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「そういえばアレクシス殿下、これ頼まれてたものです」
そう言ってヨハンが箱に入った物を差し出してきた。
俺は中身を確かめる。
「ありがとうヨハン!思ってた以上だよ」
「その加工、だいぶ大変だったみたいですが職人たちが色めき立ってましたよ。何とか商業化できないでしょうか?」
「うーん…、難しいと思うよ。まだ全然産出されないし」
「そうですか…。でも、メドが立ったら教えて下さい!絶対に利益出しますから!!」
ヨハンの商人魂に火を点けてしまったようだ。
「殿下、その箱は何です?」
「これ?クロエへのサプライズプレゼント」
「中身は?」
「それは教えられないなぁ。クロエが喜ぶモノだと言うことは間違いない」
「あぁ、察しました」
ロイド、面白くないヤツめ。
「何ですかソレ!全然わかんない!」
クリストフ、可愛いヤツめ。
「まぁ、サプライズプレゼントだからあんまり深く詮索しないでね。万が一バレたら、サプライズ感が無くなっちゃうから…。俺、ガッカリし過ぎて何するかわからないし…」
「はい!!もうその箱の事は忘れます!!!」
クリストフが震えながら、答える。
グッボーイ、クリストフ。
こうしてその日は解散となったが、暫くして俺はロイドに呼び出される。
「アレクシス殿下…。ちょっとついてきてくれませんか?」
「えっ?どこに?」
「学園です」
「嫌だよ。何で?」
「この前、力になってくれるって言ってただろう!俺の婚約破棄がかかっているんだぞ!」
「どういう事だよ!」
えっ? いつの間にそんな危機に。
最初しおらしかったのに、急に逆ギレしてきた…。
余裕ないのか?
っていうか、昔と比べるとどんどん容赦なくなってきたな。
俺、一応王子なんだけど…。
「この前のアドバイス通り、デビュタントのドレスや宝石類を送ったり、茶会で自分の気持ちを伝えてみたりしたんだ…。デートはまだ言い出せないけど…」
「それで?」
「これだけでは全然ダメだということを、クロエと父上に昨日気付かされた…」
「気付くの遅くない?」
俺は呆れてものも言えない。
「どうしよう、アレク…」
そんな子犬のような目で見るなよ…。
「わかったよ!それでどうする気なんだ?」
「この髪飾りを渡して、俺を好きになってほしいと伝えようと思う!」
「違う!!」
俺はロイドの頭をチョップした。
「好きになってほしいじゃなくて、まずはお前が好きだと伝えろ!どんだけ上から目線なんだよ」
「そういうものなのか?俺に好意を向けてくる令嬢たちはみんな『ロイド様、私を好きになって。私だけを見て』と言ってくるぞ」
「それ聞いて、お前はどう思うんだよ」
「うんざりする。俺の気持ちをお前にコントロールされてたまるか、と思う」
「そういう事だよ!」
なんでそんな、目からウロコみたいな顔してんの?
恋愛の初歩じゃない?モテすぎるとこうなるのか?
嫌だ、イケメン…。
「では、好きだと伝えればいいんだな?」
「ちょっと待て。お前、スカーレット嬢に『好き』だと伝えてないのか?さっき自分の気持ちを伝えたって言ってなかったか?」
「共に歩む関係になりたいという気持ちは伝えたぞ」
言ってないのかよ〜!!
俺は項垂れる。
「どうしたんだ?」
「どうしたも、こうしたもない!根本が間違ってる!ダメダメだ!!」
ロイドがショックを受けている。
でも、はっきり言わないとわからないだろう。
「いいか!お前のやるミッションは2つだけだ!
一つ、プレゼントを渡す!
二つ、好きだと伝える!
以上だ!!」
「イエッサー!!」
「では、学園に行くぞ!」
「イエッサー!!」
そうして、俺とロイドは学園へと向かった。
ロイドが学園前でスカーレット嬢を待つ。
俺は少し離れた所で見守っていた。
ロイド、ニヤついてるなぁ~と思っていたらクロエがやって来た。
ラッキー!!
でも、俺に気付いてないようだ。
ロイドに何か話し掛けようとしている。
何だろう?
そう思いそっと近づいてみた。
「…お兄様」
「あぁ、クロエか」
「その、無駄なフェロモンを止めてくださる?攻撃力が高すぎなのよ」
「えっ!??」
「無自覚とか…。これならまだ、意識してやっている殿下の方がマシね」
えっ?クロエが俺の事を話題に出してくれてるの?
超嬉しい…。
そう思ったら、俺はクロエに話し掛けていた。
「私が、何だって?」
「殿下!!何故ここに!!」
「クロエに会うのに理由なんていらないだろう。愛しい私の妖精姫」
そう言ってクロエの髪を一房すくい、キスを落とす。
赤くなっちゃって可愛いなぁ。
ダメだよ、クロエ。
そんな顔を見せるのは俺だけにしてくれないと。
周りの男たちには勿体なさ過ぎる…。
俺は、クロエに視線を寄越す男子生徒を逐一チェックした。
俺の女で良からぬ事を考えるヤツには制裁を与えないとね。
そうやって周りを警戒していたら、前方から見知った顔が歩いてくる。
「おや?向こうから来るのは、ロイドの愛しのスカーレット嬢…とキルケニー侯爵家の嫡男か」
「何っ!!」
何だか一波乱起きそうな気がする…。
読んでいただき、ありがとうございますm(__)m




