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第2章 消失と発覚
第2章 消失と発覚
安定した生活は文字通り一瞬で消え去る。
彼は死を目にした。目の前で人が死んだのである。それも死んだのは彼の妹だ。
しかし彼は全く動じなかった。
目の前で血を吐き倒れ白目を向いた妹の骸を彼はただ見つめていた。白昼の出来事だった。
数日が経ち彼は和と会った。和は
「大丈夫?」とだけ言ってそれより先は東の妹の死について何も触れることは無かった。
和に会うまでの数日間彼はずっと悩み続けていた。それは妹が死んだことやその死因についてではなく、彼が妹の死に関して淡白な反応であったことに彼自身が疑問を抱いたことが始まりだった。死が軽いものでないのは理解しているはずだが何故自分には妹の死を嘆いたり乗り越えようとしたりといった意思が湧かないのだろうという、ただその一点に関してが引っかかっていたのだ。しかし、和に会い、人というのは案外、死という言葉や出来事に関してそこまで関心がないのかもしれないという考えが芽生えた。そしてその晩ようやく両親が口を開き、妹が消えた新たな家族としての始まりを迎えた。そして翌日、家族に妹の死因が伝えられる。