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襲撃再び?

「そこまでだよ! 話は聞かせてもらった。ウィンドルフ側につくというのなら、容赦はできないねぇ!」


 そう突然俺たちに言い放ったかと思うと、赤髪の女がどこからともなくショウタに襲い掛かる。俺も慌てて助けに入ろうとするが、火柱が邪魔になり若干動き出しが遅れてしまった。


「! ……!?」

「モモカ!」


 ショウタの隣にいたモモカが咄嗟にショウタの前に立ち塞がり守ろうとするが、突然膝から崩れ落ちてしまう。


「てめえ、モモカに何した!?」

「モモカちゃん? ふーん、良い名前だねぇ。見たところそのモモカちゃんは魔力をもとに生み出した幻影だろ? だから魔力の流れをちょいと歪めてやっただけさ」


 魔力か。俺はFランク冒険者として2ヶ月ほどこの世界で生きてきたので、その言葉に聞き覚えくらいはあった。


 確か攻撃魔術を得意とする魔術師や、ティムのように治癒魔術に長けた僧侶が魔術を使うために利用するものだったはずだ。転生者であるショウタのジョブにも関係があったのか?


「モモカは幻影なんかじゃねえ! 仕方ねえ、戻れモモカ!」


 ショウタが声を上げると、モモカは最初に姿を現した時の逆再生のように、ショウタの足元の影に潜り込むようにして姿を消した。


「さて。リクとか言ったか。あんた、ウィンドルフ側に――」


 モモカを排除してから一方的に話し始めるその女に対して、ショウタがナイフを振りかざして襲いかかる。


「てめぇ! モモカに好き放題しておいて勝手に話進めてんじゃねーよ!」


 しかし、女がショウタに向かって手をかざしたかと思うと、ショウタは手にしていたナイフを取り落としてしまった。そして、そのまま倒れ込んでしまう。


「うるさいね! 少し眠ってな。あたしはあんたにも、もちろんモモカちゃんにも酷いことをした覚えはないよ。無力化はさせてもらったがね。あたしはこの子と話をしたいんだ」


 確かに言われてみればそうだ。魔力の流れを乱されたというモモカも、立っていられなくなっただけで苦しんでいる様子はなかった。無表情なので恐らくではあるが。


 火柱もちょうど俺たちの間に立っていて、直接俺らを攻撃する気はなかったと言われればそんな気もしてくる。直ちに危害を加えてこないと判断した俺は、とりあえず話を聞いてみることにした。


「分かったよ。俺に用があるのか?」

「そうだよ。とりあえず、場所を変えようか」


 女はそう言って手招きする。歩きながら話をすることになりそうだ。


「さて。あたしはショコラ。『帰還倶楽部』のリーダーをしてるんだ」


 ショコラ? ()()()な名前だ。見た目は30〜40代くらいと言ったところか。赤髪、つまり黒髪ではないということもあり転生者ではなさそうだが、その割に恐ろしく強かったな。


「なんだ? その帰還倶楽部ってのは」

「簡単さ。あたしたちは魔王を倒して元の世界に帰りたいんだよ。だからウィンドルフは敵ってわけ」


 ちょっと待て。ウィンドルフの敵対組織がいたことにも驚きだが、その口ぶりだと……。


「もしかして、ショコラ……さんは転生者なのか? 赤髪だし名前も日本人じゃなさそうに聞こえたが。日本以外から来た人なのか?」


 ショコラ、と呼び捨てにしようとしたあたりで鋭い眼光が飛んできたので慌ててさん付けにした。


「よく言われるけど、あたしは正真正銘日本人だよ。ハーフとかクォーターでもない。佐藤ショコラってんだ。文句あるかい? 髪は染めてるんだ。ちょっとしたオシャレって奴」

「マジか」


 日本人なのか。いや、別に髪を染めている人くらいいくらでもいると思うが、名前は日本人としてはかなり珍しいだろう。


「それで、俺に何の用なんだ?」

「うん? だから最初に言った通りだよ。あんたがウィンドルフ側につくなら容赦しないってね」


 そういえばそんなことを言っていたな。


「俺にその帰還倶楽部とやらに入れと?」

「違うよ。ウィンドルフを追われてる転生者がいるって聞いて、最初は仲間にならないか様子を見にきたんだけどね。聞いてた感じあたしらの仲間にはなりそうもないから、せめて中立でいてもらおうってわけさ」


 なるほど。だが一つ勘違いしているな。


「いや、それなら俺を帰還倶楽部に入れてくれ。ショウタには悪いけど、俺も元の世界に帰りたいんだ」


 俺がそう言うと、ショコラさんは怪訝そうな顔をした。


「うん? 名字がないってことはあんたは記憶がない転生者なんじゃないのかい?」

「? むしろ、ショコラさんは記憶があるのか?」


 転生者はみんな記憶がないんじゃないのか? しかし、言われてみればショコラさんは自分の名字を覚えている。それは俺と違って記憶があるからだと言われれば納得はできるな。


「そうだよ。あたしたち帰還倶楽部のメンバーには地球の記憶がある。理由は分からないけどねぇ。というより、だからこそみんな地球に帰りたいんだ。そこのところ、あんたはどうなんだい?」


 要するに、記憶がないのに地球に未練があるのは何故か聞かれているのだろう。


「俺は格ゲーのキャラの能力が使えるっていうジョブを持ってる。そのせいか格ゲーに関する記憶はある程度あるんだ。まあ具体的な思い出とかはないんだが、格ゲーが楽しかったってことはありありと思い出せてな」


 確かに、こっちの世界で力を使って格ゲーっぽいことをするのは楽しかった。さっきの戦いだってそうだ。でも、この能力でやってることは結局格ゲーなんかじゃないとさっきの戦闘で思い知らされた。


 ショウタと戦った時の俺は実に無様だった。だってそうだろう。『リンブラ』ではできっこないボルケーノショットの波を押しつけ、ジャンプはサマーで狩って勝ち誇った。その上、近接戦闘に持ち込まれればラルフに切り替えて戦った。


 そこまで有利な条件を揃えておいて、結局は完膚なきまでに叩きのめされたのだ。俺は格ゲーですらない力に酔い、溺れていたに過ぎなかった。


 でも、格ゲーは楽しい。この格ゲーもどきな能力を使えば使うほど、忘れていたはずの格ゲーへの思いが溢れて止まらなかった。


「格ゲーの楽しさが思い出せた、ねぇ。ってことは……」

「ああ。俺は地球に戻ってまた格ゲーがしたいんだ」


 俺の思いがショコラさんに通じるかは分からないが、精一杯目と目を合わせて言ってみた。よそ見をしながら歩いたせいで目の前の石に()()()()()


「うわっ」

「ぷっ、あははは。あんたの気持ちは十分わかった。帰還倶楽部に入ってもらう」

「ありがとう、ショコラさん」

「ただし」

「ただし?」


 何か条件でもあるのだろうか。


「あんたは本気で地球に帰りたいんだろ? なら、今のままでいられちゃ困るね。あの程度の子に負けてるようじゃダメだ」

「なんだ、そんなことか。俺は強くならなきゃならない。どんな修行も望むところだ」


 俺が強くなるのは魔王を倒すためだけじゃない。ウィンドルフでお世話になった人に恩を返さなければならないのだ。まずはティムやナンドたちとまたパーティを組んでAランクになれるくらいに強くならなきゃいけない。


「なら、まずはあんたの能力について、分かってることを全部教えてもらうよ」

「ああ」


 *


 俺は時間をかけて、自分の能力についての全てをショコラさんに話した。


「なるほど、レベルが上がらないからこれ以上強くなれないとはねぇ……。あんた、本気で地球に帰りたいと思ってるのかい?」

「え?」

「本気で地球に帰りたい、魔王を倒したいと思ってるならいくらでもできることはあるだろ。甘ったれるんじゃないよ」


 俺が甘ったれている? そんな馬鹿な。いくらでもできることがある? この状態から強くなることができるのか?


「使えるキャラを増やしたり、戦術を練ったりしろってことか?」

「はぁ……。あんた、たった今小手先の技で戦ってボコボコに負けたばかりだろうに」

「それはそうだが……」


 ならどうすればいいのか。俺が悩んでいると、やがて街のようなものが見えてきた。隣国ナイジャンに着いたらしい。


 入国手続きなんかの諸々を済ませると、何やら建物に連れてこられた。


「ここが帰還倶楽部の拠点なのか?」

「違うね。うちには決まった拠点はないし、そもそもあんたはまだうちのメンバーとして認めてない」

「そんな! 帰還倶楽部に入れてくれると言っただろう」

「一度はそう言ったがね! 本気で地球に帰りたいと思ってない奴はうちに必要ないんだ」


 さっきと態度が変わりすぎだろう。レベルが上がらなくて強くなれないという話をしてからずっとこの調子だ。


「それじゃあ、俺にどうしろっていうんだ」

「テストを受けてもらう。あんたが本気で地球に帰りたいと思うなら、必ず乗り越えられるはずだよ」


 テストだと?

「ショコラ」というネーミングについては悩んだのですが、色々と設定もありこのネーミングで行くことにしました。

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