表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

001-踏みにじられた憧憬

世界は、憧れは、自分のイメージするようには動かない。

それを知ったのは、ずっと昔の事だ。


『英雄にして我らが王、ノーザン・ライツの記録映像がこちらです』


幼いころに見たドキュメンタリー映像。

その向こうでは、見たこともない船が、星空で撃ち合っていた。

その中でたった一機で戦う、人型の機体。

まるで、その機体には、それに乗る私達の王様には。

攻撃は疾風のように。

防御は城塞のように。

弱点なんて、ないかのようだった。


「せんせー、ライツ様に会ってみたいです!」

「ふふ、いつか会えますよ」


無邪気に、無知に叫んだ私に。

保育園の先生はそう言った。

私はいつか、ノーザン・ライツという男に会ってみたかった。

.....会って、ある事を伝えたくて.....

だが、

それを父親に話した私は、失望と絶望、そして無情感に包まれることになる。


「何を言っているんだ、ノーザン・ライツ様は十年前に逝去されたんだぞ」

「あなた、いい加減にしてください。少しは子供の夢を....」

「死んだものを死んだと言って何が悪いのだ、俺だって生きていてほしかった.......だが、いつまでも妄想に浸ってはいられないだろう?」


私の憧れは。

いとも容易く踏み躙られた。

ノーザン・ライツは既に死んでいて。

私は彼に会う事も出来ないし、思いも伝えられないと。

そして。

憧れは、またも踏み躙られる――――







「暇だなぁ」


私は呟く。

風が頬を撫で、正午に向けて昇り始めた太陽が、刻々と私の見下ろすビル群に影を作っていく。

いや、影を作るのはビルだけじゃない。

空を飛ぶ貨物船が、点々と街並みに影を作る。


「またサボリか!?」

「やばっ!?」


その時。

後ろから声がかかる。

慌てて振り向くと、そこには船が浮かんでいた。

標準型、もっとも流通しているタイプの小型輸送船だ。

それでも大きいのだが。


「シラーおじさん!」

「進級できねぇぞ!? 送ってってやるよ」


シラーおじさん、民間の輸送会社で働くおじさんで、いつもここを通る人だ。

すっかり失念してた....


「ごめんなさい....」

「いーんだよ、人生ってのは生きたいように生きりゃあ」

「はい....」


ごめんなさい。

私は心の中でも謝る。

シラーおじさんのような生き方は、私にはできないから。

生きたいように生きるって、どうすればいいんだろう?


「今日は学校じゃねえだろ?」

「はい....社会科見学で、博物館に」


私はあの場所が嫌いだ。

あの場所に行くと、憧れを意識せずにはいられないから。


「懐かしいなぁ、小さい頃はよくあそこに行ってただろう、アザミは」

「......うん」


無邪気な憧れを抱えて。

私の英雄だった彼への思いを、憧れを、願いを。

だけど、それは叶わなかった。

だから嫌い。


「ねぇおじさん、好きに生きるってどういうこと?」

「お前は、俺の船に乗らないって選択肢もあった。乗らなかったら、学校に行かなくてもよかったんだぜ」

「あっ......」

「ま、俺もそうだ。会社勤めなんだしな、お前を迎えに行かないって選択肢もあった。だけど俺は好きに生きたかったから、頼まれてもいないのにお前を迎えに行ったんだ」

「...........」


それに何て返したらいいかわからずに、私は黙り込む。

逸らした視線の先に、コックピットの外が見える。

雲が流れ、青い空が見えている。

その空に向けて、加速している船が目に映った。

星空へ、あんなに容易く踏み出せるのに。

私は、自分の人生すら、トラウマに縛られて。

情けない。


「着いたぞ、ほら、行ってこい」

「.....うん、ありがとう、おじさん」

「頑張れ若者!」


私は船のコックピットから降りて、振り向く。

おじさんはコックピットからこちらを見下ろして、微かに笑った。


「ほら行けよ、また親父さんにどやされる前に」

「ぅう.....分かった」


お父さんは怖い。

暴力を振るう人ではないけれど、大昔のしきたりに厳しい人だ。

怒られると長い。

私は受付に急いだ。


面白いと感じたら、感想を書いていってください!

出来れば、ブクマや高評価などもお願いします。

レビューなどは、書きたいと思ったら書いてくださるととても嬉しいです。

どのような感想・レビューでもお待ちしております!


↓小説家になろう 勝手にランキング投票お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ