復讐
すみません、ちょっと、ゲームが面白くて更新がまた滞りました。
はい、ゲームにハマってましたw
マジすんません。
今年中には終わらせます。
がむしゃらに銅剣を振り回す。
黒い液体は、まるで熱したナイフでバターを切るように、剣先が触れたところから溶けていく。
人の形を成している物も、銅剣を突き刺すと断末魔の雄叫びをあげながらグズグズと音を立てて液体に変化しながら崩れ落ち、それから気体になり、霧散した。
ただ、刺す時に血のように黒い液体が飛び散り、それがかかってしまった素肌は火傷をしたように熱く、痛かった。
目だけは守るように、半眼になり、刺す時には直前に瞼を瞑るようにした。
最初からこうしていれば良かったのだ。
こんなモノ達に、なぜ慈悲の心など必要なものか。
後ろから引き倒され、のしかかられながらも、機械的に銅剣を振るう。
果物ナイフ並みの長さしか持たない武器では、一体一体消し去るのがやっとだ。
もはや琴子自身の全身が穢れに黒く染まり、痛まない部分など無い。
だが、心の痛みに比べればこんなもの……。
心の底から湧き上がる、恨み、妬み、憎しみ。
この穢れは私のもの。
私もこいつらと同類だから、こいつらを断罪する権利はない。
それをわかった上で、私は、私自身のために私怨を晴らすだけだ。
既に心は凍り付いている。
でも数が多いから、始末しきれないかもしれないな、とも思う。
まあ、それならそれで仕方がない。
命の尽きる瞬間まで、できるだけこいつらを消してやる。
ただそれだけだ。
返り血のように穢れが飛び散り、片目に入り込む。
鼻から、口から、穢れが入り込み、内臓を焼く。
それでも、剣を振るい続けた。
どれ程の時が経ったのか。
どのくらいの時間、戦い続けたのか。
視界はもう既に自らの血で赤く染まっている。
だが、あらかたの穢れは消し去ることができたようだ。
全身がバラバラになりそうだ。
体の外側は鼓動に合わせてズキズキと痛み、鼻から喉、肺、胃が、焼けただれたようにジュクジュクと痛む。
一瞬でも気を抜くと、もう2度と動けなくなるだろう。
起き上がろうとすると、眩暈がして、吐き気が込み上げた。
涙で洗い流された視界に飛び込んできたのは、また、赤。
鉄臭い液体を大量に吐き出し、鼻からも口からもねばついた糸を引く赤色の液体を、手の甲で拭った。
「あぁ、死ぬな。多分、死ぬ」
そう思ったが、それは大して問題ではない。
ただ、死ぬ前に、やっておかなければいけない事がある。
気力を振り絞り、琴子を遠巻きに見つめている4人に向かって走り、銅剣を突き立てる。
4人、そう、まだ4人だ。
佐東、環奈、長瀬、田仲。
櫻子と貴史はまだ取り込まれていない。
そうなる前に決着を付けなければ、あの二人も、最悪、自分まであの醜悪なカタマリに取り込まれてしまうだろう。
「どうして? 琴子さん、なんでそんなひどい事をするんですの? あたくし達、お友達ですわよね?」
「なんで? 私、悪くない! 私は悪くない! ねえ、三神さん、あなたなら私の気持ち、わかってくれるよね?」
本人達の意識が残っているのかどうかはわからない。
そんな事、どうでもいい。
涙を流しながら琴子に訴えかける4人を、罪悪感も感じる事無く、次々と刺し貫いた。
体の痛みも、心の痛みも、感じなかった。
あっさりと4人を始末した後、一心に密教の真言を唱える。
全部覚えている訳では無い。慎二のお祓いに同席し、何度も何度も繰り返し聞いて、耳に残っている部分だけだ。
慎二は、全てのお経や祝詞は、精神統一を助けるためだけのものだと言った。
だが、密教の真言は別物だと。
それは、神仏の加護を得る、力を借りるための呪文。
代々受け継がれるもの。印可を得て授けられるもの。
もし、授けられてもいない者がそれを唱えると、越法罪という罪にあたる。
だが、認可を得ていない者が唱えても、真言自体に力はある。
ただ、対価を求められる。贖罪を求められるものなのだと。
そう言って、慎二はたった一つ、九字を切る事しか教えてはくれなかった。
とりあえずはこれで十分だろう、と。
慎二本人はどこかで修業をして印可を与えることのできる立場になっているらしい。
恐らく、古森医院で浄化した霊と、今ここで始末した霊達は、一つの意思によって操られていた。
慎二に言わせると、全員が被害者だったのだろう。
その霊団を操る霊は、一体。
最初は、佐東がおかしな事をしたせいで、古森医院で殺された女性達を目覚めさせてしまったのだと思っていた。
だが、多分、根本は違う。
先程ここで琴子が消滅させた霊達は、全員、今風の格好をしていた。
男性も居た。
例の心霊写真騒ぎの時に巻き込まれた人達だろう。
そして、佐東はともかく、環奈や長瀬や田仲。
全て琴子たちを攻撃するために配された駒だ。
佐東が封印を解いてしまった事には違いないだろうが、それでだけであれば、古森医院の一件で全ては終わっているはずだった。
そう、終わっているはずだったのだ。
許さない。決して許さない。




