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今、ヒロインは自由恋愛布教活動に夢中だ。編入した当初から王弟の件を引き合いに出し、政略結婚について異を唱える。
最終学年にあがる頃には、一大派閥を作っていた。
日本人の感覚的には「勝手にやってれば」という感じで放置だが、この国の王族としては見過ごせない。
政略結婚ナメんなよ!
婚姻関係で国の産業が発展したり、他国と和平を結ぶことだってできるんだぞ!!
あまりに目に余るようなら、粛清しないといけないかな?
俺は、目の前で行われる発表にそんな事を考えていた。
そう、今日は自由科目の発表日だ。
秋試験、最大のイベントである。
国内が注目するイベントということもあり、来賓として俺も呼ばれている。
みんな、中々に面白い研究成果を発表してくれていて、この国の未来が明るい事を感じられた。
クロエは思った通り、鉱石についての研究発表を行っていた。
国の地質学者が齧り付くように聞き入っており、積極的に質問をしてる。クロエも活き活きと受け答えしていて、俺的には大変おもしろくない…。
ロイドには狭量だと言われたが、こればっかりは仕方がない。
クロエが他の男と楽しそうにしている姿なんか見たくないんだから。
クロエには、俺の事だけ考えていて欲しい…。
ヒロインは、「自由恋愛についての幸福度」なる発表を行っている。宗教的観点やQOLを取り上げているが、そんなのは個人の主観であると思う。
政略結婚でも、お互いを思い遣る気持ちがあれば幸福度は上がるだろうし、愛し合って結婚しても気持ちが冷めればおしまいだ。
「恋愛」なんて、誰かが定義付けられるものではない。
それぞれのカタチがあり、個人の可能性と同じく無限に拡がっていくものだ。
まぁ、犯罪に抵触しない限りは、だけどね。
でも、この考えも俺の主観か…。
一部から称賛される理由もわからず、俺は発表を聞き流していた。
全ての発表が終わり、俺から発表者へ労いの言葉をかける。
みんなキラキラした目で見てくるな。
ちょっとハズいが、これも王族の務め。
王子スマイル全開で応える。
みんなこれからもこの国をより良くしていってほしい!
俺も頑張るから!
改めて国のトップに立つという事を身に沁みて感じた。
発表の後、学園長に呼ばれたため学園長室に向かう。
本当はクロエを構い倒しに行きたかったが、これも大人の付き合いだ。隣のロイドも同じ様子だった。
考え事をしていたせいか、角を曲がった所で、誰かとぶつかる。
「すまない!よそ見をしていた」
「い、いえ。こちらこそすみません。」
そう言って顔あげたのは、零れ落ちそうな大きな琥珀色の瞳が印象的な、小柄なピンクブロンドの女生徒だった。
瞳は、垂れ目がちで庇護欲をそそる。
心なしか花のような香りもした。
俺たちは暫く見つめ合った。
………。
ヒロインだ…。
俺は、コイツがクロエを害する女か!と殺気立ってしまう。
「アレクシス殿下」
と、ロイドに声を掛けられ我に返った。
「ア、アレクシス殿下とは知らず、申し訳ございませんでした!!」
「いや、それより怪我はないかい?」
「だ、大丈夫です!私ったら、そそっかしくて…」
顔を赤くしながらヒロインが答える。
「あ、あの!アレクシス殿下の弟さんのエストワール殿下とは仲良くさせてもらっています!私は…」
「失礼。殿下は学園長に呼ばれています。時間が無いことをご配慮頂きたい」
ロイドが割って入る。
「わ、わたしったら、すみません!お忙しいですよね!」
「では、失礼するよ」
そう言ってその場から去る。
誰がお前の自己紹介なんか聞くもんか!!
断固、拒否だ!拒否!
ロイドもスカーレット嬢を陥れる危険人物として認識しているため、塩対応だ。心なしか、怒りオーラを感じる…。
だが、何故あの女はココにいたんだ?
俺たちがここを通る事がわかっていたのか?
発表後の生徒たちは、みんな解放感からお祭り騒ぎで街に繰り出したりしているのに…。
これもシナリオ強制力か?
だが、1作目の四季恋には俺たちは出ていない…。
謎が深まるヒロインとの邂逅だった…。
次回、ヒロイン目線です。