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016-悪友

学校の再開日は未定だけど、一応私の身分は学生だ。

夜、私はタブレットを引っ張り出してきて、教育機関から配布される課題をやっていた。

要は通信制と同じだ。

1日最低6個の課題をやるように設定されていて、ゲージが最大になると結果を送信できるようになる。

数学は私にはちょっと難しい。

体を動かす方が、狼獣人は得意だから。


「むむ…」


その時、腕から外していた携帯端末が、軽く震えた。

メッセージアプリの通知の時のパターンだ。

私は携帯端末をジェスチャーで起動し、ホロパターンの通知画面を表示させた。


『Shin:パーティーの時間だ』

「…はぁ」


まだ課題終わってないんデスケド?

そう言いたくなったけど、向こうがそう言うなら仕方がない。

私が頑張らないと、お母さんが苦労するもの。


「お母さん、ちょっと友達のところ行ってくる」

「今から? 随分遅いのね」

「うん…ゴメン、夕飯は間に合わないかも」

「…わかったわ」


外に出ると、まだ冷たい夜風が吹き抜ける。


「さぶ…」

「おーい、こっちだ」


上を見上げると、巨大な船がそこに浮いていた。

船はゆっくりと家の前の道路に降り立つ。

私は急いで飛び乗り、船は上へ向かって動き始めた。


「なんだか、いつもと様子が違いますね?」


船の中は普通だったが、艦内放送でジャズが流れていた。

それに被せるように下手くそな歌も。


「ああ、この船は俺の部下の船だ、遮蔽…まあ、ステルス状態になれる船だからな、既に交戦を開始している以上、大っぴらに近付けない」

『早く上がってきてくださいよォ、シン司令官』


その時、スピーカーから声が聞こえてくる。

シンはやれやれと言った様子で肩を竦め、私をエレベーターに案内した。

ブリッジに上がると、そこはとんでもない様相であった。

散乱するお菓子の袋、操縦桿を握っているのは、ナイスな胸部装甲を持っている女性だった。

それも......見る限り、ニンゲンだ。

この短期間で、二人もニンゲンと出会ってしまった。


「軍規違反だぞ、色々と」

「隣、どうぞ」

「ああ…君はその辺の椅子に座っていいぞ、どうせこの艦はワンマン運用なんでな」


私は落ち着かない中、レーダー席っぽい場所の椅子に座った。

レーダーは起動していないようで、画面は消えている。


「フィーア、また飲酒してるだろ。…流石にヤクは辞めたか?」

「細かい事言わないでくださいよォ」


私がソワソワしていると、前でシンと、フィーアと呼ばれた女性がイチャイチャしていた。


「ヤクはなんか違ったんで辞めました。でも、酒は…刺激です、辞められませんね!」

「飲酒量を制限しろ、オーロラのお世話になりたくなければな」

「ひっ、オーロラ様の治療、容赦ないんですよねぇ…」


そうこうしている間に、艦は宇宙へと上がっていた。

シャトルと同じく、この艦もオリジンテックの集合体らしい。


「あれ? 通信を封鎖してるんですか?」

「そういうわけじゃないはずだがな」

「帯域が違いました! えへっ」


軽い様子だが、上司と部下の関係ではなかったのだろうか?

しかし、私はそこに突っ込むことはさけた。

私は部外者であり、シンは友好的ではあるが、親密な間柄ではない。

私はこの場に置かれた、シンの駒の一つだ。

だというのに…少し悔しく感じるのは何故だろう?


「まあいいです、このまま超特急でお送りしますよ」

「通信する時はラジオを消せよ、次こそは軍法会議行きだぞ」

「はいはーい」


見れば、艦内放送用っぽいマイクの側に、古くさい携帯ラジオがガムテープで固定されている。

ジャンク屋でしか見ないような、ビージアイナ帝国の遺物だ。

でも、ラジオが流れているのは初めて知った。

後で知った事だが、ラジオは有志が運営する放送局が連邦のあちらこちらにあるようで、セレステラⅡ周囲にも、無数に存在するアステロイドベルトを発信源とする海賊ラジオ放送局があるようだ。


「っと、自己紹介と行くべきですか?」


その時、初めてフィーアという人が振り向いた。

その振り向きざまに向けられた視線の奥に闇を感じ、私は全身が総毛立つのを感じた。


「ビビっちゃいましたか? 可愛いですねぇ」

「…」


ただの軽い女の人じゃない。

そこに至るまでには、私の想像もつかない闇があるようだ。

シンはそれを知っているようで、微笑みを崩さずに沈黙している。


「私はフィーア、Noa-Tun第四指揮官ですよ」

「えっ!?」


歴史の教科書で見たことがある。

だけど、その時見た映像では、こんな軽い様子じゃないし、胸もこんなに大きくなかったような…


「人は変わる、それは誰しも同じことだ」


シンはそう言うけど…

何が起きたらこんなに変わるんだろう?

聞けないまま、艦はあの旗艦の側まで近づく。


「こちらブロードキャスト! …じゃなかったブロードベッツ! ドッキング要請を申請する!」


ラジオをぶった切り、フィーアさんは通信で呼びかけた。

直後、『こちら旗艦アバター、ドッキング要請を受諾!』と返ってきて、アバターと呼ばれた大きな船の側面がゆっくりと開いていく。

船はそこへ向かって、ゆっくりと進み始めた。




「お帰りなさい、あなた」

「ああ、今戻った」


船から降りた私たちを出迎えたのは、紺色の髪をした少女だった。

少女は、挨拶を終えるなりシンに抱きつく。


「紹介しよう、彼女はルル、俺の妻だ」

「えっ!?」


どう考えても私と変わらないくらいなのに…ロリコン趣味だったなんて。


「あっ、説明がまた足りませんよ、あなた」

「あぁ…悪かった、別に俺は幼女趣味というわけではない、彼女は長命種だから、実際は成人してるんだ」

「長命種…!」


ニンゲンより長く生きるという、獣人族という種族の中の希少種。

それに出会えたことに驚きつつ、私はシンの周囲には驚くほど色々な人が集っているのだと驚く。

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