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「まぁ、何にしても私は気分がいい。思いがけず照れ屋な婚約者から大きな愛を貰ったからね。取り敢えず君たちには謹慎が必要だと思うから、この会場からご退出願おう。今後の事はまた追って沙汰する。それでいいですよね?陛下」


俺は父上を見る。


「はぁ…。アレクシス、お前に任せる」


父上は呆れたような顔をして、今回の騒動の対処を俺に任せた。

まさか、エストワールがここまで愚かだとは思っていなかったんだろうな。


「御意。では騎士団の皆さん、よろしくお願いします。そうそう、ヴァーベナ男爵令嬢。君のやったことは全て影が見ていたよ?」

「えっ!?」


俺から声を掛けられたヴァーベナ男爵令嬢(ヒロイン)が俺を見て、顔を赤くしてから青くなる。器用だな。


「私はものすご〜く婚約者を溺愛しているんだ。しかし学園は卒業済だし、公務もあるからね。心配性の私が、あんなに可愛いクロエを無防備な状態で学園に置くわけナイでしょ?」

「ヒィッッ!!」


ニッコリ笑ったつもりが怯えさせてしまった。

解せぬ…。

彼女は騎士団に連れて行かれる際に、「闇落ちアレクシス怖っ!けど尊い…」と言っていた。

失礼な!俺は闇落ちしてないんですけど!!

ロイドが何かを目で訴えてくる。目線を追うと、そこにはお怒りのクロエがいた。


「殿下、先程の話で気になる発言がありましたわ」


こめかみをピクピクさせながら、ニッコリとそう言われる。

ヤバイ!なんかめっちゃ怒ってる!!


「えっ!!俺、何か変なコト言った?」


テンパり過ぎて一人称も『俺』になってしまう。

えっ!クロエに嫌われたらどうしよう…。


「ええ、仰いましたわ。『影』という言葉と『私を無防備な状態で学園に置くわけナイ』と…」


ヤバっ!!ストーカーしてた事、気付かれた?


「殿下。私に王家の影をつけて見張らせてましたわね?」

「ごめん!クロエ!悪気は無いんだ!お願い許して!!嫌いにならないで!!」


もう必死ですよ。王子という立場なんてどうでもいい!

とにかくクロエに嫌われたくない!

誠心誠意、謝罪するしかない!

なんなら土下座してもいい。この世界で通用するかわからないけど…。


「そうならそうと早くに仰ってください!お陰で気の緩んだ学生生活を見られてたと思うと、顔から火が出そうです」


大きなため息をつきながらも、クロエは許してくれそうだ。

ストーカーしてた俺になんて寛大なんだ!


「それに、殿下の婚約者なんですから素行を調べられるのは当然ですよね?私ったらうっかりしていましたわ…。発表されていないから、すっかりそのことを失念していて…」

「いや、違うよ!」

「?」


クロエが不思議そうにする。

違うんだ。本当の理由はそうじゃないんだ…。


「クロエ、入学してから色んな人に呼び出されていたよね?」

「そうだったかしら?覚えてませんわ」

「してたんだよ。男にも女にも…。私は気が気じゃなかった…。男に呼び出された時は、ソイツの事を好きになったらどうしようと思ったり、女の子に呼び出された時は、クロエが可愛すぎて嫉妬され、傷つけられたらどうしよう…と思っていたんだ」

「殿下…」

「私達の婚約は発表されてなかったから、あの時の私は表立って君を守る事もできなかった。婚約者として不甲斐ないけどね…」

「殿下、そんな事ありませんわ」

「それに…」

「それに?」

「私は男女関係なく、クロエに関わる全ての人に嫉妬していたんだ」

「嫉妬、ですか…」


クロエが赤くなる。


「あぁ。私はいつでもクロエの一番でいたいからね。クロエが私以外の人に心動かされないように見張っていたんだよ。こんなに心が狭い男でごめん…。でも君を手放したくなかったんだ!」


勢いで言ってしまった…。

こんな俺、気持ち悪いよね…。

自己嫌悪で俯いていると、クロエがそっと手を握ってくる。


「お気持ちはよくわかりました。要は、私をすごく心配してくださっていたんですよね?」

「クロエ?」

「こんなに愛されていて嬉しいです。…いつも守ってくれてありがとう、アレク」


最後の方は小さい声だったが、俺にはバッチリ聞こえた。

嬉しくなって思わずクロエを抱きしめた。


「で、殿下!みんなが見てます!!」

「見せつけてやればいい。俺は絶対にクロエを逃さないからね」


そう耳元で囁き、そのまま耳に小さくキスをする。

クロエは茹でダコのように真っ赤になった。

そんな様子を見て、俺は妖艶に微笑んだ。

クロエから「アレクもお兄様に負けないくらいエロい」と恨み言のようなものが聞こえたが気にしない。


「皆の者!場を乱してしまいすまない。騒動の原因には無事、ご退出いただいた!今日、この佳き日のパーティーを再開させようではないか!!」


俺はそう叫ぶと、楽団に音楽を奏でるように合図した。

そしてクロエに向き直る。


「踊っていただけますか?マイハニー」


俺は先程の雰囲気を消し、おどけてクロエをダンスに誘う。


「ダーリン、喜んで」


クロエも気持ちを切り替え、調子を合わせてくれた。


クロエの手を取り、ダンスフロアに躍り出る。

ステップを踏みながらさっきまでの場の雰囲気を塗り替えていく。

俺たちの息の合ったダンスに万雷の拍手が鳴り響いた。

そしてその後、続々とフロアに人々が躍り出る。

それを見ながらクロエが、


「アレク、私ばかりドキドキして悔しいわ。私もあなたをドキドキさせたい」


と上目遣いで言ってくる。

可愛すぎて、今この瞬間に俺はドキドキしてるんだが…。

だがここは、大人の余裕を見せつける。


「どんな事をしてくれるのかな?楽しみだ」


と言うと、


「そうねぇ…。じゃあ王族領の鉱山を、私の私的財産として貰えないかしら?」


と、別の意味でドキドキする事を言ってきた…。

まったくクロエには敵わない。


でも、そんな君を一生愛すると誓うよ。

だから君も俺を一生愛して…。


【了】

これにて本編終了です。

アレクシス達を見守ってくださり、ありがとうございました!


この後は、後日談をいくつか投稿予定です。

良ければお付き合いくださいm(_ _)m

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