表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひ、ふ、み、よ、  作者: かたち
1/3

ひ、ふ、み、よ、…

「ひ、ふ、み、よ、…あれ?」

 なゆみちゃん。計算をしています。数を数えているのです。でも、あれ? なゆみちゃん、よで止まっていますよ。どうしたのですか?

「ねえねえちっちゃん。ひ、ふ、み、よ、の次はなんだったっけ?」

 どうやら数えかたがわからなかったようですね。これはいけません。

「いつ、だよ。なゆみちゃん」

「ありがとうちっちゃん」

 こうしてまた計算に戻るわけですが。なゆみちゃん。まだ動きが止まっています。どうしたのでしょうか?

「ねえねえちっちゃん。ひ、ふ、み、よ、の次はなんだったっけ?」

 実はなゆみちゃん。ひ、ふ、み、よ、それ以上をしらないのです。あることはしっていますが数えられない。いくら教えても。いくら悩んでも。数えられないし。わからない。なゆみちゃんにはそういう悩みがあったのです。

「いつ、だよ。なゆみちゃん」

「ありがとうちっちゃん」

 こうやって幾ら教えてもなゆみちゃんはまた。

「ねえねえちっちゃん。ひ、ふ、み、よ、の次はなんだったっけ?」

 というのです。まったく困ったなゆみちゃんです。


 今日で何歳?

「十四歳」

 まったく時ってやつは早いもんだ。

「そうね」

 ところでさほんとにそれでいいのかい?

「もちろん」

 厄介だぜ。面倒だぜ。

「うるさい」

 またそうやって。

「あっちいけ」

 はいはい。


「あ、ちっちゃんだ。おはよー」

「おはよう なゆみちゃん」

 わたしたちは十四歳。幸か不幸かここまで生きられたひとだけに訪れる最初の春を迎えようとしていた。桜は散っている。わたしはそれをただみつめて。

「どうしたの。ちっちゃん」

「いいえ、なんでもないわ」

 わたしたちは生きる。生きたい。つよく。桜を背にそう思いながら。並木道を二人歩いて学校へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ