表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

〈A Nation of Freedom and obedient knights〉4

不意に緩んだ(ほお)を、昔時は咳払(せきばら)いで誤魔化 (ごまか)し、緊張で体がガチガチの秘書官を一旦落ち着かせる。

彼女が落ち着いたのを確認してから、昔時は本題に移る。


「え〜っと…君、今の時間を把握(はあく)しているか?」

「はい。承知(しょうち)していますが……それが、どうかされましたか?。」


落ち着きを取り戻した秘書官の声は、ついさっきまであった震えが無くなり、とても従順で純粋無垢(じゅんすいむく)な部下…という印象に変わっていた。

そんな彼女の“まっすぐな”視線を見据(みすえ)えて、昔時は彼女に帰るよう(すす)めた。


「その……そろそろ帰らなくて大丈夫なのかとね……。」

「私は大丈夫です。……早く帰る理由もありません

から。」


だが、言わずもがな、彼女はそれをキッパリと断った。

まぁ、新人でもない限り、山積みの書類を前にして上司が帰らず自分だけ帰るなど、この国では

決してありえない。


「いや、だけど君、目……」

「私は(いた)って普通ですので……ご心配なさらず。」

「いや、だから半目で言われても信憑性(しんぴょうせい)がね……」


…でも、今回ばかりは見ていられないと、俺が……いや、誰が見たって思うだろう。

何せ、話しているにもかかわらず、段々とその目蓋(まぶた)が閉じられていくのだから。

正直、(すで)にその思考が半分、夢の中へ飛んでいる状態かもしれない。

当然、それを昔時が指摘(してき)したところで、彼女の気が変わるなど、ある訳がないが……


「たとえ半目でも、私には問題が無いんです。」

「君にとって問題が無くても、見ているこっちが心配で、作業に集中できなくなるんだ。」

「ですが……。」


それからかれこれ数十分を(つい)やして、昔時は何とか説得することが出来た。

だが、納得したはずの秘書官は、(いま)だ不満そうに少し頬を(ふく)らませている。

理解はしているけど、まだ納得は出来てない。

そういう(ふう)な顔でこちらをチラチラと見てくる。


「君には俺が不在(ふざい)の間に、沢山苦労を()けただろう?。そのお礼程度(ていど)でいいから、今回は大人(おとな)しく帰ってくれ。」

「むぅ……わかりました。」


そんな彼女の頭を、昔時は優しく()でてやり、お礼程度に…と言って改めて納得させる。

すると、彼女もようやく折れたようだ。

(かえ)支度(じたく)に」、と(ほの)かに赤い頬を隠して、執務室を後にする。

その姿も、妹の様で(いと)おしい……など考えてはいられない。


「誰かを守りたいなら…まずは自分からだ。」


先程(さきほど)とは打って変わり、暗く、静かになった執務室で、昔時はそう(つぶや)くと、残った山積みの書類との格闘を再開した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ