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019-岩間の輪舞曲

私が基地に近づくと、その外壁に幾つもの表示が出る。


『防御砲台が展開されました』

「避けるべき...かな」

『推奨します』

「......」


この機体には色々な武装があるけれど、あの外壁に対して有効な武装を私は知らない。

Uターンして弾幕を掻い潜り、フルークリッターに任せる。

画面に映っていた表示が消え去っていく。


『特異空間平面への独自地平面形成を確認、フィラメントワープアウト、総数6』

「.....来た!」


フィラメント・ドライブ。

空間を飛び越えて星系間を航行する技術の中でも旧式のものらしく、教科書に載ってるのを見たことがある。

触媒も高いはずなのに、よくあんなの使うよね....


『コルベット2、フリゲート1、駆逐艦3』

「撃ってきた!」

『遮蔽物が多く、射撃精度が低下しています』


アステロイドの外周を旋回しながら、私は敵の情報を見る。

アニメとかだと、コックピットから敵が見えるけれど.....

光源のないこのアステロイドと、この距離からじゃ敵は見えない。

この、キャノピーに投影されたスクリーンだけが、私の目であり、耳である。


「.......フルークリッターはどうするんですか?」

『側面より突入、近接武装を使用し、敵駆逐艦に打撃を与え離脱する予定です』

「わかった」


敵の注意はフルークリッターに向いている。

それなら、フルークリッターの進路と真逆の方向から仕掛ければ、シールドを失った艦にダメージを与えられる。

だけど、それは敵も予想してそうな気がする.....


『戦術提案:パイロットの操縦技術が不完全なため、覚醒を利用した超光速戦闘を提案します』

「.......」


覚醒は、私にとって未知の力だ。

不完全だからかは分からないけど、シンの妻のルルシアさんやネムリーさんの覚醒とは違って、あんまり疲弊しない。

お腹はめちゃくちゃ減るけど.....


「加速する!」


スラスター出力を40%まで引き上げて、アストランティアの速度を急速に上昇させる。


「....覚醒!」


時間が一気に遅くなる。

ふつうこんな速度でアステロイドの間を飛んだら、あっという間に岩塊にぶつかってしまうだろう。

だけど――――私なら!

アステロイドベルトの海を駆け抜けたアストランティアは、艦隊の真正面に躍り出た。

敵は一列になって飛び込んでくるフルークリッターを見ていて、こちらに気づいていない。


『見つかっていない状態というのは、最大の好機であるのと同時に、その戦闘においてたった一度の命運を分けるチャンスだ』

『そうなんですか?』

『ああ、だからこそ、”見つかっていない”状態を再度作る事の出来る遮蔽装置や次元潜行技術は強力なのさ』


私はシンのその言葉を思い出す。

見つかったら、一生捕捉される。

だけど、そうじゃないなら?

例えば――――


『敵艦シールド消失』

「もう一発!」


私は艦隊の中央に飛び込み、駆逐艦一隻にプラズマキャノンを発射し、シールドごと装甲を削り取る。

そのままもう一発。

撃たれる前に速度を上げて離脱。


《ENEMY LOCKED》

「ッ!」


見つかったら撃たれる。

当然だ。

なら、スロットルを60%まで引き上げて――――亜光速で宙域を離れる。


『指定エリアを逸脱しています』

「すぐ、戻るから!」


だから今は、あの駆逐艦に何人乗ってたか数えさせてよ。

せめて、あの艦隊の索敵エリアから離れないと。


「デルフィニウム、敵の索敵範囲は?」

『スキャン方式から推定。電波による短距離高精度ターゲットシステムを搭載しています。既に索敵範囲外です』

「よしっ」


私は機体を宙返りさせる。

いや、宙返りなのかな.....これ?

上下左右も分からない中、アストランティアはただ私の翼となって翔んだ。

フルークリッターがUターンして再度攻撃をかけようとしているとき、敵は一瞬で通り過ぎた私を見失った。

レーダーに映るまでのその一瞬でもう一度仕掛ける!


《LOCKED》

「ごめん!」


仄暗い宇宙を、あの船に乗っていた人たちの悲鳴が(つんざ)くことはない。

だから私は、平気でいられるんだ。

人を殺している実感を得られていないから、握った武器に恐怖することもない。

やらなきゃ、やられる!


《ENEMY LOCKED》

「っ!」


最後に残った駆逐艦一隻と、その横を飛んでいたコルベット艦が、ミサイルを何発も放った。

それらは一斉に、アストランティアへ向かってくる。


「飛べッッッッ!!!」


接近警報を耳にしながら、私は叫ぶ。

加速したアストランティアは、ミサイルを難なく振り切った。

振り向けば、勢いを失ったミサイルが遠く離れていく。


「あと一隻!」


物凄い密度の弾幕が張られ、暗い宇宙を無数の光条が埋め尽くす。

ここが戦場じゃ無かったら、流星群のようなそれに目を輝かせていたのだろうか?

アストランティアを駆逐艦の真下に潜り込ませ、至近距離からプラズマキャノンを放った。


「うわぁああっ!?」


近距離だから確実に当たる、そう思って撃ったんだけど.....

勢いで吹っ飛ばされ、機体の制御を失った。

上下が分からなくなって、機体の軸が維持できない!


「ど、どうすれば.....!」

『君はいい加減考えて戦うべきだな』


その時。

アストランティアを、何かが掴んで支えた。

私はあわててスラスター出力を0%にする。


「.....シンさん」

『騎兵隊の到着だ』


シンさんがそう言ったその瞬間、アストランティアの真横を数機のエスクワイアが通り抜けていく。

拡大表示で見ると、機体の二倍ほどの大きさを持つ四角い何かを背負っている。

ブースターから青白い粒子を噴射しながら艦隊に襲い掛かったエスクワイアは、四角い何かからミサイルか何かを飛ばして、フリゲート艦を吹き飛ばした。


「ミサイル....?」

『普通のエスクワイアは燃料で動くからな、レーザーなんて燃費の悪い兵器は積めないんだ』

「....この機体は違うんですか?」


気になる言い方だ。

しばらく空白が開き、


『その機体はエスクワイアではないな、エスクワイアの前提であるクリファーの発展形だ』

「....そう、なんですね」


暫くすると艦隊も到着して、アステロイドベルトの戦いは終わったのだった。

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