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いつもありがとうございます!

俺はレオ王子の留学の話が出る前に、ティーダ国に友好目的で留学生を送る事にした。昔の知識を何とかひっぱり出し、レオ王子好みの女性を見繕ったのである。


選ばれたのは、アビゲイル・キマリエ公爵令嬢、17歳。

法務大臣のキマリエ公爵の娘である。

レオ王子と同い年で高位令嬢、勝ち気な性格だがちょっと打たれ弱い。いわゆるツンデレちゃんだ。

レオ王子は、自身の身分に物怖じせずどんどん意見を言ってくる娘を好む。また、甘やかしたい気持ちも同時に備えているため、ちょっと弱い所を見せればイチコロだ。

そのため、まさにアビゲイル嬢はうってつけなのだ。


キマリエ公爵はすんなり承諾してくれたが、本人は隣国へ行くのを嫌がっていた。娘に甘々な公爵に頼んでいたらラチがあかないので、奥の手である王命を使ってみた。

さすが強権、効果はバツグンだ!

まだ俺自身では発令できないため、父上に頼んだんだけどね。


アビゲイル嬢が隣国行きを嫌がったのには理由がある。

彼女はロイドのことが好きなのだ。ロイドに実は婚約者がいる事を知らない彼女は、自分こそがロイドに相応しいと思っている。学園卒業済で、公爵子息という高位の身分を持つロイドと交流を持つ事は普通の令嬢には難しいが、そこは公爵家同士の交流と称して何度かプライベートで会っているらしい。そのため、1年間もロイドに会えないのは身を切る思いなんだそうだ。


父親のキマリエ公爵はロイドとスカーレット嬢の婚約を知っているため、傷付く前に娘の恋を諦めさせたいらしい。

隣国行きを承諾してくれたのも、環境が変わり新しい人間関係が築ければ、新しい恋も生まれると思っての事のようだ。

アビゲイル嬢には、ぜひともレオ王子を攻略してきてもらいたい!


ただ、念には念を入れてあらゆる可能性を潰していこう。


「エストワール、ちょっといいかな?」

「は、はい!兄上。どうしたのですか?」

「クロエは渡さないからね。私は彼女を愛してるから」

「えっ?」

「それだけ。忙しい所、邪魔して悪かったね」

「は、はい…」


これでヨシっ!ちゃんと愛してるって伝えたし、渡さないぞと牽制もした。エストワール、考え込んでいるな。これで諦めてくれるだろう。


さて、俺は次の可能性を潰しに行こう。



―――エストワール


俺はエストワール。この国の第二王子だ!

金髪碧眼の端麗な容姿、勉学、剣術においても王族として申し分ない。完璧な俺様だが、第二王子として生を受けたため、将来は第一王子である兄上の補佐をすることが決まっている。


昔は、優しいだけの兄上を追い落として俺が王太子の席に座ろうと思っていた。

今思えば、浅はかとしか言いようがない。

兄上はいつの頃からか、変わられた。

俺や母上、妹のアナスタシアにはいつも通り優しいが、父上に対する態度が厳しすぎる…。母上に尋ねたところ、


「反抗期かしら?」


と言っていた。母上がそう言うのならそうなのだろう。


ある時、兄上が剣術稽古に誘ってくれた。

ちょうど婚約者のクロエの態度にむしゃくしゃしていたので、ストレス発散のためにも俺は二つ返事で承諾した。


結果、地獄を見ることになる…。

剣筋が見えない…。力と体力がバケモノ…。

あの細腕からどうやって攻撃が出されているのか全くわからない!!

両腕で剣を持ち、防御するだけでいっぱいいっぱいだ。

必死に耐えていると、今度は蹴り飛ばされる。

だが、後ろに倒れる前にまた蹴られる。

元の位置に戻った所でまた剣を振り下ろされる…。

兄上、瞬間移動使えるの!?と一瞬思ってしまった…。

もう、降参したいのに息が切れて何も言葉を発せない。体力の限界が近づき倒れる寸前、兄上から殺気が飛んできた。

「死ね!」と言いながら、両腕で渾身の一撃を繰り出してくる。

刃を潰した練習用の剣とはいえ、死を覚悟した瞬間、目の前に誰かがいた…。

よく目を凝らすと、兄上の側近のロイドが片腕で兄上の剣を受け止めていた。

激しい衝突によりそれぞれの剣が折れ、練習場にカラーンと音が響いた。


「殿下、やり過ぎです」

「あ〜〜ごめん…。つい夢中になっちゃって」


夢中!?そんなノリ??

殺す気だったじゃん!俺が呆然としていると、とんでもない会話が耳に飛び込んでくる。


「でも、やっぱりロイドは強いね〜。俺の渾身の一撃が片腕で弾かれた…」


やっぱり渾身の一撃だった!殺す気だった!!


「まぁでも剣も折れましたし、相討ちですよ。これがミレン兄弟ならこちらの剣だけ折って、追撃してきますから」

「ヨハンとなら五分五分なんだけどなぁ…。まだまだ精進が足りないってことか…。明日、イスタークにまた稽古つけてもらおう」

「公務もあるので程々にしてくださいね」

「わかってるよ。エストワールもすまなかったね。でも、兄相手に遠慮しなくて良かったのに。また今度、稽古しようね」


そう言って微笑んだ兄上の目は笑っていなかった…。


っていうかもう二度とやりませんから!!

兄上の側近たちって何者だよ!!ミレン兄弟は別として、ロイドもヨハンも全然武闘派じゃないのに!!ヨハンなんて髪の毛ふわふわの小動物みたいな男じゃん!兄上と互角なくらい強いの!?嘘でしょ!!


俺は青くなりながら兄上たちを見送った。何か声を掛けられた気がしたが、恐怖が勝り、まともに取り合えなかった。

そして、自分と自分の側近たちが、如何(いか)に兄上たちの足元にも及ばないのかを思い知ったのである。


そんな兄上が、暫くしたらまた声を掛けてきた。


「クロエは渡さないからね。私は彼女を愛してるから」


それだけ伝えると兄上は去っていった。何の事かさっぱりわからない…。クロエは俺の婚約者で、兄上は隣国のマウラ姫と婚約していた筈だ。リリアが言っていた。


リリアは他の誰にも打ち明けていない俺の悩みもピタリと当て、俺の気持ちに寄り添ってくれる素晴らしい女性だ。リリアが間違った事を言うワケがない!

……そうか!分かったぞ!!

クロエのヤツが俺の気を引きたくて、兄上に何か言ったんだな。俺は絶対にそんな事に惑わされるもんか!!

クロエには身を持って知ってもらおう。

お前を愛する事はない!という事をな!!



アレクシスの想いは伝わらず(笑)


【小話】

エ)兄上たちで誰が一番強いんですか?

ア)総合的には圧倒的にイスタークだね。特に近接は最強だよ。ただ皆、得意な間合いがあってね。クリストフは遠・近、銃の扱いが上手いね。ロイドは中・近、槍術が得意だよ。私は遠・中・近、バランス良くかな?

エ)ヨハンは?

ア)ヨハンさんな。近・暗だな。

エ)暗?

ア)暗殺。ヨハンの家は商売やってるし、色々な薬が手に入るんだよ。王家の影はヨハンの軍門に下ってるよ。

エ)!!!

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