10
その後も順調に交流を続けていき、クロエとはかなり仲良くなれたと思う。忘れられていた事はショックだったが、また一から関係を積み上げていった。
ロイドは全然、進展していないようだったが…。
普段スカーレット嬢は領地にいるため、手紙でのやり取りが主らしい。手紙が来た日のロイドは目に見えて元気だが、手紙を待つ間は沈んでいる。公爵令息らしく表情には出ていないが、俺たち仲間内では見分けがつくほどだ。
クリストフに、
「ロイドも人間らしい所があったんだな」
と言われていた。俺もそう思う。
そんなロイドも最近は元気だ。今年からクロエとスカーレット嬢の高等教育が始まるからだ。
高等教育のための学園は王都にあるため、スカーレット嬢が王都のタウンハウスに越してきたのである。
毎日会える事に想いを馳せ、穏やかに微笑むロイドに、何人の女生徒が保健室送りになったことか…。
チートイケメン恐ろしい…。
もちろん俺も学園で毎日クロエに会える事が楽しみである。
今も定期的に会ってはいるが、学園生活はやっぱりちょっと違うよね!青春って感じがする!!
実はすでに隠れて青春している、イスターク、クリストフ、ヨハンが心の底から羨ましかった!
俺とクロエは秘密の関係だが、構い倒す自信がある!!
そんな自信を感じ取られたのか、クロエから
「殿下。私たちの関係は公表していないので、過度な接触は禁止ですよ」
と釘を刺されてしまった。
これはしょんぼりしてもしょうがないよね?
そのまま管を巻くようにクロエに愚痴ってしまう…。
「私の初恋はクロエだが、クロエの初恋は誰だったの?」
「お兄様です」
即答!!
うん、わかってたさ。想定内。でも悔しいからロイドに意地悪しておこう…。これくらい許されるよね。
そんな事を続けてたら、クロエから待ったがかかった。
「殿下、家族はノーカンなので、まだ誰にも恋していません」
と。あんなにアピールしてたのにまだ足りないのか!
クロエは高い目標を作ってくれる…。
まぁ俄然、やる気が出てきたけど!!
「そっか。それならもっと頑張らないとね」
と言ってにっこり微笑む。
ミレン兄弟と一緒にいるからか、体育会系のノリが若干うつってきた気がするが気にしない!
クロエの一番に絶対なってみせる!!これは譲れない!
こうして、俺はクロエへの愛情表現にブーストをかけるのであった。
入学して数日が経った頃、事件が起きた。
いや、正確には起きまくっていた。
クロエがひっきりなしに呼び出しを受けていたのである。
男子生徒だけではなく、女子生徒からもだ。
俺はひっそりとクロエに王家の影をつけることにした。
未来の王妃に何かあってはいけないからね!
決してやましい気持ちではないから!
個人のプライバシーに立ち入る話はもちろん聞いてないですから!!
…まぁ、ロイドがストーカーを見るような目で見てくるので、スカーレット嬢の情報もたまに流してあげた。
男子生徒からの呼び出しは漏れなく愛の告白だが、女子生徒からの呼び出しはロイドと俺に関する事だった。
対外的には婚約者を決めていない俺たちに近づきたい令嬢が多いこと、多いこと…。
前世では考えられないモテぶりだった。
その全てをクロエは一刀両断のもとねじ伏せていく。
やだ、クロエさんカッコいい!と思ってしまったほどである。
流石は公爵令嬢だ。まぁ筆頭公爵令嬢だから、身分的な上には俺の妹のアナスタシアしかいないんだけどね。
クロエに色目を使った男子生徒は、漏れなく俺のブラックリストに掲載している。
たちが悪い輩には、直接お話もさせていただいた。みんな聞き分けがよくて結構、結構。
結局、男は拳で語るのが一番だよね。
ロイドも含め、側近全員そう言っていた。
こうして俺が在学している間は目を光らせていたが、次の年に異端児が転入してから更なる混乱が訪れた。
影から報告を受けた時には、その非常識さに耳を疑った…。
と、同時に忙しくて忘れていたことを思い出した。
あ、これ乙女ゲームだった。
ヒロインが転入してきた!!
ヒロインは遅れてやって来る…。
遅くなりましたm(_ _)m




