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俺は影に学園の成績表を盗み見てきてもらった。
それによると、ヒロインは上々な成績をとっているようだ。
科目は全部で10科目ある。
国語、数学、歴史、地理、外国語、マナー、教養、ダンス、護身術・剣術と自由科目だ。
護身術・剣術は、どちらを選択してもいい。ただ、通常は女性が護身術、男性が剣術を選択することが多い。
もちろん、スカーレット嬢は剣術を選んでいたが…。
意外な事にヒロインも剣術を選んでいた。
ダニエルルート攻略のためか…。
自由科目は3年間の自由研究みたいなものだ。各々が一つのテーマを決め、自分の決めた課題の成果を報告する。年度終了時に経過報告をしていき、3年次の秋試験に結果報告をする。完結できない場合もあり、そこから新しい道を切り拓く者もいる。ここから色々な技術や流行などが生まれているため、国内でも注目度の高いイベントになっていた。
「ヒロインが特に苦手としている科目は…っと」
俺は成績を見ていった。それによると、マナー、教養、剣術、自由科目が少し能力的に劣るようだ。自由科目は2年次に編入してきたから仕方がないとして、それ以外はクロエやスカーレット嬢には全然及ばない。これらの科目の成長を阻害してやろう。それにはクロエとスカーレット嬢の強化が必要だ。
俺はロイドを呼ぶ。
「ロイド!スカーレット嬢と剣術稽古しろ」
「いきなりだな…」
「デートの口実を作ってやったんだ。感謝してほしいな」
「いや、でもスカーレット嬢には必要ないと思うが…」
「それはわかってる。だが万一の事もあるからな!」
シナリオ補正とか…。
「アレクが何を考えているかわからないが、スカーレット嬢と会える機会をくれるなら有難く頂戴するよ」
そう言って、ロイドはスキップしそうな勢いで部屋を出ていった。次はクロエの強化だな。
――――ウィラー公爵邸
「やぁ、クロエ」
「アレクシス殿下!」
「学園から帰ってきたばかりの所、申し訳ないね。お邪魔しているよ」
「お兄様にご用ですか?それならすぐに呼んで参ります」
そう言ってすぐに部屋を出ていこうとするので引き止める。
「違うよ。クロエに用があったの。それにロイドはスカーレット嬢とデートだよ。だから私もクロエとデートしたくなって…。先触れも出さずに訪問してゴメンね」
そう言って申し訳無さそうにする。
こう言えばクロエも断るまい…。
最近、公務続きでクロエ不足だったからな。今日は是非とも補給させてもらおう!
勉強にもなり、クロエにも会える!一石二鳥だな。
「殿下。嘘はダメですよ」
「えっ?」
「あのお兄様がレティをデートに誘えるわけがないじゃないですか!殿下の差し金でしょう?」
「…。何でわかったの?」
「わかりますよ!お兄様はレティと会うと、マトモな会話すらできないんですから!」
「嘘だろ…。そんな、まさかロイドが…」
「そのまさか、です。お兄様はどうにも好きな相手には奥手になってしまうみたいで…。せっかくレティが家に来ても、二人でただ黙って時間を潰していますよ」
呆れたようにクロエが言う。
マジかよ…。
あの女性にソツがなさそうな、チートイケメンが?
纏うフェロモンと美声で女性を腰砕けにするあのロイドが!?
「なんか気の毒になってきた…」
俺はてっきり、元々、領地が遠くて交流できないから進展していないのかと思っていた。そのため、学園に入ってからは順調な交際をしているものだと思っていたが…、違ったのか。
「それ、スカーレット嬢は何とも思っていないの?」
「えぇ、私も気になって聞いてみたのですが…その、どうもレティもそっち方面は疎いようでして…」
「えっ?まさかの似た者同士?」
「というよりお子ちゃまですわね。好感は持っているのだと思うのですが…、どうもレティは、自分が護衛として選ばれたと思っているみたいです。お兄様の熱視線に、全く気づいていないんですよ」
「スカーレット嬢の攻略難易度高っ…。ロイドをもってしても落とせないなんて…」
「それとなくフォローさせていただきますわ。次代の公爵家のためにも」
「よろしくお願いするよ、クロエ」
とんでもない誤算だった。
まさか完璧ロイドが恋愛オンチだったなんて…。
クロエだけに任せるのも悪いから、俺もフォロー頑張ろう!
これも側近にいい仕事してもらうためだ!
そう決意を新たにしていると、クロエから声が掛かる。
「…ところで殿下、どこに連れていってくださるのですか?」
そう言って赤くなりながら聞いてくる。
あ~~~もーー!!何でこんなに可愛いかなぁ!!!
今すぐにでも結婚したいんですけど!!
絶対に断罪劇になんて巻き込ませないから!!
クロエは絶対に俺が守る!!
そう、改めて心に固く誓った。




