人狼の村にて
ミーシャ一行は人狼の村へと着いた。
人狼の村は酷い有り様だった。死の香りが漂っている。人狼の死体もそこかしこに転がっていた。
「うわ、めっちゃくちゃに荒らされてる……人狼達の為にも、仇を取らなきゃだ……」
「そうだね。これは酷い……」
俺の言葉に、カタリナが同意する、その顔は憐憫に満ちていた。
「あれは……」
俺は指を指す。オークが居るのに気づいたのだ。
「なんか楽しそうですね……」
カタリナ様が白い目を向ける。
3人の視線の先では、
「ブルオオ、ブルオオ」
オーク達が奇怪な声を上げ、奇妙なダンスを踊っていたのだ。
「オークいる。殺そう」
ユナが殺意に満ち満ちた表情でオークらを睨む。
「あっ、私がやっていいですか?」
手を上げ進言するカタリナ。
「……うん。神罰下しで殺して」
ユナがお願いする。
「おけまるです!
――殺っちゃいますね!」
カタリナが錫杖を構え、唱えるは――、カタリナの異名でもある神罰下し。その神罰下しの極みである。
「ずっと私のターンです。
集え七つの仔よ――」
カタリナの周囲が七色に輝いた。――カタリナの持つ錫杖の元に火、水、氷、風、土、光、雷の七つ仔が集っていく。
「――えっ? 色々集まって……」
「カタリナ様、凄い」
「よし! 充電完了!!」
「やっちゃえカタリナ様!」
「カタリナ様、頑張って」
「【神罰下し・極・七色】!!」
かわいくポーズを決め、煌めく七つ仔を纏う錫杖を振りかざす少女。
「醜悪な豚野郎共よ!! 辞世の句は詠みましたか?
この世とは永久に、お別れですよ?」
辞世の句って……。オークにそんな文化ないと思うなぁ……。
「――お覚悟!!」
『いいから、はやく、やっちゃって』
俺とユナは声援を送る。
「それでは――――いきます!!」
カタリナが錫杖を思いっきり振り下ろそうとする。
「これが女神の全力だーー!!」
決め台詞を吼えながらカタリナ――が錫杖を振り下ろした。
――ゴオオオオオオ!!
爆炎が火炎放射器の如く噴出する。
――ジューーーーーー!!
それはオークを焼き焦がして灰にする。
――ビシューーーーーー!!
荒れ狂う水流がレーザーの如く発射される。
――ブシャーーーーーー!!
それはオークを貫き仕留める。
――ピューーーーーー!!
極限にまで冷たい冷気が吹いた。
――カチンコチン!!
それはオークをカッチカチにする。
――ピュルルルルルル!!
土煙を巻き上げる暴風がグルングルン回転しながら突貫する。
――ズババババババン!!
それはオークをミンチにした。
――ドピューーーーーーン!!
巨大岩石が勢いよく飛んでいく。
――ドガーーーーーーン!!
それはオークを粉々に粉砕する。
――ギュイーーーーーーン!!
雷がヤッベェ音を立ててレーザーの用に直進している。
――ドゴーーーーーーン!!
着雷。次いで轟音と閃光と周囲への衝撃波。オークは炭になっていた。
俺は、女神の雷撃を食らった同士としてめっちゃ共感した、……南無。
――ピカーン!!
女神の威光ともいえるレベルの光が輝く。
――チーン。
それはオークを消滅させた。
オーク皆殺し? なんだかしっちゃっかめっちゃっかだ。俺とユナの出番は無いみたい……?
「ユナの家こっち、案内する」
俺たちは、酷いことになったオークの死体を尻目にユナの家へ向かった。
「ここがユナの家」
どうやらユナの家に着いたらしい。
「ん? あいつは――」
ユナの家の前には石の付いたモリを持ったオークがいた。
あれ? 俺の作成したモリじゃん。
「両親の仇」
ユナがオークを威嚇しながらそう言った。
「私が殺りましょうか?」
またカタリナが進言する。
「いい、ユナがやる。これはユナの戦い、二人は援護をお願い」
「うん、わかった」
「わかりました」
ユナが四足になり、人狼へと変化。
人狼が駆ける。――オークの元に。
オークはモリを構えた。
「【火球】」
俺が火魔法を唱える。オークに当てて注意を引き付けるために。
【火球】がオークの顔面に着弾する、オークは一瞬怯み、顔をふりふり、すぐ立ち直って俺を睨む。
「隙だらけ」
ユナはオークに体当たりした。オークを押し倒しそのまま喉笛を噛みちぎる!!
ユナは口元にオークのお肉を咥え血をひたたらせて宣言する!
「ユナの――ユナたちの勝利」
「おお……。……なんか、おめでとう。……【流水】」
――ジョバーーーーーー。
なんかユナがグロテスクな状態だったので血を洗い流してあげた。ユナはそのままお肉食べちゃった。
「なかなかに美味」
「やりますね、ユナちゃん」
カタリナが称賛する。
俺たち(ほとんどカタリナの功績)はオークをぬっ殺した。
これにてユナの敵討ち――完。
「パパ、ママ」
ユナ、人間体になって悲しそうな顔。
『ユナ(ちゃん)……』
俺とカタリナ様もそんな顔をして、しんみりムード。と思ったら――、
――次の瞬間。ユナの家の扉がバーンと開いた。
「おお、ユナ生きてたのか!!」
「ユナ、よかった!!」
「パパ、ママ!!」
ユナのパパとママ生きてたのか!! どこかに潜んでいたらしいね! 良かったじゃん!
「よかったですね……」
カタリナ様が目に涙を浮かべて感激してる。
「(まさか……)」
俺は何かを予感して振り返る。人狼の遺体? を見た。
すると、死体と思われた倒れていた人狼たちがすくっと立ち上がった。
『私たちも死んだふりでした。いやーオークがバカで助かったよ!』
なんだよ皆、生きてたよ、超絶ハッピーエンドだね!!
オークは犠牲になったけど……。