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002-歴史

『私達獣人の歴史は、古い時代から続いてきました』


みんながいる場所に向けて走る間に、聴き慣れた解説が耳に入った。

足を止めることはないけれど、私は狼の獣人だから、勝手に耳に入ってしまう。


『そのルーツは、このNoa-Tun連邦国の元首都である『ユグドラシル星系』にある、イルエジータです。現在はユグドラシルⅢの名前で広く知られていますね』


まずい、このままだと。

私の聴きたくないところまで聴こえる。

両手で耳を抑え、聴こえないようにして走る。


『私達獣人は、この十年の間に大きく進歩を遂げました。元老院の設立、それによる獣人の権利獲得。連邦の所有する領土内の惑星への入植。現在は人道的な観点から廃止されていますが、高速学習システムによる文化・技術レベルの継承により――――』


知っている歴史だ。

でも、それは全ての後の事。

私にとっての”英雄”がいない時代の事だ。

先へと進み、そして皆がいる場所に辿り着く。

大きいホールのような場所で、ホログラムのデフォルメされたニンゲンが、何か解説している。


「追いついた!」

「あっ! アザミさん! 探したんですよ!?」


先生が叫んでくる。

だけど、生徒相手にいちいち感傷するような人ではないことは、私はよく知っている。

形式的に心配して、直ぐに私を席に座らせる。


「ねぇ、今何の話?」

「”天救の日”の解説だよ! 記録映像だけど、当時の人の実体験だって!」

「ああ.....」


知っている。

星空の帝王ノーザン・ライツが、大軍を率いてイルエジータに降り立ったこと。

当時、獣人たちはイルエジータの支配種族ニンゲンに包囲されていて、絶望的な状況だった。

けれど、天からドローンの群れが降りてきて、旧式の装備しか持たないニンゲンを全滅させた。

それだけの話だ。

でも、獣人にとっては違う。

誰も獣人を救わなかったけれど、ノーザン・ライツだけは違った。

獣人達は救いを求め、代価と引き換えにライツは獣人を守った。

それでも、幾度の戦いで獣人たちは故郷を焼かれたらしいけれど.....


『――――わしらは感謝を忘れん。例え、あの御方がわしらを切り捨てても。わしらにとって、あの日空からやってきた天の使いこそが、いちばんの救いだったんじゃ』


おじいさんの語りはそこで終わる。

それと同時に画面が切り替わり、見たことがあるマークに画面が切り替わった。

祈るような手の中で、X状に星が輝いている。

星の左右には羽がついている。....そんなマークだ。


『”星空の帝王”。当時、ノーザン・ライツ主席が名乗ったその名前は、現在は宗教法人「ノーザンライツ・プレイアーズ」で神を指す言葉として信仰されています』


出た。

私はノーザンライツ・プレイアーズが嫌いだ。

あの人は、それでもニンゲンなのに。

神だって崇めるだなんてふざけてる。


『――――それでは、これにて”天救の日”の記録映像を終了します。御拝聴ありがとうございました!』


ホログラムが礼をして、映像は終わった。

興味なさげなみんなは、直ぐに解散していく。


「ねぇねえ、アザミ! 何やってたの?」

「別に? ちょっと....裏山に」


私に話しかけてくるのは、黒髪の狐獣人、マーサだ。

その紺色の瞳に、私の橙色の髪が映る。


「裏山!? 何があるの?!」

「何かあるわけじゃ無いよ。空を見てただけ」

「空......そういえば、さっきおっきい戦闘機を見たよ!」

「あー.....」


戦闘機。

空を飛んで戦う兵器だけど、今は時代遅れの代物だ。

この博物館に置いてあるのは、当時ライツの跡を継いだ人物、ルルシア・ノーアトゥーンの乗機だったらしい「SWALLOW-EDGE」のレプリカで、実際に動くらしい。


「マーサ、今日の課題って何?」

「ノーザン・ライツさんの記事を自分で調べて、それについて小論文を書くんだって.....わーん、私文章書くのムリだよ~....」

「分かった、分かった。私が書くから.....」

「え~ん、ありがと、アザミ~」


マーサに縋りつかれながら、私は残りの見学エリアを見て回る。

目新しいものはないけれど、久々に来たからか、あるものに目が留まった。


「あれ.....?」

「んー? どうしたのー?」


『アールシア家の紋章が刻まれた盾(複製)』と書かれたプレートの奥にあるのは、紋章が刻まれた、ボロボロに見える盾だ。

その紋章に、私は不思議な既視感を覚えた。

それが何かわかる前に号令がかかり、私達は集合場所へ行くのだった、

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