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第5話 混乱

 国連の安保理理事会で決議が取られていたころ、世界中は大騒ぎになっていた。

 理事会で流れた映像が、そのまま世界中のアリとあらゆる通信機器を乗っ取ったからだ。

 当然、市中にいる一般人がその情報に触れることになる。

 たった1分にも満たない宣告。それだけで人類を恐怖のどん底に落とすことは容易であった。

 SNS上では様々な声が上げられ、憶測が憶測を呼ぶ。

 都市部に住んでいる人々は、一斉にスーパーに駆け込み、食料や水などを万引きしていく。街中ではどこもかしこも暴動が発生し、警察はもはやその職務を放棄していた。

 そのような状態は日本でも発生していた。夜中、ベッドに入ってスマホをいじっていた一基も、異星人の宣告を目の当たりにする。


「今時異星人とか、もはや誰も信じてないだろ」


 そんな事を言いながら眠りに着こうとしていた。

 その時である。

 外からスキール音が鳴ったと思うと、家の中に何者かが上がりこんでくる音が聞こえてきた。

 そして階段を駆け上る音がしたかと思うと、一基の部屋の扉が開く。

 そこには、タックスリーダーの世話人がいた。


「一基様、今すぐこの家を出る準備をしてください」

「は?なんでわざわざそんな事しないといけないんだ?」

「事情は車の中でお話します。貴重品や大切なものはお忘れなきように。二度とこの家に戻ってこないつもりで荷造りしてください」


 そういって世話人は一基の部屋から出る。

 なんのことかさっぱり分からないが、一基はそれに仕方なく従う。

 数十分後、一基は荷造りを終えて、家を出る。

 街中の方を見ると、救急車の音や何かが爆発する音、そして火事と思われる煙があがっていた。


「一体何が起きているんです?」

「それも車の中でお話します。とにかく乗ってください」


 一基は言われるがまま、車へと乗り込んだ。

 車が走り出して、すぐに世話人が事情を説明する。


「先ほど、異星人と思われる存在が人類に敵対する旨の宣告をしたことは、ご存じでしょう?」

「一応は」

「その存在は、とある人物を殺害することを要求しています。その人物こそ、一基様であると考えています」

「……は?どうしてそういう思考になる訳?」

「それは、一基様の特殊な性質にあると考えています」

「特殊性質って、あの超合金を使ったやつ?」

「その通りです。あそこまでヘリクゼルを利用出来る人類は、現在の所、一基様だけです」

「……仮にそうだったとして、どうするつもり?まさか本当に俺を殺すつもり?」

「勿論そんなことはさせません。既にフラメタックス本社から指示が飛んできています」

「どんな指示?」

「『どんな手段を用いても、一月一日一基を死守せよ』とのことです」

「なるほどね……。それで、なにか策があるわけ?」

「策はありました」

「過去形ってことは、考えてたプランはもう使えないってわけか」

「その通りです。現在、地球を周回している衛星が次々に撃墜されている模様で、通信障害、GPSの使用制限、その他多数の被害を被っています」

「それで、これからどうするつもり?」

「一基様には申し訳ないのですが、これから異星人と戦ってもらいます」

「俺が?」

「既に手配は済んでいます。現在は拠点となる場所に向かっている所です」

「その前にさ、説明することがあるでしょ。どうして俺が戦わないといけないの?」

「それは、一基様がヘリクゼルの性質を一番引き出せるからです」

「……つまり、俺のヘリクゼルに関する能力を使って、自分の身は自分自身で守れってことね」

「理解が早くて助かります」


 しばらく車の中は静寂に包まれる。


「それで、いかがしましょう?」

「……それ以外にプランはないんでしょ?」

「自衛隊および米海軍第7艦隊による警備も考えましたが、現実的ではないと判断しました。両者とも、通信系統に打撃を受けているようで、まともな作戦行動が取れませんので」

「……はぁ」


 一基は小さくため息を着く。


「分かったよ。やればいいんだろ?」

「では、目的地の方に急ぎましょう」

「そういえば、どこに向かってるんだ?」

「御殿場です」

「御殿場?」

「現在、我がタックスリーダーの親会社であるフラメタックスジャパンが、日本国政府と極秘の協議に入っています。自衛隊との協力のもと、来る異星人との戦いに備えてください」


 一基を乗せた車は、誰も走っていない高速道路を走っていく。

 異星人による宣告が通達された直後、フラメタックスジャパンは日本国政府と極秘の協議に入っていた。それは、自衛隊の超法規的措置の適用と、日本有数の重工業企業である八菱重工を買収する算段を見つけるためだ。

 これにより、フラメタックスジャパンが先導して対異星人用一月一日一基専用戦闘兵器を作る事にしたのだ。

 しかし、それには時間が足りない。

 だがその問題は解決している。一基は既に、ヘリクゼルを自在に操ることが出来る程の知識や経験を積んでいる。

 そのため、多少設計に粗があっても、一基は問題なく使うことが出来るのだ。

 そのような思想の元、たった数日で重工業企業はフラメタックスジャパンに買収される。

 そして密かに、対異星人用の戦闘兵器が作られ始めた。

ここまで読んでいいただき、ありがとうございます。

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また、感想やレビューは作者の励みになります。

次回もまたよろしくお願いします。

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