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4 突然の再会

今回短めです。


ど、どうして。


この場所にいるはずのない人がここにいるの!?

え、噂をすればなんとやらとかで現れたとか?いやバカな。


第一、伯爵位を継ぐんだよね?

今頃その手続きとか婚姻の準備とかやらなくちゃいけないことが目白押しで、商会の仕事も領地経営もシルが抱えてるものもたくさんあるはずで、だからこそ、婚約者と手に手を取り伯爵領を盛り立てるためにこれから頑張っていく……わけで。


つまるところ、こんな辺境の隣国になどいるはずがない。

しかも、シルの元を勝手な理由で逃げ出した()婚約者の場所なんて知るはずがないのよ。


なのに。

じりじりと距離が縮まる。私の足は後ずさっているけど、それと同じくらいシルが距離を縮めてくるからだ。


「やっとだ。やっと、見つけた」

「シ、シル……ヴェスト……様」

「どうしてそんな他人行儀な言い方するの?いつものようにシルって呼んで」

「い、いつもの……って、わた、私はもう婚約者じゃな」

「アンジュ。私の婚約者は君だけだ。今も──昔もずっと」

「え」



とうとうゼロ距離になってしまった。

まっすぐに見下ろしてくるシルの顔を見るのが怖くて足元に視線を下ろす。一瞬見えた顔は傷付いたような表情で、より申し訳なさが勝った。


──どうして。

私はてっきりとっくに私の有責で婚約破棄されていると思った。もしかして、私がいなくなったから?だから、したくても出来なかったの?

だとしたらここに来たのは、愛しい人と婚姻するために私の同意を貰いに来たということ?


「──例え、アンジュの心がもう私の元にないのだとしても、私の妻になるのはアンジェリア、貴女だけだ」

「それはどういう意味──」


バッと顔を上げたら、悲しそうな辛そうな瞳と目が合った。



「シルヴェスト様。ひとまず落ち着いてください」


ハッ。そうだった。ここにはエルがいたんじゃない!

今のあれこれ全部見られてた!?私、変なことしてないよね?


心配になって後方のエルに視線を向ければ、呆れ顔をしながら、大きな溜め息をついていた。

はぁ!?ちょっと、その反応酷くない!?

食って掛かろうとしたら、目の前のシルに視線を塞がれるように抱きつかれた。しかもしっかりめに。


「ふぇっ。シ、シル!?」

「アンジュ……お願いだから私を見て。私には貴女しかいないんだ」

「ちょ、待っ……く、くるし……っ」


その後エルが強引に間に割って入り引き離すと、ひとまず皆一緒に応接間に移動することになった。

そこで改めてちゃんと話をしようということになり、ユリにお茶の準備をして貰う為その場を離れた。……ヴェスターのことは今はまだ内緒だ。シルは果たしてどこまで知っているんだろう。





──この状況に混乱していた私は、二人の間に見えない火花が散っていることなど気付きもしなかった。




次回から視点が切り替わります。


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