028-ラタ・ヴェガ
「くそっ、なんなんだ一体!」
エスクワイアのコックピットでぼやく、一人の男がいた。
彼はディーマ、テロ組織「ファンタズム」の構成員であり...この間、アザミから掏摸をやった豹獣人である。
彼は現在、エスクワイアの電源を落とし、センサーから逃れた状態で宇宙を漂っていた。
その理由はといえば、突然現れた謎のエスクワイアによる襲撃であった。
『ターゲットできない!』
『ダメだ、速すぎて捕捉できない!』
残像を出すほどの速度で動き回り、次々と艦船を一撃で沈めていく。
まさに...悪魔。
速度が速すぎるせいでターゲットに必要なスキャン波が当たらず、レーザーによる包囲攻撃をまるで視えているかのようにすり抜けてしまう。
ミサイルは撃ち落とされ、他のエスクワイア達はそれを追ったものの、最終的に固まるように誘導され、範囲攻撃でまとめて残骸と化した。
『旗艦が撃沈!』
『指揮系統が混乱している、全員私に続け...おあーっ!』
そして。
戦艦が破壊されたことにより、指揮系統が一挙に混乱する。
所詮民間人や軍人崩れの寄せ集めでは、指揮権の素早い切り替えなど出来ず、指揮権を主張した巡洋艦がプラズマキャノンによって撃沈された時点で完全に統率を失った。
各艦は逃げず、ただめちゃくちゃにそのエスクワイアを狙い撃ちにするしかなくなり、ディーマのエスクワイアもまた味方の誤射によって右腕と武装を持っていかれ、残るは肩に背負ったビームキャノンの左砲だけであった。
「味方にやられて戦闘不能なんて、冗談じゃねえぞ」
レーザーによって帯電し、システムもほとんどダウンしてしまったエスクワイアを一旦シャットダウンしたディーマは、パイロットスーツの気密を確認してから、外に出る。
コックピットに満ちていた空気が真空に吐き出され、その勢いのままディーマは宇宙空間に放り出された。
バックパックのスラスターでうまく姿勢を制御し、ディーマは周囲を見渡す。
「なんだ、こりゃ...」
周囲には、冷えた残骸だけが残っていた。
既に艦隊は撤退した後らしく、デブリと化して、徐々にセレステラⅡの引力に捕まりつつある残骸のみが残っていた。
ディーマはその中に、無人の避難シャトルを見つける。
「へっ、まだ運に見放されちゃあいないか」
緊急区画ごと切り離されて浮かんでいるようであった。
エスクワイアを起動したディーマは、残った燃料と推進剤をうまく使いそのシャトルへと向かうのだった。
「バカな! 全滅だと!?」
玉座に座った男が叫ぶ。
その眼前では、淡々と報告する長身の初老の男が立っている。
「報告では、エスクワイア隊の一人を除き完全に全滅、戻ってきたパイロットは精神的に疲弊が...」
「ふざけるな、一人ノコノコ戻ってきおって、ラタ・ヴェガのパイロットに任命させろ!」
「アレに載せるのですか?」
「元より懲罰部隊を載せるつもりだったのだ、構わんだろう」
初老の男...ジグスムントは、玉座にて血眼になって喚く男...教祖ラキエンにそう尋ねる。
ラタ・ヴェガ。
それは、ファンタズムの戦闘部隊であれば名を知らないものはいないほどの決戦エスクワイアであった。
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