010-悪魔のささやき
厳正な審査の結果、私は近所の雑貨屋の店番を任された。
そこまで難しい事でもなく、5時間ごとに監視カメラのファイル更新スイッチを押すことと、店先に立ってセルフレジを監視する事だけだ。
勿論万引きと強盗についても念を押されていて、万引きを見つけたら通報スイッチを押し、強盗が来たら.......その、レジ下にあるレーザーガンで応戦しろと言われて、簡単な使い方を教えてもらった。
入っているのは麻痺性のスタン弾らしいので、死傷する事はないそうだ。
「........ひま」
ゆっくり考える時間があると言えばそうだけど、暇なものは暇だ。
でもこの場所はいい。
空が綺麗に見えるから。
今日は雲が多い。
多いけど....それでも、碧い。
碧くて、自由で....
「あ、毎度ありがとうございまーす」
お客さんはほとんど来ない。
こんな時だからかもしれないけど。
店長も、「入荷が来ないから売り切れたらそのままでいい」って言ってたし。
「ふぅ...」
レジ下に置いた自分用の炭酸飲料のキャップを開けて、中身を少し飲む。
視線を戻すと、そこに仮面の男が立っていた。
「――――ッ」
「ここはセルフレジか、悪いな」
男はお茶っ葉の缶を手に取ると、携帯端末でパッと支払いを済ませた。
缶を仕舞った男は、私に目を向けた。
仮面が自動的に解除されて、私は見知った顔を見た。
「....シンさん、だったんですか」
「おう。こんな所でアルバイトか?」
「はい、家計が苦しいので....」
「勿体ないな、話を蹴らなければ給料が出たのに」
「えっ」
あのパイロット、給料出るとかそういう話なの?
「ど、どれくらいですか....」
「君の父親の月収の三倍くらいだな、危険手当がついてくる」
「なんでお父さんの月収を知ってるんです?」
「そりゃ、この国で俺が閲覧できない情報は無いからな?」
そんな冗談を、シンは言った。
でも、それが間違いないのなら、こんな所でアルバイトしなくてもお母さんを働かせなくても済む。
でも......
「ま、気が向いたら連絡してくれ、寝ている間に連絡先に入れておいたからな」
「あ...勝手に!」
「無理なら消せばいい、じゃあな」
シンは去っていく。
呼び止めようとしたけれど、止められなかった。
「いらっしゃいませー」
入れ替わるように入った客に愛想笑いをして、私はあの男のことを忘れる事にした。
でも、瞼がその焼き付いた後姿を忘れても、耳はあの声を覚えているし、記憶の中では、あの誘いの言葉が何度も反響していた。
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