幸運保険販売員3
「まったく、何よ、あのサギ販売員! 訴えてやる!」
ベッドから起き上がったアティカは、コップの氷水をあおりながら叫ぶ。
「まさか空腹で倒れるとは思わなかったでふよ。まあ、今日は忙しかったからでふね」
「何であんたはいつの間にか昼飯食べてるのよ。」
「はいはい、そもそも一食抜いただけで倒れるなんて思わなかったでふ。さっさと食べて寝るでふ」
洋ナシとリンゴを切ったものとサンドイッチをベッドのそばにあるサイドテーブルに置くと、カルチェは売り上げの帳簿を確認した。
「それにしてもよかったでふね、148年あって。80年取られても死なずに済んだでふ」
「はぁ……てか何なのよあの契約書! 勝手に莫大な寿命で契約して人を殺してたわけ?」
「そうなるでふね。知らない人は半信半疑、恐らくこんな契約読まないでふから。とにかく警察に通報して、あのサバーサリーとかいう女を捕まえてもらうのでふ」
カルチェが電話を手に取ろうとするが、アティカは「待って」とカルチェの手を止めさせる。
「……もっと有効な方法があるわよ」
サンドイッチをコーヒーで流し込むと、アティカはサバ―サリーの名刺を見せた。
「あ、それは……」
「フフフ……どうやらあいつの勤めている会社で正式に発行されたもののようね。これを使って、あいつの運を強奪するのよ!」
「そ、そんな無茶な……」
例の「人の運と寿命がわかる機械」は、個人識別カードでなくても、会社が発行した正式な名刺で人の寿命、持っている運が分かる。個人識別カードを持たない人もいるため、このような対策を行っている。
「いくらなんでも、勝手にそういうことをするのは……」
「いえ、これは因果応報、自業自得、百鬼夜行、勤務怠慢よ!」
「途中から意味不明になっているでふ。さすがに職権乱用では……あ、もうピッチャー降板でふか」
野球を見ながらの説得は、さすがに説得力がなかったのか、アティカはすたすたと例の怪しい機械の元に向かっていく
「さぁ、あいつのすべてを暴くわよ!」
名刺を機械に通すと、サバーサリーの寿命、所持している運が表示された。
「え、何? 資本寿命150年? 許せないわね。まずはその寿命を有り余った恋愛運で強制的に奪ってあげるわ! おっと、パンフレットに手書きのサインがあるじゃない! これをまねして契約書に書いて……まあ、こんなにすごい仕事運が! これは根こそぎ強制買取しておきましょう。金運も在庫無いから半分くらい買取っと、さあ、仕事運も金運もない状態で500年ほど長生きするがいいわ!」
普通は契約書に本人がサインすることで契約が成立するのだが、その人のサインがあればその筆跡を真似するだけで契約が成立する。これも事情でサインが出来ない人のための仕様である。
「あぁ、お姉ちゃんが壊れたでふ。まあ、今回はあの人が悪いでふから、見逃してあげるでふ」
本来このような悪用を防ぐのがカルチェの役割なのだが、今回ばかりは止められなかったようだ。
「あ、臨時ニュース……」
「今日昼過ぎ、幸運保険と名乗って運勢に掛ける保険を販売し、客をだまして法外な寿命を搾取していたとして、保険販売員、サバーサリー容疑者を詐欺及び殺人容疑で逮捕しました。調べによりますと、サバーサリー容疑者は『幸運に保険を掛けることによって寿命を延ばすことができる』と話し、客に法外な契約料寿命について説明せずに契約させて契約者を死亡させた疑いがかかっております。警察の調べに対しサバーサリー容疑者は……」
「ふん、いいザマだわ」
満足したのか、アティカは皿に残っていたリンゴと洋ナシを次々と口に放り込んだ。
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自分の運命は自分で決める。
確かにカッコイイことですが、運に保証はありません。
もしも幸運に保証が付いていれば、安心できるでしょうか。
でも、もしもそんな契約を持ちかけられたら、注意した方がいいかもしれません。
契約した瞬間、寿命をすべて奪われてしまうかもしれませんから。
<幸運保険販売員 おわり>
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