春
わたしはいつのまにか歩いていた。そんなの気づかなくて。歩き方。どうやって歩いているのか。そういうことわたしは知らななくて。なんのため、なにがため。どうでもよかったけどじつは知りたかった。うっっすらと不安だった。
二階にわたしたちのクラスはあった。靴は履き替えて。学校指定のなんてことない靴だった。一年生のときから変わらないなんてことない靴だった。
そういえばわたしたちは二年生になったんだな。そういうことを階段をのぼりながら知った。
「なゆみー教室わかってるのー」
なゆみは新しい教室なんて知らない。でもわたしよりはるか先に走っていった。春はそういう季節らしい。
「わかってますー」
そういって別のクラスに入っていった。
「なゆみそこは違う」
えっそうなの。なゆみはきょとんとして動かなかった。
「わかってるの。こっちじゃなくてあっち。わかった?」
そうはいっても。なゆみはこの教室を気に入ったよう。
「だから違うって。お気にでも向こうにいくしかないの」
そんなのしってるよ。わかっている風になゆみは先に教室をでていった。
わたしたちの席はとなり同士。なゆみはよくこちらを見る。話しかけてくる。他愛もないはなし。ちょっとはなすぐらいならいいけれど。あまりに話してしまうと迷惑だから。わたしからは横をみない。まえだけをみている。ちょっとだけ横目で見て。ちょっとだけだよ。そうでなくても。なゆみが横にいてるのわかってるから。わたしはただそれを感じているから。
「あっ…」
桜はどんどん散っているから。わたしは春をそうお気楽には捉えてなかったけど。わたしの机に桜がとんできて。それを指でつかんでみていると。わたしは春を勘違いしていたかもなとかおもってみたり。そういう季節が春なんだよ。そういうこともよくしっていたけど。そうおもってもばちはあたらない。だって春はそういう季節なんだから。