〈A Nation of Freedom and obedient knights〉2
二日後…昔時は十三神団本部へ呼び出されたため、さっさと身支度を済ませ屋敷を後にした。
天時と媛時、親族へ最後の挨拶をし、ただひたすらに山を下る。
ただ、一つだけ未練があるとするなら……もう少し、あとほんの少しだけでもいいから、天時たちの側に居てやりたかったと、…それだけだろう。
東岸にある十三神団本部は、元は王室の別荘であった。
そのため内装は華やかな装飾が施され、そこら中に散りばめられた金が輝いている。
だが、その華やかな姿とは裏腹に、重苦しい雰囲気を醸し出していた。
「…………。」
「…………。」
昔時が大扉を開けて真っ先にその目に映ったのは、階段の踊り場で壁に背を預けた、普通の人間より、一回り程大きそうな大男。
昔時に気付いた大男が、昔時を片目で捉えながら口を開く。
「…遅かったな。何処で道草を食ってた?。」
「…別に。ただ家族に時間を割いただけだ。」
彼の名はバロール・マーフィー、今どき珍しい人間と壊滅した魔族のハーフだ。
特に魔王幹部の血を持つ彼は、魔族特有の大柄な体格以外にも、様々な特殊能力を持つため、彼の持つ大剣を模した魔法器「炎剣」でさえちっぽけに見えてしまう。
このように戦場では頼もしい騎士だが、昔時はどうも彼と打ち解けることが出来ない。なぜなら……
「フン。家族か……そうか。」
「……何か?。」
「いや、……随分余裕なものだな、と…。」
「…………。」
こうプライベートな話では、なぜか上から目線の話し方をされるからだ。
それは普通の人間よりも200年も長く生きているからか、はたまたプライドから来るただの嫌味か……。
だが、戦場を共にすることが多い昔時からすると、仲良くしたい相手ではある。
「まぁ、いい。……会議室だ、さっさと来い。」
バロールはそれだけいうと暗い廊下に消えていった。
昔時はその様子を見守った後、今日もバロールとどう接すればいいかと頭を悩ませ、自分も会議室へ行くために歩みを進めた。
……会議はというと、いつも通りだった。
12人の騎士達が、「今年は何個の反乱組織を破壊した。」だの「最近こんな実力者を打ち負かした」だの、無益な実績披露が行われるだけ。
後は今後の行動方針と各々の派遣先を伝えられるだけだった。
世界最強の組織といえど所詮は無能な人間たちの集団という、それだけだ。
……昔時はそういうのを心底嫌っている。
そして、昔時がその次に嫌いなのが…
「ねぇ、ちゃんと聞いてるの?。昔時く〜ん?。」
今隣を歩く女性騎手、ネイロード・リフティミアだ。
大農主たるリフティミア家のご令嬢で、闇夜を司る魔法器「月扇」の所有者となっている。
騎士らしからぬ圧倒的プロポーションを持ち、コウガ王国軍の中でも知名度の高い人気者だが、それゆえに昔時は彼女をあまり好いてないのだ。