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〈A Nation of Freedom and obedient knights〉3

まだ妻子も……ましてや恋人も持ったことのない昔時に彼女の誘惑は刺激が強いという、ただそれだけだが……。

まぁそれはさておき、昔時は色々な理由から彼女を極力避けているのだ。

それに勘付いているのかいないのか、必要な時以外は彼女も昔時には絡みにこない。

だが……


「ね〜え〜。無視は良くないと思うな〜?。」


なぜか今日は会議が終わるや否や、まるでズボンの裾につくひっつき虫のように執拗に絡んできた。年上とは感じれない(ゆる)い声で、ネイロードは昔時を誘いながら、逃げられないようしれっと昔時の服の裾を摘んでいる。

このままでは(らち)が明かない。

そう思った昔時は、ようやくその口を開く。


「……何用(なによう)ですか?。こっちも急いでるので、できるだけ手短にお願いします。」

「え〜、ゆっくり話したかったんだけどな〜……まぁ、いいよ。すぐ終わるから。」


昔時の要求に渋々答えたネイロードは、なにやら神妙な面持(おもも)ちで昔時を見つめ、本題を投げ掛ける。

そして、それを聞いた昔時は、彼女の話に乗ったことを酷く後悔した。


「貴方には今のコウガがどう見える?。私が…何を考えてると思う?。」

「…………。」


あぁ……だから聞きたくなかったんだ。

わかってる、わかってるんだ……今のコウガのことも、彼女がこれを聞く意図も。

だけど、いや…だからこそ俺はそれを考えたくなかった。

あまりにも長い間に耐えかねたのか、ネイロードが質問に質問を重ねる。


「ねぇ、私たちは何のために戦ってるの?。どうして彼らを潰す以外に方法がないの?。ねぇ……答えてよ……。」

「そんなことを考える暇なんてありません。それに、我々はコウガの守護騎士でしょう?。なら祖国を守るのは当たり前のことです。」

「それはバロールがいつも言ってることと変わらない。私は貴方の気持ちが聞きたいの。」


深掘りしたくない…とわかりやすく事務的な返答をしたが、それでも彼女は執拗(しつよう)に答えを求めてくる。

今日という今日は、何としてでも俺の真意を聞き出したいらしい。

…ったく面倒くさい……その口を二度と開けなくしてやりたい。


「俺の意見?。それならさっき説明しました。それが全てで、十三神団の総意なんです。」

「で、でも!……」

「とにかく!!、俺にはわかりません。コウガのことも、貴方がこれを話す意図も、何もかも……。」


しつこいネイロードに昔時は声を荒げて、この話を強制的に終える。

昔時の、“この話はもう終わりだ“と突き放すような言葉選びに、ネイロードはとても悲しそうな顔をしていた。

昔時はバツが悪そうに顔を(ゆが)め、その場から離れていく。

あぁ〜クソッ、後味の悪い……これだから嫌になるんだ。

身勝手なコウガも、盲目な十三神団も……それに、クソッタレな人間どもも……。

みんなみんな、この世から消えちまえばいいのに……。



昔時が気付いた頃には、日も落ち、時計の針が十一時に差し掛かっていた。

だが彼の目の前には終わりの見えない書類の山が残っている。

久しぶりの召集だったがために書類が溜まるは理解できるが、流石に秘書官を動員してフル回転にしてもこれは……っと昔時は内心ぼやく。

定時を過ぎても、手伝いを続けてくれていた女性秘書官は、流石に疲れてか書類を見る目がみるみる細まっていた。

せめて、限界を超えてしまう前に帰らせようと、焦点の合わない目を擦って秘書官の肩を叩き、起こしてやる。

すると秘書官がビクッと肩を振るわせて、閉じかけの(まぶた)から澄んだ翡翠色の瞳を覗かせた。


「…秘書官?。」

「…ん、あっ、はい!。な、なな何で、しょうか……。」


自分の状況に気が付いてか、秘書官は少し慌てた様子で身なりを整えている。

そんな姿が妹たちのようで、昔時にはそれがどうしても愛らしかった。

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