母さんが言ってた。


「軍人さんがこっちに来るなら、あなたはあんまり外を出歩いちゃダメよ」

「うん、わかってる」


連邦軍の兵士はしょっちゅう事件を起こす。

戦争もないので、ここ5年間で連邦は軍の縮小を始めて、それでも残ってる人たちは戦いが好きだったり、好き勝手したいだけの変わり者ばっかりだって聞いている。

兵隊に襲われた女の人の話もよく聞く。

今は繁殖期ではないから、比較的少ないとは思うけど。

用心に越したことはない。


「わぁ~っ、クリームグラタン!」

「久々に作ってみたんだけれど....どうかしら?」


お母さんはグラタンをあまり作らない。

手間のせいもあるんだろうけど、滅多に作らないからこそ美味しいのだ。

私は早速、食前の祈りを済ませる。


「獣神様、森神様に感謝感謝!」

「あっ、コラ!」

「感謝してることが伝わればいいの!」


私はスプーンを手に取って、グラタンを食べる。

おこげと一緒に、キノコや野菜を頬張って、口の中で味わう。


「美味しい!」

「よかったわ」


お皿が空になる頃に、お母さんは私に目を向けて言った。


「アザミ、まだ無理そう?」

「.....ごめんなさい」

「ええ、分かってるわ」


”まともになってくれない?”私にはそう聴こえた。

でも、無理な話だ。

私は逃げているから。

いつか向き合わなくちゃいけなくても、今は逃げたい。

卑怯な人間だから。


「お父さんが帰ってくる前に寝なさい、明日になったらきっと怒らないから」

「はーい....」


私は怒られたくないわけじゃない。

ただ、みんなが私を叱る時、その表情の裏側にある僅かな失望を、感じたくないだけ。

どうして誰も分かってくれないんだろう?




お母さんが沸かしてくれたお風呂に入る事にした。

10年前の獣人は、火を焚いてお風呂を沸かしてたけれど、今の獣人たちは都市の熱循環システムでお湯を沸かす。


「.........」


浴槽を満たすお湯に、私は全裸で浸かる。

天井の白色ライトを背景に、橙色の髪と、紫の瞳を持った私が映り込む。

慌てて視線を逸らせば、ちょっと目地の粗い風呂場のタイル壁が眼に入った。

1年前、私がまだ赤ちゃんだった頃、そこには文字を覚えるための防水のポスターが貼ってあって、今でもそれを幻視する。


「はぁ.....」


長い時間を生きるニンゲンと違って、獣人は一生がとても早い。

私には、もう11年ほどしか残ってないんだ。

長命種って呼ばれてる、獣人の中でも特異な種の人たちはそうじゃないんだけど。

私は長命種ではないから。

ニンゲンは100年も生きるらしいけれど、彼等にとって一生ってどんな感じだったんだろう?

ユグドラシル星系の保護区にしかいないニンゲンに会って、聞くことではない。

私は浴槽に頭を沈める。

揺れる水面を眺めて、トラウマを克服する方法を出たら調べようと決意するのだった。


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