第五十九話 森の中の魔王城
この森は意外にも大きかった。あれから三十分前進しているのに城は一向に見えてこない。
しかも敵が来る気配もない。おかしいな、シースの魔法には反応があったのに…気味が悪い。奴は俺たちが来るのを待っているのか?
そこで無線からシースの声が聞こえた。
〈私の魔法に反応がある!多分この先にあるよ!〉
そこで操縦手のトウヤに言った。
「聞こえたなトウヤ、この先だ、全速前進だ」
〈分かった、少し揺れるぞ〉
ディーゼルエンジンの音を響かせて、Gを感じながらもそのエンジン音とスピード感に圧倒された。
少しずつこの暗い森の外から光が見えてきた。森を抜けるぞ…!!。
凄まじい光とともにあからさまに木とは違う影が見えた。これはカカス城よりデカいぞ……。
「これはすごいな……」
〈あったのか?もう私降りていいか?〉
後部座席に一人で乗っている怜奈が無線をしてきた。
「ああ降りていいぞ」
怜奈が降りてきて少し前に歩いた。
そして怜奈は口を開くことなくそのあまりのデカさに圧倒されていた。
全員装甲車から降りてそのデカさに圧倒された。
「ここに?行くのか?」
トウヤがそう言う。そしてその弱腰なトウヤに言う。
「確かにヤバいのはそうだ。だが、俺達はカカス城だってダンジョンだって攻略してきたんだ。しかも、今回は元特殊作戦群の人間もいる。俺達ならやれるさ」
「……分かった、やるしかないな」
よし、やる気は取り戻した。あとは準備を整えるぞ。
準備をしつつ、俺は寝た。
翌日。暦一九〇一年、七月十四日、アスカ共和国、北西部、午前九時。
よく寝た。気持ちがいいほどに。おそらく魔王城の前で体を伸ばす。これから魔王を倒しに行くとは思えないが、今だけが心配事も忘れられる。
ふと右腕を見る。幻だったなんてことはない。右腕が失くなったのは、現実だ。
そこで怜奈が歩いてきて言った。
「前から思ってたけど、その義手はいつから?」
「この前だな、怜奈に会う前だ。魔王に炸裂弾で吹っ飛ばされた」
「そっそうなのね…」
「吹っ飛んだのが右腕だけで済んだのが奇跡だよ」
そう言って俺は装備を整える。
今回はいざという時のために破片手榴弾と発煙手榴弾、それと閃光手榴弾(またの名をスタングレネード)を用意した。
ナイフや拳銃、ライフルもいつも通りに準備した。そろそろ行くか。一人一人の準備を確認しに行った。
シースはいつか見た戦士の鎧を着て左腰に刀を差していた。左脚辺りの所に魔法の杖であろう一本の棒が差してあった。
トウヤは減音器を付けたM1911A1とサイトやフォアグリップなどを装着したM4カービンライフルを持っていた。
怜奈はいつものドイツ軍の服ではなくアメリカ海兵隊の服を着ていた。メインに陸上自衛隊の89式5.56mm小銃と九ミリ拳銃を装備していた。服は海兵隊だが、銃だけは使いなれたものが良かったらしい。
用意も準備もできた。そろそろ行こう。
「みんな、行けるな?」
怜奈とトウヤが返答する。
「準備完了、私は行けます」
「俺も行ける」
シースが目を閉じて深呼吸をしてからゆっくり目を開けて言った。
「……行けるよ」
俺たちは城に入った。




