013-初戦闘
《ロックしました、現在クロスポイント誤差-0.21》
船を強烈に意識した瞬間に、画面の表示が変わった。
私は機銃のスイッチを押す。
手に余計な力が入って、軸がぶれる。
けれど、それで十分だった。
あの時の機体とは、威力が全然違ったからだ。
船を覆っていたシールドを一瞬で叩き割ったそれは、装甲を砕いて内部にまで浸透した。
その後どうなったか確認する前に、アストランティアは艦隊の真後ろにまで通り抜けていた。
『流石、速いな。......送り狼が来るぞ』
「...はい!」
『敵艦隊、駆逐艦よりエスクワイア四機出撃』
デルフィニウムの無機質な声が、コックピットに響く。
幸いにも、アストランティアは結構速い。
ちらりと後ろを振り向けば、四機のマークがこっちに向かってきていた。
「う、撃たれる!?」
『落ち着いていい、動き続けることが重要なんだ』
「......は、はい!」
直後、アストランティアの真横を大きい光が突き抜けていく。
艦砲射撃だ、私の中に焦りが満ちる。
『狙いは、捕捉されなければ定まらない。だが、その捕捉のためのスキャン波より速く動けば、狙いは定まらない。――――君になら、それが出来るはずだ』
「........!」
私は唾を飲み込んで、機体を旋回させる。
視界が揺れ動いて、こっちに向かって撃ってくる艦隊を捉える。
『とはいえ、俺たちも支援しないことには始まらないな、見ていろ』
そうシンが言った直後。
シンの艦隊が一斉に撃った。
宇宙空間を突き抜けた光の束は、何隻かを貫いて破壊する。
『機銃はあくまで自衛のためのものだ、基本はプラズマキャノンを使え』
「プラズマキャノン....?」
《両舷部プラズマキャノン-上から二番目の発射スイッチで発射、相対速度により発射には五秒程度の猶予が求められる》
「.....分かりやすくて、助かります!」
私は呟くと、画面右下の表示.....それが速度計だと今気づいたそれが、ぐんぐんと上がっていくのを眼にした。
多分だけど、勝負は一瞬。
この機体の速度で艦隊を横切りながら撃って、また射程から外れてUターンする。
それの繰り返しなんだ。
《有効射程》
「っ!」
私は、上から二番目のスイッチを堅実に押し込む。
背中がスッと凍り、直後機体両翼下部に吊り下げられた砲身の先から、緑色の弾が飛んでいく。
すぐに通り過ぎた私は、慌てて背後を見る。
ブリッジ付近が大きくえぐれたその船が、バランスを崩し始めているのが見えた。
…威力が違いすぎるような。
途轍もなく大きい暴力が、今私の手にある。
『よくやった。…実は、敵の船は結構オンボロでな、その機体の主武器でも十分ダメージを与えられるんだ』
「はぁ…分かりました」
同じ敵を攻撃するのは駄目だ、敵に狙いを悟られたら死ぬ。
私はそう覚悟して、機首を別の方向へ向けた。
《有効射程》
「ここからでも撃てるの!?」
凄い長い射程だ。
そう思っていると、デルフィニウムが発言する。
『連射による射撃は減衰が激しいため、遠距離の際は長周期照射、つまりスイッチの長押しによる攻撃が有効です』
「…ありがとうございます」
私は言われた通りにしてみる。
砲身から長く太い光の束が放たれて、凄い速度で狙った中くらいの船の壁を貫き、その船体を吹っ飛ばして消えた。
追撃のチャンス!
『切り返せ! 周囲を把握しろ』
「....はい!」
ふと、自分が前しか見てなかったことに気づく。
集中力が上がってるけど、スイッチが難しい....広げたり狭めたりしながら、私は背面にいるエスクワイア....人型機動兵器を意識する。
装備してるのは....分からない、多分ライフル?
『バレルロールを推奨』
「分かんないけど! やってみます!」
機体を旋回させて、こっちに向けて飛んでくる弾丸を躱す。
一発でも当たったら終わるから....
『あ、言っておくが、その機体にはシールドがある。艦砲一発くらいなら耐えるからな』
「早く言ってください! そういうのは!」
逃げた先にあった小型艦が、こっちに向けて撃ってくる。
急いで真上に向けて飛んで、攻撃を一旦切る。
『そろそろ俺も出る、射線から抜けるんだ』
「....はい!」
私はアストランティアを、シン達の艦隊の方へ飛ばす。
その時に、シンの乗る超巨大な船の上部が展開され、KETERが姿を現すのが見えた。
『シン、KETER、出る!』
「わぁ....」
KETERは、背中の羽から緑色の光を放って飛び出した。
私は急減速させて、彼の戦いを見守った。
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