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天穿つヘリクゼン  作者: 紫 和春


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第3話 会合

 タックスリーダーが一基の送迎を行っていた頃。

 防衛省市ヶ谷庁舎の大臣室。

 そこには、防衛大臣福田忠宏、統合幕僚長一之瀬和真、在日米国大使館トシアキ・ヘンダーソン大使、そしてタックスリーダー技術開発部部長下沢利樹がいた。


「本日はご集まり頂き、感謝します」


 そう下沢部長が切り出す。


「問題はありません。これも両国の未来のためです」


 一之瀬統合幕僚長が返す。


「我々にはヘリクゼルがある。それだけでもアメリカと日本に利点があるのでね」


 ヘンダーソン大使が話す。


「では、今回の会合を行うとしよう」


 福田大臣が会合の開催を宣言する。


「では、タックスリーダーの方からヘリクゼルに関する進捗の報告です。一月一日一家を使った実験は予定通りに進んでいます。現在までのところ、父親と母親の実験ではヘリクゼルは予想通りの振る舞いをしていると言えるでしょう。問題は息子ですね。人体との融合や分離以外にも、ヘリクゼルそのものの質量増加という結果を残しています」

「物理法則を無視した現象……。まさに超常現象ですな」


 ヘンダーソン大使が困ったように言う。


「また、タックスリーダーが得たデータ等は秘匿メールにて後日送信させてもらいます」

「やはり、懸念材料は息子か……」

「えぇ、以前から問題視はされていましたが、現在のところヘリクゼルを悪用するような兆候は見られません。今後も監視の目を緩めずに継続していきます」


 下沢部長からの経過報告は終わった。


「では次は防衛省だな。防衛装備庁での研究は順調に進んでいる。4ヶ月前にあった米軍での『質量増加及び自己複製に関する研究』については十分なデータが取れた。これを基に、自己修復可能な装甲の研究に移りたいと思う」

「米軍からの情報提供には驚いたものですよね。しかし、事前に頂いた情報によると、一月一日家の息子さんには負けているようですが」


 下沢部長が口を滑らせる。


「私としても、ヘリクゼルにそんな性質があるとは思ってもいなかったからな。あの家の息子は我々の想像を上回っているということなのだろう」


 福田大臣が肩をすくめて言う。

 その反応に、下沢部長は少し安堵した。


「では自衛隊の方から。陸自で開発中の試作外骨格防護戦闘服ですが、想像以上の効果を発揮しています。金属として柔らかいことで銃弾などを貫通させにくくさせる他、行進などの身体機能のサポートも可能。しかも動力は金属自身から放出されるため問題なしというのが、とても魅力的だとの声があります」

「34式防護戦闘服は電池とモータの問題があったからな。今はマシになったとはいえ、試作品のほうが上手くいくんじゃないか?」


 福田大臣が冗談っぽく言う。


「確かにそうかもしれませんね。事実、試験運用中の第1空挺団ではかなり評判がいいですよ」


 一之瀬統合幕僚長はしれっと受け流す。


「それでは次は我が国の番ですね。ご存じの通り、合衆国ではヘリクゼルを使った発電所の3基目が完成しました。現在まで合計発電量は550万kWを突破し、重要な電源となっています。近い内に、日本にもヘリクゼル発電所を建設したいと大統領がおっしゃってましたよ」

「それはありがたい。未だに原発に依存している現状では、新たな電源になることに期待したい所だ」


 福田大臣はそんな事を言う。


「しかしヘリクゼル発見から現在まで、利権のほとんどは米国と日本が握っている状態です。中露がどのように出てくるかが気になる所ですが……」


 一之瀬統合幕僚長が、そんな懸念を示す。


「そうだな……。確かに最近、私のメールには外務相時代の友人からのメッセージが飛んできている状態だ。一応目を通してはいるのだが、いかんせん中露を刺激するな、という内容ばかりで困っているのだよ」

「それは、お気の毒と言いますか……。実際、アメリカとしてはどのようにお考えで?」


 下沢部長がヘンダーソン大使に聞く。


「まぁ、確かに中露は脅威そのものと言って良いでしょう。現に今の立ち振る舞いを指摘されて、安保理理事会の裏で脅迫まがいのことを言われた、なんてことがありましたからね」

「日本の大使もそんな事を言われたらしいと小耳には挟んでいる。それだけヘリクゼルには魅力と脅威が存在しているということなんだろう」


 ヘンダーソンの意見に、福田大臣が同意する。


「この際ですから、フランスやドイツ、後はイギリスを巻き込んでみてはいかがでしょうか?」


 一之瀬統合幕僚長が進言する。


「確かにフランスは原子力先進国だ。以前からヘリクゼル発電には興味を持っている」

「しかし、イギリスはいいとして、ドイツはどうなんでしょう?」

「ドイツは一度原子力を捨てた身。今更仲間内に入れるのはどうかと思いますがね」


 福田大臣は同意し、ヘンダーソン大使は否定する。


「今後は技術供与に関しては慎重にならざるを得ないだろうな」


 そんな事を話していると、大臣室に自衛官が入ってくる。


「お取込み中失礼します。緊急の連絡が入ったので、お伝えしに来た次第です」

「電話でいい所を、わざわざ伝言で伝えに来たというのは、何か理由があるのかね?」

「えぇ、そんな所です。こちらのメモを」


 そういって、自衛官がメモを渡してくる。

 それを呼んだ福田大臣は、眉をひそめた。


「何が書いてあったんです?」


 下沢部長が聞く。


「……NASAが月面に異物を発見したそうだ」

「異物、ですか?」

「確か月周回衛星のかぐや2があったはずだ。アレのデータを引っ張ってこれないか?」

「それが、2時間半前にかぐや2との通信が途切れています。現在は空自の宇宙作戦隊が監視に入っていますが、これ以上の情報は入ってきていません」


 大臣室に独特な緊張感が漂う。

ここまで読んでいいただき、ありがとうございます。

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次回もまたよろしくお願いします。

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