026-急報
たっぷりご飯を食べた私は、アバターの休憩室を借り、出航時間を待った。
お母さんに「バスが遅延してて遅れるかも」とウソの連絡を送り、しばらくうとうととして過ごす。
「...っ!?」
そして、警報に叩き起こされた。
無理やり起こされたせいで、頭が痛い。
「な、何...?」
『これよりセレステラⅡへの緊急ワープに入ります、全員対ショック体勢に移行してください』
「な、何が起きて...ああっ!」
船が大きく揺れ、私は床に投げ出された。
ロングスカートのせいで、うまく立ち上がれない。
そのうちに、艦がワープに入ったのか、強烈な振動が再度走った。
「し...シンさん、何があったんですか!?」
『セレステラⅡに敵襲だ、現在軌道上にファンタズムの巡洋艦隊が展開している』
「......」
そんな。
だって、どうして...
この船のワープ速度では間に合わない、私の中でそんな言葉がこだまする。
「こ...行動っ!」
私は急いでブリッジに向かう。
その途中で、誰かとぶつかってしまう。
「ごめんなさい、急いでるので!」
「あ、ああ...」
誰かもわからないその人を無視して、私はブリッジへと上がる。
そして、指揮を取るシンに後ろから声をかける。
「シンさん!」
「...どうした!」
「この船のワープ速度では間に合わないと思います」
「...では、どうする?」
「私が出ます、敵の注意を引くくらいは...出来るはずです」
無茶な賭けだ。
でも、今回の場合は他人事で済ませられない。
出られるものが出なければ、私の故郷が...
「よし分かった、既に整備は出来ているから、ワープブースターを装備して出撃せよ」
「ワープ...?」
「あの機体は素でワープできる訳じゃない、エネルギーはあるが、大型のワープコアが搭載できないからな。それを可能としてくれるのが、ワープブースターだよ」
「...」
ごくりと唾を飲む。
新装備を受け取った、期待がのしかかる。
「真の力を使え、それがあれば、アストランティアはたった一機で戦況を覆せる」
「...分かりました」
「遠慮なく暴れろ、相手が戦士なら人間じゃないんだからな」
「はい!」
彼等に捧げる祈りを、私は持っていない。
テロ組織の人間なんかに捧げる祈りは。
同様に、敵も私に捧げる祈りなんて持ってはいないはず。
だったら、お互い様。
通路に出た私は、携帯端末を取り出して、お母さんにビデオ通話を繋げた。
『アザミ、どうしたの? 今首都中に緊急避難勧告が出てるわよ、早く帰って来なさい』
「友達の家に避難してるんだ、全部終わったら戻るから」
『分かったわ...無事でね』
「うん、お母さん...愛してる」
『私もよ、アザミ』
私は携帯端末の電源を切って、格納庫へ向かう。
そこでは、巨大な筒状のブースターが二つ取り付けられたアストランティアが待機していた。
私は簡易着替え機に入って、パイロットスーツに着替える。
『いいか、格納庫は人払いしてある。ワープ中に外に飛び出せば、中のものは全て吸い出されてしまうからな。ワープトンネルに衝突すれば、アストランティアでも木っ端微塵だぞ』
「はい!」
ワープトンネルという、時空間が加速される回廊を形成して飛ぶのがワープなのだ。
だから、それにぶつかればタダでは済まない。
慎重な操縦が求められるようだ。
『ワープブースターは一回しか使えないが、ここはワープトンネルの中だ。出口までの特急便だ、事が終わったら分離しろ、デッドウェイトにしかならない』
「はい! ...デルフィニウム、コール」
『システム、ハードチェックオールグリーン。リムーバブルブースターのチェックグリーン、火器管制システム及び兵装弾数に問題なし、トランスファーフレーム動作異常なし』
「アザミ・レクシア、出る!」
『R-41格納庫エアロック開きます、電磁発進システムオンライン、角度調整+0.5、-0.1、発進許可を出します』
弾丸のように射出されたアストランティアは、ワープ空間に放り出される。
凄まじい勢いで、アバターの背中が遠ざかっていく。
「ワープブースター、起動!」
『ワープブースターオンライン、ワープコアへの注水開始、起動します』
それに負けないように。
アストランティアはワープブースターによって更に加速、ワープトンネルの中にワープトンネルを作って加速するのだった。
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