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天穿つヘリクゼン  作者: 紫 和春


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第22話 情勢

 新国際秩序が本格的に活動を開始してから数週間が経過した。

 現在の日本の季節は初夏。即ち、これから耕作を開始するには持ってこいの季節である。

 しかし、北半球のほとんどの陸地――特にユーラシア大陸と北アメリカ大陸を失ったのは、人類として大きな損失であった。

 さらに、地上には異星人の兵器が一面に散らばっている状態だ。異星人の兵器の特徴として、水に触れると崩壊する特徴があるが、それでもどれだけの残骸が残るのか、さらに崩壊した兵器の影響がどこまで出るのか等、不明な点が多い。

 そのため、異星人の兵器が進出していないオーストラリア大陸と南アメリカ大陸でしか食料が調達出来ない。

 それにオーストラリア大陸と南アメリカ大陸は、これから冬に突入する。

 とてもじゃないが、食料調達云々言っている場合ではない。

 とにかく、各国が食料を融通しながら生き残る必要がある。

 新国際秩序各国では、第二次世界大戦中の如く、配給制を取る。

 しかし、人間は欲望にまみれた生き物だ。

 限界に近い生活をしていると、何かと不平等を言い出し、そして暴力へと発展する。

 比較的民度の高い日本人であっても、この事態を避けることは出来なかった。


「はぁ、面倒だな……」


 そんな時に駆り出されるのか一基であった。

 ヘリクゼンは、名目上は自衛隊の指揮下に入っていることになっている。

 そのため、活動の拠点は日本に限定されるのだ。

 それに、一基とヘリクゼンの活動は一般に広く知られている。中には英雄として持ち上げる人々もいるくらいだ。

 そのため、ヘリクゼンが現れると自然と暴動は無くなる。


「一基様ー!」

「ヘリクゼーン!」

「われらの救世主よ!」


 そんな黄色い声に似た歓声が湧き上がる。

 一基はそれに、手を振って応える。

 リーヴとの戦いから、ヘリクゼンは2週間ほど修理に入っていたが、こうして無事に戦えるまで修復された。

 そんなヘリクゼンを使って、一基は日本中を駆け巡る。


「本当にこんなことで問題ないのか?」


 一基は世話人に聞く。


「今はアピールが必要な時です。我慢してください」

「別に不満があるわけじゃないんだけど」


 そう言いながら一基は車に乗り込む。

 再び世界情勢に目を向けてみよう。

 現在の所、まともに食料を生産出来るのは日本、イギリス、アメリカ西海岸である。

 しかし、イギリスのカロリーベース総合食料自給率はいい所で75%、日本に至っては30%程度である。

 西海岸でも食料は生産出来る。特に主食となりうる小麦の生産が可能だ。

 だが、世界の食糧庫と呼ばれるアメリカでも、首都を失った上に内戦に陥っている状態では、まともな食料提供も出来ないだろう。

 さらにスマート農業を導入しているとはいえ、GPSを喪失した現在ではまともに機能することはない。そのため、古い機械を引っ張り出して人間の手を使って生産するしかないのである。

 世界各地、そんな状態であるから、とにかく平等に飢餓に陥っている。ある程度裕福な人間ならば、金にモノを言わせて食料を手に入れるだろうが、食料はものすごい勢いでインフレしていく。

 さらに貨幣に対して信用が失われていくため、経済そのものが破綻していった。

 こうして人類は、史上まれに見る勢いで人口を減らしていく。

 日本も例外ではない。

 日本においては、とにかくないものが多い。エネルギーも、食料も、水も、それらを有効に活用する法律もない。

 となれば、弱者から切り捨てられていくのは当然だろう。

 ここに記すことは出来ないが、あえて言葉を使って言うならば、姥捨て山と同じことが起きている。

 それくらい、残虐非道な事が起きているのだ。

 しかも、それを取り締まる側である警察がまったく関与しなくなった。

 そのため、日本は無法地帯と化す。

 もちろん同じような現象は、イギリスやオーストラリア、アメリカ西海岸、ハワイ・アメリカ軍機構でも起こった。

 世はまさに、創作で考えられてきた世紀末状態である。

 ヘリクゼンの製造元であるフラメタックスジャパンと、その親会社であるフラメタックスは、様々な手を尽くして、ヘリクゼンの保守保全を担当していた。

 それには、どんな混乱時でも乗り越えられるという関係会社共通の信念があったからに違いない。

 しかし、人類の衰退は確実に進んでいた。

 新国際秩序が本格的に活動を開始してから1ヶ月が経過する。

 この期間だけで、3億人が何らかの理由で死亡した。

 それでもなお、人口の減少には歯止めがかからず、死体も路上に積みあがっている状態だ。

 そんな中、一基はフラメタックスジャパンからの支援で、どうにか食いつないでいた。


「いつまでこんな生活しなきゃならないわけ?」


 一食分のレーションをさらに1/3に分けたかけらを食べる一基。どうあがいてもカロリーが足りていない。


「まだ相当な時間がかかると見込まれています。幸い、漁業に関してはこれまで通りに行えてますが、燃料がないだけに、十分な量を確保するのが困難のようです」


 そういう世話人は、目に見えてげっそりしていた。


「霞だけ食って生きていける仙人にでもなれればなぁ」


 そんな事を言っても、腹は膨れない。

 ベッドに横になり、目を閉じた瞬間であった。

 なにか嫌な気配を感じる。

 その瞬間、脳内に何かが響き渡った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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また、感想やレビューは作者の励みになります。

次回もまたよろしくお願いします。

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