食べ物を探しに
空腹なユナの為に、食べ物を探しにいくこととなった。
どのくらいの期間、ご飯にありつけていないのかはわからない。
とにかく、やつれているので早急に食べ物を見つけなければ……。
空腹で、またさっきのように狂われても困るしね。事は一刻の猶予を争うようだ。
ひとまず腕の蔓をほどこうとしたら、もうほどけていた。結びが甘かったらしい。今回は平気だったからいいが、次からは気を付けよう。
てなわけで、
「じゃあ、俺の背中におぶさってほしい」
俺は、そう言いながら、屈みつつ、背中を向ける。ぱっくんちょされるかもしれないと、一瞬だけ思ったけれど、俺はユナを信じることにした。
「……わかった」
ユナの温もり、脈動を背中に感じる、押し付けられるユナの胸が変形していく感じも、ユナの服が薄いためほぼモロに伝わってくる。
はぁ……はぁ……、平常心……、平常心……。
俺はユナを支えるために、ユナのお尻に手をやる。
う、うわぁ……こ、これが女の子の桃尻……。
俺には、ユナの軽い体重ですら、ちょっと重かった。けれど根性で森へと進む。
「そういえば、ユナは何歳なの?」
「十歳」
「そっか……」
やっべ、ロリコンになりそう。というかなった。
そんな会話をしながら森を進んでいると――銀髪ツインテールで白い羽衣を着た、中学生みたいな容姿の少女――女神様がいた。例の錫杖は背中に背負っていた。
「やーっと見付けたー、いやーさがしたよ」
「なんだ、女神様か」
俺は女神様の顔を白い目で見ながら、ユナとの逢瀬を邪魔されなくてよかったとじみじみ思う。
「なんですか!? その冷たい反応は!? 銀狼に追われていたから助けに来てあげたのに!!」
「ああ、その件は解決したよ」
「――?」
「も、もしや銀狼を手にかけて……私が駆けつけるのが遅れたばっかりに……しがない君が手を汚し……」
「……何か勘違いしているようだけど……」
「――へ?」
女神様は間抜けな声をだし、詰め寄ってきた。
「ど、どういうこと? 詳しく説明して」
超至近距離まで顔を近付けてくる女神様。睫毛の長い、くりくりしたおめめに見詰められる。
ちょっ、ちかいちかい! とは思うが、口には出さない。折角だし女神様の香りを……。鼻一杯に……、すんすん、甘い香りだ。――興奮してきた。
「えっとですね。人狼は女の子でおっぱいが柔らかくて……」
なんて思わず色々口が滑る。すると、女神様はたちまちすごい冷めた目になった。
「……………………はぁ? 何を言っているの?」
……暗黒面が出てるぞ、女神様。
とそこで、女神様は、初めて気付いたかのように指をビシィッと指した。指した先はもちろん俺の背で眠るユナである。
「――と、というかその女の子はなに!?」
狼狽した。
なんか女神様が蔑むような目で見てくる。
俺は、唐突なご褒美に興奮した。
「ま、まさか、そんな幼気な娘に手を……い、いくら、童貞だからって……えぇ……」
「ちょっと! そんなわけないじゃないか! この娘は――」
俺は弁明しようとするが、それはかなわなかった。
俺がちょっと女神様の方に動くと、女神様はびくびくびくと心底怯えたような素振りをする。顔が完全に青ざめていて、目は犯罪者を見るかのような……というか、犯罪者と思われてる?
「ち――近寄るなこの性犯罪者!!」
やっぱし犯罪者だと、思われてたよ!
勝手に邪推して罵倒する女神様は、全力で逃げ出そうとしていた。
――ちょっ、待てよ!
たしかに胸は揉んだけれどさ。衝動に駆られて。
その事が、バレたらやばそうだと感が告げる、それは隠そう。
「ご、誤解だって」
一部誤解じゃないけれど。不適切な関係気付いちゃったっぽい感じだけど。俺は必死に誤魔化す。
「私もおかされるんだ!? きゃー!!」
女神様は逃げていった。
「ちょっ待てよ、おい――ユナ一旦下ろす、ごめん」
俺はユナをその場に置き、女神様の元に駆けていく。
「はぁ……はぁ……」
二十秒ほどで追い付いた、女神様は視界から外れるほども走らず、百メートルほど走ったところでバテていた。
えっ……、体力無さすぎ……、メンタルだけじゃなくて……、身体能力も軟弱なのか……?
「女神様、何やってるんですか?」
「……」
「女神様?」
「……つかれたぁ」
「は?」
「……つかれたよぉ」
「はい?」
「…………つかれたって言ってるの!!」
「はぁ……そうなの、俺、ユナが心配なので戻るわ。女神様に構っている時間はないし」
「しがない君のいじわるぅ……」
俺は女神様を尻目にユナの元へ戻る。また背負い直して女神様の元へ。
「放置プレイなんて、酷いよぉ……こんな森の中で、私が魔物に襲われたらどうするの……」
「あれがあるじゃない、【神罰下し】」
「技が強力だって、私は紙耐久なの!」
「え、そうなの?」
本当か? と女神様をじーっと見る。
ん? なんかメッセージが出たぞ。
『ステータスをチェックしますか?』