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きっかけは弟の友人との同居生活だった  作者: 紫音
1章 始まりの同居生活
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0.始まりの朝

新連載始めました(;^ω^)

現代で同居ものが読みたかったものでw

現代ではありますが、少しファンタジー要素後半にあります。



 朝、目を覚ましてから顔を洗って洗面台の鏡を覗く。顔を洗い、タオルで水気を拭きとると年齢の割には大きな黒目が顔をだした。身長は160㎝程度で小さくもなく、大きい方でもない。これくらいがちょうどいいのだと周りには言われるので、悪くはないのだろう。肩にかかりそうな長さの黒髪に櫛を通して、軽くドライヤーをかけた。元から癖がある所為か、綺麗なストレートにはなり得ない。昔はストレートに憧れたこともある。だがいまではこれが自分なのだからいいのだと、そう納得もしていた。真っ黒な髪は褒められることも多いので、自慢の一つだ。


「さて、朝食の準備をしなきゃね」


 キッチンに立つと、まだ何がどこにあるのかわからなかった。というのも、ここに立つのはまだ二回目なのだ。昨日の夜、そして今。なるべく音を立てないように気を付けながら、食器の位置を確認する。朝は時間がないからと、パンを用意していた。トースターで焼き色を付けるのは時間をセットするだけでいい。あとは軽く卵焼きを作って、ウィンナーを焼く。サラダの隣にそれらを置くと、簡単ではあるが朝食の完成だ。

 テーブルに用意をしてから、ドリップのコーヒーを淹れる。そうしていると、ガチャリと扉が開く音がして、思わず手を止める。


「あ、おはよう、遥くん」

「……あぁ」


 扉から出てきたのは、一人の青年。色素の薄い髪色、前髪から覗けるヘーゼルの瞳。スラっとした細身の体躯にはブレザーの学生服がよく似合っている。リビングにあるソファーに手に持っていカバンと上着を投げ捨てるように置くと、洗面所へと向かっていく。彼の名は瀬尾遥翔(はると)。ここの家主だ。

 そんな様子に思わず顔がにやけそうになるのを必死に抑えた。二人分のコーヒーを注ぎ終えたところで、洗面所から彼が戻ってくる。


「簡単なものしか用意できなかったけど、ごめんね」

「別に、あんたは自分のことだけしていればいい」

「そういうわけにはいかないよ。遥くんは食べ盛りの男子高校生だし、私の方が居候なんだからこれくらいはね」

「それは別に気にしなくていい。まぁもう一度捕まえたかったのが本音だけど、そうはならなかった以上

あんたがあの家に帰るのは危ない」


 捕まえたかった。そうは言っている遥翔だが、あの時もそれほど拘束に拘っていなかったように思える。何度捕まえても意味はない。あの後、色々と言われたが結論としてはそういうことだった。


「ごちそうさま」

「お粗末様でした」


 礼儀正しいのは育ち故か。食べ終わった食器を片付ける姿を見ながら、同じ家にいる事実を噛み締める。


「呆けてる暇があるなら、あんたも準備したらどうだ?」

「ふぇ? あ、もうこんな時間だ!」


 のんびりとコーヒーを飲んでいる場合ではなかった。急いで部屋に戻り、準備を始めた。仕事柄、それほど念入りの準備は必要ない。化粧も濃いものではなく、なるべく自然体であることを意識していた。そうした方が仕事がやりやすいからだ。

 カバンを持って部屋を出れば、上着を羽織りカバンを肩にかけている状態の彼がいた。


「あんたも出るんだろ?」

「う、うん」

「ならさっさと行くぞ」


 玄関で靴を履き、外に出ると鍵を閉めてくれた。後ろを振り返れば、街並みが見える。ここはマンションの十四階だ。これより上は屋上しかない。エレベーターに乗り込み、一階のボタンを押し、地下のボタンも押してくれた。

 チンという音と共に扉が開く。一階に着いたようだ。彼がエレベーターを降りるため足を踏み出したところで、その背に向かって声を掛けた。


「いってらっしゃい、遥くん。気を付けてね」

「……あんたもな」


 振り返ることなく告げて、彼はそのままエレベーターを降りてしまう。扉が閉まり、地下へと移動した。開いた扉から出て、己の車がある場所までいき、乗り込む。


「車通勤はあまりしたくなかったんだけど、これも仕方ないんだよね」


 なるべく徒歩での行動は避けること。徒歩で行動する場合、同行者を伴うこと。そもそも通勤以外での単独行動はしないこと。上司からも先輩からも、弟からもきつく言われている。落ち着くまでというが、それがいつまでになるのか全く読めない。それが一番つらいところだ。


 どうして自分がこのマンションに来るようになったのか。それは過去の事件、そして先日遭遇した事件が原因だった。その結果、自分――春川陽奈子(ひなこ)は弟の同級生であり友人でもある遥翔と同居することになってしまったのだ。


『遥翔のこと頼むな、姉ちゃん』

「わかってるよ」


 弟である雪人からのメールを見て、陽奈子はこの奇妙な同居が始まった経緯を思い出すのだった。



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