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ユナの事情

「あっ、ユナに食べさせるためにもあのリンゴの木の呪い解ける?」


 そうだ。のんびりしてたらユナが餓死してしまう。


「うん。【解呪】」


 カタリナ様がそう唱えると、リンゴの木から何らかの呪いがすーっと抜けていく。どうやらリンゴの木の呪いが解けたようだ。


「おお、流石女神様!」


「でっしょー!!」


 胸を張るカタリナ様。


「ごめん。俺、飛べないし。カタリナ様が代わりにリンゴ取ってきてくれない?」


「いいよー。じゃあもいでくるね――【天翔】」


 俺がカタリナ様のパンツをガン見しながら、待っているとリンゴをたんまりと抱えて、ご満悦なカタリナ様が降りてきた。俺もいいもん見れてご満悦、心のちんこが勃起した、ウィンウィンだね。


 さあ、ユナの元へ急ごう。



 ユナの元へ着いた俺は、もぎたてリンゴをユナに与えた。


「――げぷ。助かった。ありがとうミーシャ」


 ユナがぽんぽんを膨らませてお礼を言った。よかったぁ……。


「ところで、カタリナ様はこのまま同行してくれるの?」


 俺はカタリナ様に問い掛ける。同行してくれるのならば、とても心強い味方となり得るからだ。


「うん、ここからは私も付いて行くよ。この世界でミーシャちゃんが何を成すのか、私も隣で見たくなったしね」


 おお、きたー! 内心大喜びな、俺。

 【神罰下し】カタリナ様加入!


「ユナもミーシャと行く、友達だから」


 カタリナ様とそれに続くようにユナが答えてくれる。


 ともあれこうして俺は二人も心強い仲間ができた。


 カタリナ様の超火力さえあれば百人力だね。


 俺は身をもって味わったからなぁ、手加減はしてたんだろうけれど、何回か死ねるレベルだったしあれ。


「カタリナ様、ユナ、ありがとう。共にこの世界を冒険しよう」


「そうだね、頑張ろうね。ミーシャちゃん」


「ユナ、ミーシャの為にも頑張るよ」


 ユナが嬉しいことをいってくれる。


「カタリナ? もよろしく」


 ユナがカタリナにご挨拶。うん、そういうこと、ちゃんとできるのは偉い、偉いぞ!


「あっ、えっと、申し遅れたね。――ユナちゃん、私は実は女神なの……だからミーシャちゃんに様付けで呼ばれているんだよ」


「たしかに……、カタリナ様は女神様の名前。私も敬意払うね」


「そっか、ユナちゃんもかー……」


 カタリナ様はしょんぼりとしていた。


「えっ、カタリナ様、そんなに有名なの!?」


「……そう。――神罰下し――それは、誰もが知る異名」


「へ、へぇー」


 まあ、あれインパクトすごいしね。


 カタリナ様もなんか自慢気だし、おしっこ漏らしなんて言っちゃ駄目だよね。


 あれは俺の脳内に保存するとして、もうネタにするのはよそう。ズリネタにはするけれど。


「では、今後の活動方針を……」


「ユナ、提案ある」


 ユナが手を上げた。


「何? ユナちゃん」


 カタリナ様がユナに尋ねる。


「ユナ、オーク憎い。オーク倒す」


 ここでオークさんのお話ですか……。俺もモリ盗られたけれどさ……あれはちょっと分が悪いんじゃ……。

 とりあえずユナに訳を訊くことにした。


「なんで憎いの?」


「ユナ、人狼の村乗っ取られた。たぶん両親ももう……。だからオーク倒したい」


「そっか……」


 ユナはそんな過酷な人生に追いやられてしまったんだな十歳で……。


 ユナが成そうとしていることは、――復讐か……。――村の奪還か……。


「そういうことなら私も協力するよ」


 カタリナ様が協力を申し出る。なら俺も行くしかないよな。


「私も行くよ。何の役にも立たないかもだけれど、囮くらいなら、――ってカタリナ様がちょちょいのちょいでやっつけちゃうか」


「ありがとう、カタリナ様、ミーシャ」


 そうお礼を言うユナの目には決意の炎が宿っていた。


 そうして俺らは人狼の村に向かうことになった。


「ユナ、人狼なるよ。ミーシャ、乗って」


「わかった」


 ユナが人狼に変身したので、俺はユナに跨がる。毛はやっぱりモフモフだ。モフモフしている。


 俺はカタリナ様の移動手段が気になった。


 カタリナ様を見ると――、何処からか例の錫杖(しゃくじょう)を取り出し、もくもくもくと何かを発生させている、何かはあのどす黒い雲になった。


 カタリナ様はそのどす黒い雲に乗る。俺もユナから降りてそっち乗ろうかなと思ったけれど……、どうやら一人乗り用らしい。


「ああ、嫌なこと思い出した……、オークとの決戦前なのに、気分悪くなった……」


「だから、その件は謝っているではありませんか……」


「謝って済む問題じゃないよ? あれは。――俺、カタリナのその錫杖と雲、見る度にあの【神罰下し・雷】を思い出すみたいなんだ……」


「それは……えっと……」


「ああ、いいよ、別に、俺はあれをいつまでも引きずるほど柔じゃいられないみたいだしね。ユナもいるし」


「そうですか……」


「ごめん、困らせた。今はもう名実ともに仲間なんだし、過去のことは言わないし、忘れるよ」


 いつまでも引っ張るのは女々しいよね。今女だけど。


「……」


 カタリナ様は(うつむ)いていた。


「お話、雲行き怪しい。オーク倒すの日改める?」


 ユナが気を使ってくれた。どうやら俺が余計なこといって、気を使わせてしまったみたいだ。


「ううん、駄目だ、それは。事態は一刻をあらそう、……と思う。カタリナ様とはすぐ仲直りするから村に向かってくれ」


「わかった。村向かう」


 そう答えるユナを尻目に、俺はカタリナに手を差し出す。


「カタリナ様、仲直りの握手しよう」


「……」


 カタリナは無言で手を差し出した。


 俺はカタリナの手を掴み取り、ギュッと握る。


 やっぱり、すべすべしていて、あったかい手だ……。


 これで触られたら気持ちいいだろうな……。


「はい、これで仲直り。人狼式の友好の契りの方もする?」


「はわわわわ! や、やらないよ! なんで私がミーシャちゃんとキ……キスを……」


 カタリナ様が瞬間沸騰するかのように顔を真っ赤に染め上げる。両手をふりふりしてめっちゃパニクってる。


「あはは、冗談ですよ」


「やればいいのに……」


 ユナが口を挟んだ。


「やらない!」


 カタリナ様は大声で否定した。


「そんなに嫌なの……?」


 俺はしょんぼりしたように言った。


「い、嫌ではないけれど……」


「なら、やろうよ」


「それとこれとは話が別! 行くよ!」


 こうして、ミーシャ一行は人狼の村へ向かうのだった。

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